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西伊豆古道を歩く〜雲見ー石部ー岩地編〜

2022年6月8日。5:00 昨夜まで一日雨予報だったけど、朝起きて予報をみると8時からは雨あがる予報になっていた。毎度のことながら伊豆半島での天気予報はあてにならず。道のコンディションが気になるところだけど歩きたい。

今回は東京からやってきたサトくんとケンと一緒に歩くことになった。西伊豆までの道中、海は穏やか、雨は止んで、雲の隙間から青空さえ見えてきた。

前回の道はこちら↓

本日から西伊豆の調査開始。乗ってきた車は岩地温泉のバス乗り場付近に駐車。限られたバスの運行に合わせて西伊豆で初めてのバスに乗る。バス通過3分前に到着、無事に乗車する。

西伊豆には電車はない。公共交通機関はバスだ。不便な方が人は豊かになれる。つい2ヶ月前の2022年3月30日から交通系ICカードが使えるようになったそうだ。これは便利。

車窓からは、分厚い雲に隙間ができて富士山が姿を現しはじめた。

雲見温泉駅で下車。軒を連ねる民宿街が古道だ。先日、サトくんが知り合っていた雲見温泉漁師の宿 太郎に立ち寄りご挨拶。千貫門のプロジェクトについて話したり。「これ、持っていきな」と甘夏をいただいた。

まずは歩く前に雲見海岸へ行く。見事に富士山がお顔を出してくれた!西伊豆古道の魅力を早速体験。お天気も晴れ上がりそうだ。

9:30 本日歩くのは三浦(さんぽ)歩道。1965年にバスが開通する前は『伊豆の秘境』と呼ばれていた松崎町南部の雲見、石部、岩地。この三地区を総称して地元の人は三浦(さんぽ)と呼んでいる。

バス道路ができる前に地元の人が利用していた生活道路に手を加えられたのが三浦歩道。4.6km、約2時間のトレッキングコースだ。

民宿街を道なりに上り、分かれ道で「正家」の左の階段を上る。

まもなく三浦歩道の道標。雲見ー石部間の本来の古道は右コースなんだけど、雨上がりの道の不安がある。今日はゲストもいるので見晴らしの良いコースを選択した。

ジグザグに上る。時折見える海と空の碧に心が躍る。

伊豆半島では古くから「伊豆石」と呼ばれる良質の石材の加工が行われていた。
山から石を切り出す場所を石切丁場という。安政の大地震により崩落した江戸城修築の際、徳川幕府の命により雲見では間地石を切り出していた。

ここの石は伊豆のサクラ石と称され、雲見の男たちはみな、農作業の合い間にノミを持ってここ桜山へと入り、石の切り出し作業に従事したという。

古道を歩いていると石切場には度々出会う。熱海から歩いてきた中で一番多く目にするコースにアドベンチャー感が高まる。

三浦歩道は一旦、国道に出て少し北上。まもなく雲見霊廟がある。石切場だった場所を現在は納骨堂としている。

まるで古代遺跡のよう。日本は木の文化だと言われるけど、これだけ石に囲まれているとエルサレム旧市街の街並みを思い起こす。

霊廟から再び国道を北上すると、三浦歩道の入り口に到着。

再び、山道を上りる。石積みされた段々畑の長い急な階段が続く。

上りきると広い平場に出る。

今日の予定してるゴールの岩地海岸までは3.58km。その前に三競展望台を目指す。記載のない道標が展望台方面だ。

絶景。眼下には岩地、石部、雲見の浦々。雲の奥にそびえるのが富士山だ。ここでひと休み。

古くから地域の信仰の対象となっている烏帽子山。古事記で登場する姉妹コノハナサクヤヒメとイワナガヒメの物語を由来とした富士山との陰陽になっている。

雲見浅間神社では毎年、2月23日(富士山の日)に富士宮浅間神社と合同で祭事を開催している。伊豆半島にとって霊的に重要なスポットの一つと言える。

太郎さんに頂いた甘夏を食べる。汗出した身体に美味しく沁み渡る。

再び山道を歩き、黒崎展望所を目指す。直線に続く丸太の階段を上り、尾根沿いに桜の林をくぐる。

11:00 黒崎展望所に到着。木陰に隠れたチルスポットだ。休憩したばかりだけど、再び小休止。心地よい風と甘夏をいただく。美味しい。

再び山道の分岐点まで戻りジグザグに下る。階段はあるけど、土が覆って段はほぼない。滑らないよう慎重に歩く。

朝の雨の影響で溶けたように崩れた箇所もある。落石も要注意だ。

石部の集落が見えてきた。

民家の脇道を通り、石部の集落に出る。

伊豆峯次第のポイントである伊志夫神社チェックイン。

同じ時期に設置された狛犬なのだろうか。凝灰岩が侵食されたのだろうけど、海側と山側というだけでこんなにも違うものなのか。

夏の空を思い出すほど爽やかな空。橋を渡り、川沿いに歩く。

国道に出たら、石部の信号を右折。石部海岸でメロウな風と波をしばし満喫。学生の乗った団体バスから手を振る女の子。私も手を振り返す。

さぁ、もう一山。ジグザグ上る。一回止まると身体が重いけど、しっかり身体を使うと心地良さが勝つ。足の指でしっかり大地を掴む。急な上り道はお尻の筋肉を意識して使う。腰の痛みはこれで改善される。

残り1.6km。谷沿いにしばらく上り道。小さな峠に石仏が一体。宝暦五年(1755)と彫られている。

崩れそうな細道をゆっくり下ると、山の表情が変わった。沢で手を洗う。風が囁く。

コート・ロシューズの裏手を下り舗装道路に出て、集落方面へ左折。

岩地の集落が見えてきた。車で通り過ぎると見ることができない景色。歩くことによって新しい発見があり、感動がある。歩くことの醍醐味だ。

国道を横切り、入り口に石仏のある階段を海方面へ下る。

下りきったら海沿いに左折。岩地荘の脇から、本日のゴール諸石神社に到着。

自分を中心に世界があるのではなく、世界に自分が置かれてる感覚。意味を持った情報を通して世界を理解するのではなく、人間が意識的につくったものではないもの、自然と一体であることに幸せを感じる時間。

心が変われば、壁は扉へと変わる。


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