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1)採用活動は本来はお金がかかる。でも、お金を使うべきは広告費用だけでしょうか。採用コストについて考えましょう/ローコスト採用活動のススメ

こんにちは、ローコスト採用活動のススメ・本編第1回目です。


■採用活動にかかる費用を見てみましょう

たいそうに「ローコスト」なんて言ってますから、お金の話をはじめにしておきましょう。「求人なんぞ、前に貼り紙でもしとけばいい」「求人票を大学に出しとけばいい」「職安(今のハローワーク)でお願いしておけばいい」という時代があったのも確かですが、それは今は昔。

採用するのにはお金がかかるというのが当たり前です。ではいったい採用するためにはどれくらいのお金がかかるのでしょうか。

色々と調べてみましたので引用してみます。


リクルート就職みらい研究所より。11ページを見てみると以下のように記載されています。

1人あたりの平均採用コスト
新卒採用 2019年度 93.6万円 2018年度 71.5万円
中途採用 2019年度 103.3万円 2018年度83.0万円

リクルート就職白書2020

ひとり90~100万円!なかなか皆さん費用がかかっていますね。直近の白書からはこれらの数字が記載されなくなったのでコロナ禍を経てどうなっているのかは興味深いところです。

中途採用予算についてはマイナビさんの資料を見てみます。
「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2023/03/tyutosaiyoujyoukyoutyousa2023-03-1.pdf

中途採用の予算は、「人材紹介」が353.4万、次いで「ダイレクトリクルーティング」が201.5万、「求人広告」が136.6万となった。実績でも「人材紹介」が340.7万円、「ダイレクトリクルーティング」が150.2万、「求
人広告」が117.9万となり、 「ダイレクトリクルーティング」 では予算・実績ともに前年に比べ増加。
・中途採用費用合計は予算・実績ともに前年比で増加した。予算は544.5万から618.4万で73.9万円増、実績は484.3万円から573.9万円で89.6万円増。

中途採用状況調査2023年版

従業員50名以下の企業(実績)となると、「人材紹介 194.6万 求人広告 59.0万」となっています。

人材紹介がすでに市民権を得ているのがわかりますね。


契約社員やアルバイトやパートの採用、業務委託の検討、派遣スタッフの導入なども含めて正社員採用以外にも採用や検討をされると思います。
私が注目するのは採用活動にはお金がかかるということです。

ローコストやお金をまったくかけない、ことで採用が成功することはもちろんありますが、多くの企業は多額の予算を設定して実際に予算を使ってます。
年間予算は定期的に社員を採用されているなら数百万円程度になっているのが実態です。

■真っ先に思い浮かべるのが求人広告。次に紹介会社に依頼?

採用活動をしようと考えたときに、採用活動に不慣れな場合、おそらくはじめに思い浮かべるのが「求人を出そう」となるはずです。

ある程度の年齢の方なら求人雑誌であり、中堅以下の年齢の方でも求人サイトへの掲載でしょう。

なぜなら、一般的にはこういった雑誌やサイトを見て仕事を探そうとするからです。スマホやパソコンで何気なく検索してみたり、希望する条件を選んでどんな求人があるのだろう、と興味本位で見てみたり。これらのサイトに掲載されている求人情報はオープンであり、誰でも目を通せるものです。まずお手軽で、気軽に見るにはもってこいです。

募集をする立場でも思い浮かべてしまうのは無理もありません。
しかし、求人メディアに掲載してみても応募が来ない、応募はあるがなんだかしっくりこない、なんてことになります。
多くの人が目にする機会があるにも関わらず、なぜなのかと考えます。
もちろん答えは出ませんので、そのままズルズル…ダラダラと掲載が続くことになります。

自分の会社やお店での募集で応募が来ないと、他に手の打ちようがありません。それこそ貼り紙をしたり、社内で「いい人、知らない?」と聞いてみたり、SNSでスタッフ募集を叫んでみたり。
おそらく応募は来ないでしょう。

やがて人材紹介というものがあるらしいと知り、営業担当に話を聞くと「年収の25%が手数料」と聞いて絶句して、何やら新しい感覚の採用手法を謳うサイトに登録してみるも使い方がよくわからず応募が来なかったり…。

いつの間に採用するのがこんなに難しくて複雑で、しかもお金がかかるようになったのだと感じる。
こんなケースは決して少なくありません。

求人広告を出して、応募がなければ、もっとお金を出して露出度を上げれば応募があってなんとかなった頃から隔世の感。
頭を抱えてもいいアイデアは出てこない。

■採用コストとは何かを捉える

そもそも採用活動とは「求人広告を出すこと」だけでも、「紹介会社に人材を紹介してもらうこと」だけでも、「貼り紙をすること」だけでもありません。
「採用」に関わる活動全般を「採用活動」と考えます。そのコストが「採用コスト」です。

・採用活動に関わる従業員の人件費、経費、交通費、通信費
・募集に関する費用(求人広告ほか)
・会場の利用料
・コピー、印刷費用
・様々な備品の購入費用

ほかにもまだまだあるかもしれません。
総額を採用できた人数で割れば「ひとりあたりの採用コスト」が見えます。

採用コストは「外部のコスト」と「内部のコスト」があります。
外部コストと内部コストでは対策が異なります。外部コストに目が向きがちですが、内部コストも非常に重要です。

採用活動とは「求人広告」をどうするのか、を考えることだけではありません。採用活動全体を計画・デザインして、目標に向けてどのように取り組むのかを考えて、粛々と進めていくことになります。

■事情により予算の考え方は変わります

「急募」のケースはお金がかかります。惜しむと手当が間に合わず惜しんだ分、結果として採用に失敗したり、余計にお金がかかります。
急募についてはいずれ取り上げます。

慢性的に採れない。
事業や営業全体を俯瞰して、採用計画をしっかりと組むことが必要です。採用にかけられる予算、必要になる予算を計算して、採用計画を組んでいくことになります。

お金がかかっているから、予算を小さくしたい。
ケースバイケースです。お金がかかっている、としても実は業界や職種の事情からすると実は低予算で済んでいるのかもしれません。予算を小さくすると採用ができなくなるかもしれません。平均や標準はあくまで、平均や標準ですが、参考にして自社の計画を組み、無理のない採用予算にしたいところです。

ローコスト採用活動というのは、事情や状況により、最適な予算を考え、無駄なお金を使わないという考え方です。
「無料で採用したい」「ひとりあたり予算10万円で元◎◎のエンジニアを募集したい」といった話ではありません。
「都合のいい採用活動」が採用の失敗につながっていることも少なくありません。

自社にとってよい人材が採用できれば、業績は上がります。ひとり素晴らしい営業メンバーを採用できたため、海外の大手企業に自社製品を売り込み、億単位で売上が上がった。
広報のプロが入社して、自社のサービスを全国区で知ってもらうことができた。
採用したデザイナーの資料の訴求力があり、営業やマーケティングで成果があらわれた。

こんな経験をするためには、偶然採用した人が活躍した、ではなく、適切な予算配分で必要ならば思い切った採用コストをかけることも必要です。
そのためにも無駄をなくしましょうということです。

■では、いま、まず、何をすればいいのか

採用活動の経費を一定の単位や期間で、全部確認してみましょう。
一定の期間は定期的な採用活動の場合に有効です。
新卒採用や常に募集をかけているアルバイトなどもそうですね。

期間は1年間がわかりやすいです。新卒採用なら4月入社が一般的だとして、年度ごとに。ほかは自社の会計期間(年度)や1月~12月でもよいでしょう。
採用の規模が大きい(人数が多いなど)なら四半期や月次でもよいかもしれません。

様々な募集方法や職種、雇用形態があるなら、それぞれどうなっているか知りたいところです。

求人広告の費用、人材紹介の報酬だけではなく、広く採用活動に関する情報を集めてください。
求人広告は掲載費用中心だった時代から、インターネットでは表示数、応募数による費用中心になってきています。数字が管理画面などに残っているので、集計はしやすいです。

さらに人件費、会場費用、通信費、交通費以外にも、自社の事情ならではのものもあるでしょう。

そして、応募数、面接数、採用人数、一定期間勤務が続いている人数なども出しておくとよいです。

コンビニ店舗を例にして考えてみましょう

■採用の規模と予算の全体像を捉える

たとえば、コンビニ店舗で働くスタッフはアルバイト中心なら20名前後のところが多いでしょうか。社員の方が多いと、10~15名程度のアルバイトかもしれません。

アルバイト採用について考えてみましょう。
20名のアルバイトが活躍している職場とします。
平均勤続期間が1年なら、年間に20名採用することになります。1ヶ月で1.7名、3週間に1名新人スタッフが働き始める計算です。何名くらい応募があれば採用できるのか、わかっていれば必要な応募数の目安が出せます。
応募5名に対して面接を打診して、面接で実際に来てくれるのが3名、結果として1名採用の割合なら年間に100名の応募が必要ということです。(応募→面接60%→採用33%。応募に対しての採用は20%)

この数字を把握するとローコストのためにどうすればいいのか見えてくることがあると思いませんか。

◎平均勤続期間が1年半になれば… 年間採用20名→13名に減ります。応募者数換算では年間採用20名に対して応募が年間100名必要なのが、65名にまで減ります。

◎面接辞退を減らす 5名中3名を4名にすると… 応募は年間100名から75名に少なくなっても採用数は変わりません。

◎面接3名で1名採用を面接2名で1名採用できれば… 面接は60回ではなく40回で済みます。面接が減れば時間のコストが大きく減りますね。

では、平均勤続期間が1.5倍になり、面接辞退を半分にして、面接数が3分の1減ることが組み合わされればどうなるでしょうか。

年間の必要応募数が100名から、32~33名で足りるという計算になります。必要な応募数は約3分の1にまで減ります。
採用コストも大幅に下がると考えられませんか。

もちろん現実的にはもっと多くの要素があり、複雑です。しかし、何をどうすれば効果が出るのかを考えるためにはこのように分解してひとつひとつを検証することになります。

ひとつひとつの要素を劇的に改善しなくても、少しずつの改善を組み合わせることで結果はかなり変わります。
たとえ、求人内容を改善して応募数が3倍になっても一度に大量の採用をしないのであれば、応募の多くがお断りになってしまいます。結果として求人広告費用は改善しないどころか、応募数に対する課金だとかえって費用が増えるかもしれません。
一度に応募が殺到することで、応募者対応が煩雑になり、面接に追われることも考えられます。

採用の規模から適切な予算配分を行い、そのなかで最大限の成果をあげるには、日頃から採用コストの分析が必要です。


と、今回はここまでにしておきましょう。

・採用コストとは何かを考え、一度いまの採用コストを整理してみる。
・応募数、面接数、採用数などの数字を集計してみる。

の2点がまずやっていただきたいことです。

ローコスト採用活動の道は始まったばかりです。一歩ずつ歩みを進めて、主体的な採用活動、事業運営につなげていきましょう。


次回は『求人メディアは広告メディア。効果を出すために知っておきたいその実態。』と題して「求人メディア」との付き合い方を考えていきます。


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