いずもとの独り言

18歳が主には映像作品、書籍について投稿します。 ほとんどは記録を兼ねます。

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最近の記事

『Ibasyo』を読んだ話

岡原巧祐の『Ibasyo 自傷する少女たち”存在の証明”』を読んだ。 この本は、自傷する少女たちを追ったドキュメントのような書籍だ。著者の岡原さんは、カメラマンで書籍の中に密着した五人の少女の写真も含まれる。 自傷。すなわちリストカットやオーバードーズなどを指す。鬱の症状に悩まされていたりする人も少なくない。 私は自傷行為について前もって知識を持っていなかったから、自傷行為は詩に近づくための行為だと思っていた。しかし、実際はそうでない場合もあるらしい。『切ると落ち着く』

    • 『チョコレートドーナツ』を観た話

      『チョコレートドーナツ』という洋画を観た。 この話は男性同士のカップルが、不遇な環境にある障害を持った男の子を育てるという話だ。1970年代の実話を基に作られたこの話は、まだ同性カップルに対する風当たりも強く、終わりもハッピーエンドではない。 同性であるから差別を受け、結婚という形に昇華すらできず、子供の保護権をもらえないという実態は、今もなお残っている。なぜ、同性を好きになることが差別に当たるのだろうか。 私には小学校で出会った一人の親友がいる。彼女は小学校、中学校と

      • 『君を描けば嘘になる』を読んだ話

        綾崎隼の『君を描けば嘘になる』を読んだ。 個人経営のアトリエに通う二人の天才生徒の物語だ。 最初のページから手が止まらなかった。アトリエ教師の視点、一人の天才生徒の妹の視点、アトリエから去った凡人生徒の視点から語られる二人の関係値は謎に包まれていた。 一人の天才、瀧本灯子は、癇癪持ちで人との距離が測れず、学校にも行けないような少女だが、描きたいという衝動に体を任せ、絵のみならず立体制作にも才能を見だせる生徒だった。絵を描いていた貧乏な父、母の愛を受け、その才能を花開かせ

        • 今や学生の初対面はネットって話

          春から大学一年生になる。そんなに有名なところではないから、受かってからしばらくしてもTwitterで春から○○生みたいな書き込みを見たことがなかった。 「#春から~」。学生(高校・大学)は、SNSをやっている人であればほとんどがこのハッシュタグを知っていると思う。簡単に言えば「入学前に知り合いがほしい」人たちが繋がりを求めて使っている。 私はもともとこうした繋がりが閉じたコミュニティすぎてあまり好きではなかった。だって。会えるじゃんあと一か月で。何を焦ってんだって。そう思

        『Ibasyo』を読んだ話

          『野良犬の値段』を読んだ話

          百田尚樹の『野良犬の値段』を読んだ。 全体の感想としては、すっきりまとまった話だなあと思った。しかし、まとまっているだけではなくて、初盤の臨場感や登場人物の息遣いまで聞こえてくるような文章力にはやはり驚かされる。 この小説ではホームレスになってしまった男たちが行動を起こしていくのだが、彼らの苦悩や絶望感が読者にひしひしと伝わってくることで、社会の現状が垣間見えたようだった。私自身、住んでいる町には何人かホームレスがいる。この小説の読後、考えてみれば彼らは生まれてからずっと

          『野良犬の値段』を読んだ話

          『アイデアのつくり方』を読んだ話

          ジェームズ・W・ヤングの『アイデアのつくり方』を読んだ。元は知人の家にあった本で、譲り受けたものだった。 この本の中で、著者がアイデアのつくり方について述べる部分は11~62ページのたった52ページだった。短く簡潔にまとめられたこの本は、「アイデアをつくるプロセスを踏むのは誰でも簡単にできることだが、仕組みが分かったとしてもそれを実行せる人は少ない」という著者の主張を明確に裏付けているように感じる。 このプロセスについて、本から学んだ私は、意外にも、アイデアを作ることとは

          『アイデアのつくり方』を読んだ話

          『ザリガニの鳴くところ』を読んだ話

          ディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くところ』を読んだ。幼少から一人で湿地の小屋に暮らす少女の物語だ。 私が読んだ小説の中で、これほどに胸が痛くなる作品はなかったように思う。この小説には別れの場面が多く使われている。新たに人と出会っても、そこに知らず知らずのうちに別れを見出してしまう主人公がいる。その姿を客観的に見ることで読者に主人公の孤独が伝染する。 孤独といえど、主人公は一人ではなかった。彼女の住む湿地には多くの生き物が存在し、彼女に生き死にについてその生をもって伝

          『ザリガニの鳴くところ』を読んだ話

          映画『すばらしき世界』を観た話

          (ネタバレを含みます)知人と西川美和監督の『すばらしき世界』を観た。元殺人犯役として主演をつとめる役所広司が、さまざまな経験をしながら、社会復帰していく様子を描いた作品、というのがかなり大雑把な説明になる。 私の中で一番印象に残ったのは『すばらしき世界』というタイトルが出るラストシーンだった。主人公は頭に血が上りやすい性格で、十犯六入という前科を持つ人物だ。物語の四分の三くらいまではその性格がよくわかる。一般人をカツアゲしているチンピラに殴りかかるなど、だれかれ構わず突っか

          映画『すばらしき世界』を観た話