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抱きしめたい

詩人が朗読しているのを聞いた
もごもご言っていた
時々叫んでいた
あとの懇親会で詩人と話をした
何を言っているのかさっぱり分からなかったです
それが狙いだよ
ろくに練習なんかしてないし
喉を鍛えたって楽器には勝てない
詩人にしかできないことをするんだよ

詩集にサインしてください
ボールペンを渡そうとしたら
詩人は自分の鉛筆を取り出した
鉛筆は消えるからボールペンでお願いします
ぼくはいつも鉛筆でサインするんだ
詩人は鉛筆でサインした
自分のサインが消えてもいいんだろうか
消されることなど思いもよらないんだろうか

わだば詩人にはならん
棟方志功かお前は
ジョン・レノンのリズムギターが聞こえると
足が勝手にガニ股になって体を上下に揺すり始める
リンゴ・スターのドラムは
風が船の帆を叩いているようだ
私の詩はいつも一行足りない
私だけはみ出てしまう
イン・マイ・ハート
抱きしめたいのに

とある詩の朗読会

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