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小説「体温」

同居人、仮にリカさんとでもしておこうか、死んでいるのではないか。これが、桑名サンが営んでいるシェアハウスでこの冬始り、持ち切りの話題。

リカさんは死んでいるのではないか。

根拠。信じられないくらい厚着するのである。リカさんと同部屋、ソファーベット2つで8畳間にごそごそしている山北さんは証言する。

"リカさんは毛布を3枚掛けた上に羽毛布団を被せて、さらに首回りに膝掛けを渡してから寝入るのに、寝付くまでの間、ガタガタ震えているのが、ベットの軋みで伝わってきて、怖気る"

寒がりという領域ではないようだ。桑名サンは新居を立てて奥さんと老後をのんびりしようとした矢先に肝心の奥さんが無免許の子どもの車にひかれて死んでしまった。せっかくの大きな家がもったいなく、突然のことでぼんやりもしていたし、急に民泊を始めて、無免許だったから、叱られた。その後きちんと許可を取ってシェアハウスに移行した。

人は。

体温があれば、それが布団の中で対流するので自動的に暖かい。いくら重ね着しても、体温が無いことには、それは寒いだろう。リカさんには確かに体温が無いのかもしれない。

とんだ、幽霊屋敷か。しかし、桑名さんが黙認している以上、われわれとしては、

本当に生きているのは誰だ?と自分を疑う日々なので、迷惑。

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