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ブランディングは、大企業だけのものではない。

よく質問をいただくことのひとつに「ブランドって役に立つのか」
という話があります。とりわけ経営者の方や新規事業、起業などを
お考えの方がこのギモンをもたれているようです。

ブランディングの手法や方法論については、記事がたくさん見られますが
「自分たちに役に立つのか」ということは、当然ながら
どなたも思われることではないか、と思います。

今日は、この話を少し書いてみます。


1 ブランドは一部の大企業だけのもの?

少し前のポストで「ブランディング、難しくしすぎていない」という
記事を書きました。

これと似たような話で、ブランディングというと
ものすごく大掛かりで、費用も時間もかける巨大プロジェクト、と
思われがちなことがあるように思います。
そのため、大企業が多くの予算を投下して行うもので、
いわゆる中小企業や起業時などには、あまり縁がないことでは
ないのか、と誤解されているのかもしれません。

たしかに、ブランディングを実行していく段階では
いくつもの「タスク」が発生します。
経営ビジョンを考え、事業そのものを見直すことも
場合によっては行われるでしょう。
ロゴタイプのデザイン変更からサイトのリニューアル、
商品パッケージや新しい広告手法にトライすることなども
検討されるかもしれません。

そうなると、相応の予算や時間が必要になってくると
思われるのではないか、と思います。

たしかに、ある程度の予算や時間は必要です。
無料でできることは限界がありますし、来週から売上げが
急拡大、ということにはなりません。

しかし、ブランディングは本来、順を追って
段階的に進めていくものです。ドラスティックに変化を
させることもありますが、それには予算や工数が必要に
なりますので、それこそ大企業や予算的に余裕がある事業者で
ないと短期的なプロジェクトは難しいとでしょう。

「来週から売上げ改善したい」という短期的な視点でなく
もう少し長めの時間軸で、事業再生や新規事業、
リニューアルを考えていけるようであれば
ブランディングは、むしろ小さな会社こそが
取り組むべきことではないか、と思います。


2 何をやるか、より、何をめざすか。

気の早い方は、「ロゴはどうするのか」「デザインはどうなるのか」という
目に見える部分が気になるのかもしれませんが、
ブランディングで最も大切なのは、「考える」工程です。

自分たちの強みはなにか。
自分たちが他に負けないものはなにか。
何を誇りとして仕事をしているのか。
自分たちの商品は、社会にどう貢献できるのか。
存在意義は、何なのか。

こうやって書いていくと、ちょっと「面倒くさい」と
思われるかもしれませんが、じつは多くの企業では、
あまり「自社の価値」について、考える機会がないようで
このような振り返りは、むしろ「面白かった」と
思われることが多いようです。

お気づきかと思いますが、ブランディングでは、このように
すべてのプロジェクトの根幹となる「自分たちのアイデンティティ」を
発見することが、もっとも重要です。

これさえ見つかれば、あとは、知恵の輪がほどけて
いくように、スムーズに進行していきます。

文章にわかりやすく定義することで、事業や商品設計、
社内のルールづくり、採用活動、広報PRなどに
簡単に落とし込んでいけるでしょう。

ロゴタイプやデザインなどの目に見える部分は、
この段階になってから、やっとスタートです。


3 ブランディングとは、価値を守ること。

ブランディングの具体的なステップについては、
長くなるのでまた改めて書くようにしたいと思いますが、
そろそろ、冒頭の「ブランドは役に立つか」についての
回答してみます。

自分たちのアイデンティティを確認することは
そもそも、事業にどんな貢献ができるのでしょうか?

皆様もご存じの通り、ほとんどの商品、サービスには
競合相手が存在します。発売時には画期的だった商品、サービスで
あっても、やがて類似のものがあらわれます。

大企業が規模の論理で価格を下げて類似の商品をつくり、
マーケットに参入してくることもあります。
中国で大量生産を行い、一気に価格破壊に進むこともあります。

そんな状況になったとき、どのようにしたら
自社の商品、サービスの価値を維持していけばいいのでしょうか。

値下げ競争の相手をしてはいけません。
体力勝負になるだけで、時間の問題です。

広告をすればいいでしょうか?
それも、予算を消耗することが目に見えています。

いちばん有効で大切なのは、
生活者、ユーザーたちを味方につけることです。

AppleのMac book Air は確かに独創的な商品ですが
類似品は、たくさんあります。軽量、薄型でいえば、
Mac Book Air を凌ぐ商品もあります。
ましてや、Mac Book Air のほうが値段が高いのです。

では、なぜ、生活者、ユーザーは
わざわざ値段が高いAppleを選ぶのでしょうか?

機能的な価値(OS、ユーザビリティ、デザイン)もありますが
最も大きいのは「Appleであること」ではないでしょうか。

Appleの考えに賛同し、Appleに好意をもち
ファンになっていることで、少し高い価格の商品でも
「喜んで高い価格を支払って」買っているのでは
ないでしょうか。


わかりやすい例がいいと考え、Appleを例に出しましたが、
ブランディングの構造は、規模の大小を問わずに同じです。

生活者をファンにすることで、価値(プレミアムな価格)を維持し
それにより経営を改善し、より良い商品開発を行うための
エネルギーのようなものがブランドだと思います。

一朝一夕には、ファンの数は増えないかもしれませんが、
地道に取り組むことで、成果が着実についてくることも
中小企業が取り組みやすい理由だと思います。

アナログの時代は、企業からの発信活動は
マスコミュニケーションが中心だったために
大きな予算を必要としましたが、いまは、自社メディアや
SNS、PRを活用することで、比較にならないほどの
リーゾナブルな費用で発信ができるようになっています。

アメリカでは、オンラインで新しいブランドを発表、発売し
そのブランディング活動までもすべてオンラインで完結させる
企業も増えています。

その流れは、日本でも始まっているように思うのです。



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