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メタバース幻想(中編)|『Meta』のメタバース戦略は、きわめて『Facebook』っぽい
"メタバース"というバズワードの立役者は、他でもないFacebookです。
そのFacebookが28日、社名を「Meta」に変更し、まずは約100億ドルを投資してメタバース領域に注力していくと発表しました。
今回の発表内容を聞いたところ、その戦略がとてもFacebookらしいのではないかと推察し、備忘録としてnoteにまとめている次第です。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64504055/picture_pc_3c2f5f4f8bebe9fae2f7f37f4160e63b.png?width=1200)
この「メタバース幻想」と題したnoteでは、前後編でメタバースの概要とそれが抱える課題点、それを超えて私たちが実現を目指すネオ・メタバースという概念ついて紹介する想定でした。
しかしながら、その中核を担うFacebookの社名変更は、市場が動く大きな転換点といえます。後世の年表に残るような史実です。
そのため、社名変更が発表されたFacebook Connectにおけるトピックをまとめ、"Meta"の考える戦略の推察を中編とすることにしました。ぜひ、前後編と合わせてご覧ください。
1.自己紹介
早稲田に住んでる慶應生(@iwhododo)です。
大学院に通いながら、AR企業を設立し、自社サービスを開発しています。
いま取り組んでいるサービスは、『いま話せる友だちを一挙に誘って、一緒に過ごせる』Z世代向けの"音声AR"SNSです。いまだに続くリモート・オンライン環境、それに続くハイブリッドな新しい生活様式において、常時接続型のサービスを目指しています。
これは一見すると、SFやゲーム性といった「メタバース」とは乖離した領域のものです。しかしながら、僕たちは構想段階から一貫して本質的に「メタバース」を標榜しています。
Z世代、音声SNS、メタバース、NFT…と僕たちの取り組んでいる領域はまさしくバズワードのオンパレードなのですが、これは決して煽動されて闇鍋を拵えている訳ではありません。それらの術語はバラバラのものでなく、次世代のソーシャルに連関したひと繋ぎの単語郡です。この全容が順を追って明らかになっているとも言い換えられます。
![名称未設定のデザイン (2)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64516050/picture_pc_6ce2bd399794ae59e742941c0199b926.png?width=1200)
2.メタバースとはなにか?
メタバースはインターネット上にある共有仮想空間を指す概念です。
その出典はNeal Stephensonによる著作『Snow Crash』で、作中では仮想空間で経済活動をはじめとするあらゆる活動が可能になっています。
メタバースの詳しい内容や複数の定義については前編に記載しているので、そちらを合わせてご覧ください。
3.メタバースとVRは違うもの
よくある誤解として、「メタバースとはVRのことだ」という認識があります。確かに、どちらも未成熟で曖昧なので、分かりにくい概念です。
しかしながら、これらは密接な関係がありながらも等価ではありません。まずは下記のようなイメージをそれぞれ持っておくと、他のニュースや新しいトピックを知るときに、理解の助けになるはずです。
メタバース:インターネット上でみんなが共有する"空間"
VR:まるで現実のような体験や現実の感覚を得られる"技術やシステム"
4.GAFA各社のVR/AR戦略
VR/ARにおけるGAFA各社のアプローチは様々ですが、Appleは「ライフスタイルをデザインしてそのUXを向上させるためのAR」、Googleであれば「Androidを軸にした手軽で普及しやすいAR」などの特色があります。
特にFacebookはソーシャル領域でのVR活用に関心が強かった企業です。そのために単なるリサーチに留まらず、論文を含めた研究発表も非常に熱心で、ソフト/ハードの両面で大きくVRの発展に寄与してきました。
そもそもなぜFacebookがARではなく、VRを先んじて選択したについて察するには、VR/ARの技術的な観点だけでなく、独禁法や物理的な空間での制約などを含む複雑な要素が考えられるので割愛します。
各社の詳細は別途、下のnoteにまとめています。合わせてご覧ください。
他方で昨今はAppleはVRを、FacebookはARを意識的に取り入れるなどして、対象やユースケースを軌道修正しているように思われます。これは想定外に被害が拡大したコロナ禍によって、不可逆的な生活環境の変化が起きたことを考えれば腑に落ちます。
今回の発表でも、メガネをかけると自宅からモニターや他の社員がいるオフィス空間がARで表示されるイメージ映像が公開されていました。昨年から「Project ARIA」というARグラスのプロジェクトが発表されているので、そのゴールをイメージしたものだと思われます。FacebookはRay-banと共同でスマートグラス「Ray-Ban Stories」の販売を既に開始しています。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64504447/picture_pc_6c5f88e6cf880be8d457b1b18d0514fc.png?width=1200)
これは仮想空間にアバターで入り込むHorizon Worldsやその一部にあたるVR会議ツールのHorizon Workroomsとは少し毛色が異なります。より幅広く日常的で、そこで完結する利用用途が考えられているのかもしれません。
![名称未設定のデザイン (2)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64516068/picture_pc_cb80daf58ecdb86418e417189e895eb7.png?width=1200)
5.Facebook Connectにおける発表内容
Facebook Connectは年次のVR/AR開発者向けカンファレンスで、関連サービスについての発表が毎年行われてきました。例えば、昨年は新型VR HMD"Oculus Quest 2"がこのFacebook Connectで発表されています。
今年は事前に社名変更がアナウンスされていたことで、例年以上に注目が高まっていました。しかしながら、当然、発表内容はそれに留まりません。
発表内容は下記の通りです。
【注意】特に5-4.以降は細々した内容なので、VRの開発や製品自体に興味のある方を除いて、スキップして先を読み進めてください。
5-1. 3つのバーチャル空間「Horizon」
5-2. ARフィルターの拡張
5-3. Oculus Quest 2向けの新製品
5-4. MR開発者向けの新しいプラットフォーム
5-5. ハイエンドVR HMD「Project Cambria」
5-6. 同社初のARグラス「Project Nazare」
5-7. Metaへの社名変更
Mark Zuckerbergの基調講演は冒頭で「メタバースはモバイルインターネットの後継プラットフォームになることを信じている」とかねてより主張している発言を繰り返し、強調しました。
それから「まずは製品紹介でなく、メタバース的な体験を伝える」とアバター姿に変身します。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64508837/picture_pc_8761a35deb5471e76cb812ac2262e6ed.png?width=1200)
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64508946/picture_pc_1ad8f9dbead5e526a5f370af5c85aee8.png?width=1200)
アバターになって移動した先では、同じくアバター姿でトランプに興じるAndrew Bosworth(Boz)たちが交流しています。彼はFacebookのVR/AR部門でVice presidentを務めており、まもなくMetaのCTOとなる予定です。
そこにはホログラムで参加しているユーザーがいたり、バーチャルな空間にいながらビデオ通話をしたり(Zuckerbergの配偶者であるPriscilla Chanも出演していました)と、かなり高い自由度をアピールする映像となっていました。
Metaが現在開発を進めているバーチャル空間のソーシャプラットフォーム「horizon」に今回「Home」が追加され、用途やシチュエーションによって3つを使い分けて生活していくことが意図されています。
Horizon Workroomsのカスタマイズ機能も同時に発表され、会社ロゴやポスターで"オフィス感"を出すための工夫が追加されました。今後もユーザーからのフィードバックを受けて改善や追加が行われていくものと思われます。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64511832/picture_pc_debc83bc1275687b77a8dd37afb8ee7f.png?width=1200)
horizon Home:友達や家族と過ごす自分の家
horizon Worlds:買い物やライブに参加できる街や公共空間
horizon Workrooms:対面せずとも仕事や会議を円滑に行うための場所
また、同社の社名変更にはアメリカを中心としたプライバシーとセキュリティの問題も要因であったことから、国際業務担当でVice presidentを務めるNick Cleggも顔を出し、最初期(Day 1)からメタバース領域において、それらに十分配慮する必要性と自らの責任を強調しました。
5-2.ARフィルターの拡張
Instagram用のARフィルターを個人でも構築できる「Spark AR」は顔だけでなく、全身や体にもエフェクトをかけることが可能にアップデートされています。これをさらに強化し、ARグラスのサポートツールセットも提供することが発表されました。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64511078/picture_pc_579a75b9611937c45a98a1efe750398d.jpeg)
将来的に特定の場所に行くと体験できるロケーションベースのARを可能にする計画です。これによって、ARグラスをかけながら音声ガイドつきのツアーを楽しんだり、現実世界を活かしたゲームが開発可能です。
この強化はおそらくTikTokやSnapchatなどのフィルターつきショート動画と、ARフィルターと「ポケモンGO」などを運営するNianticの位置情報ARに対する脅威から進めたものだと思われます
5-3.Oculus Quest 2向けの新製品
Oculus Quest 2に関しては、PS2などの人気タイトルのVRリメイク作品や、フィットネスにVRを利用する際にヘッドセットを汚さずに済む追加アイテム「Active Pack」の販売が発表されました。
5-4.開発者向けの新しいプラットフォーム
開発者がQuest 2でのVR/AR体験を構築するための新たなプラットフォームである「Presence Platform」。ここではコントローラーで手の動きを構築するための「Interaction SDK」などが提供される予定です。VR/ARの課題であるコンテンツ不足には、市場規模だけでなく、ノウハウが蓄積されていないことなども原因があります。公式の技術的なサポートで情報が集約され、同時に提供されることでコンテンツ数やクオリティの向上が期待されます。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64512683/picture_pc_3ad480d468b13d652ec14887409ea64f.png?width=1200)
5-5.ハイエンドVR HMD「Project Cambria」
さらに「Project Cambria」という新しいVR HMDも一部情報が公開されました。Oculus Quest 2の後継機ではなく、ハイエンドモデルです。顔の表情をトラッキングするセンサーを内蔵しているため、VR空間上のアバターに表情が反映できると伝えられています。
5-6.同社初のARグラス「Project Nazare」
VR HMDに加えて、上述したスマートグラス「Ray-Ban Stories」に続くARグラスのプロジェクト「Project Nazare」も発表されました。これはスマートグラスではなく、Facebookを含むMeta社で「初の完全なARグラス」になると述べています。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64514551/picture_pc_c8dc2ce80095c90aa5d0156f7dde794c.png?width=1200)
非常にスマートなデザインで、これを装着して動画撮影やWhatsAppのチャット、テーブル上でARゲームをプレイするデモ動画が紹介されました。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64514648/picture_pc_54649f758658c3d6935d6e4cc2f981c1.png?width=1200)
バッテリーの改良やいかに軽量化するかなど、まだ解決すべき課題は多数あるが、開発は進んでいるとザッカーバーグ氏は語った。
5-7.Metaへの社名変更
そして基調講演でこれらの発表を締め括ったのが社名変更のアナウンスです。Mark Zuckerbergは「既にFacebook、Instagram、WhatsApp、Messenger、Oculusと様々なサービスを運営し、さらにhorizonも立ち上げた現在、Facebookという名称は、同社のすべてを網羅していない」「自分たちはメタバース企業とみなされたい」と述べました。
なお、同社が買収し、これまでVR製品に使われていたOculusというブランド名は今後"Meta XXX"という形式に統一されるとAndrew Bosworthが語っているため、同社の主力にソフトウェア以外のVR/AR製品も据えていくことは間違いありません。
![名称未設定のデザイン (2)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64516146/picture_pc_261275a6a51788e0412b73295df30e56.png?width=1200)
6.MetaのVR/AR戦略は"存在しない"?
さまざまな発表のあったFacebook Connectですが、、、
率直にいえば、何が言いたいか分からない内容でした。
それぞれバラバラのトピックであるため、全体としては何が発表されたかを紐づけて話すことは非常に難しい内容となっています。また、具体的な進展よりも曖昧なコンセプトやイメージ映像に頼る部分が非常に多く、またその映像のクオリティもどこかで見たことのある陳腐で退屈な印象です。
社名変更当日の株価上昇は4%程度ですが、内容如何では市場の関心をもっと引き上げられたのではないかと思います。
しかしながら、これは同社が伝えたかった戦略や意図を伝えきれなかったということでは決してないと考えています。むしろこれこそが実際に行なっていくものなんだと確信しました。
つまり、Metaのメタバース戦略は次のように推察されます。
数百億ドルの潤沢なリソースを使って、全ての可能性に先行で分散投資する
メタバースは単一の企業だけで成立するものではなく、ソフトもハードも未熟です。そのため、未来を逆算して設計したものを作るのではなく、概ね方角を合わせたら検証しながら進むのだと思われます。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64518521/picture_pc_5ea1fedee73ecc89098f70e8495fcf58.jpeg?width=1200)
Facebookの掲げる行動原理・Hacker Wayのひとつである"Done is better than perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)"という言葉とこの画像はあまりに有名ですが、まさしくこのスローガン通りの方針ならば今回の発表も辻褄が合います。一見すると無駄が多いようにも思われる方法ですが、極めて有効であることは周知の事実です。
Founder’s Letter, 2021と題された同社のブログで、Zuckerbergは「今後10年以内に、メタバースを10億人にリーチさせ、数千億ドル規模の電子取引を提供し、数百万人規模のクリエイターや開発者の雇用を支える」と述べています。
この10億人や数千億ドルの取引という数字を見たとき、どのように感じますか?多すぎて無謀? 遠くて少なくて、夢がない?
Facebookは既に30億人のユーザーを抱えています。そのリソースを既に持っている中での10年後に10億人という試算は、個人的にかなり控えめな見積もりだと感じました。
しかしながら、実際に現実味を帯びた数字でもあります。2014年にOculusを買収して以降、何年も苦心しているからこその視界や勘定かもしれません。
ブレイクスルーの変数は色々なところにありますが、ひとつが突破できれば解決できる問題ではありません。それゆえ、あまりコンセプトやデザインさえ定めずに、全ての領域に目を配る戦略は現状最も正しいと思われます。
とはいえ一社ですべての要素にベットし続ける行為は、莫大なリソースがあって初めて成立する方法でもあります。どこにも真似できません...!!
ハードウェア、プラットフォーム、コンテンツまで全てを賄おうとするMetaは、他のSNSにあるどんな機能もあるけど、個性を感じにくいSNSであるFacebookらしい標準化だと感じました。
これは裏を返すと、実際Facebookと同じ機能でも特化したSNSがいくつも成立するように、特定領域に特化したサービスも十分あります。VRChatやRealityのようになりたい姿で自分を楽しむためのサービスにも必ず需要があるし、特定の状況に合わせて作られたハードウェアも必ず生まれ続けます。
実際に私たちもそのような環境下でモバイル向けの音声SNSを開発し、単なるインターネット上の空間を超えた「ネオ・メタバース」に向けて進んでいく心づもりです。
Nianticの目的とするAR的な世界観についても後編で触れます。
後編では、
NFTとの関連性
メタバースの限界
「ネオ・メタバース」という止揚
ネオ・メタバース企業はどこか
なぜ音声サービスを開発するのか
について書く予定です。どうかフォローして気長にお待ちください。
コメントやリアクションはTwitterも含めてすべて拝見するので、気になるところや感想をお寄せいただけると喜びます!
![名称未設定のデザイン (2)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64517570/picture_pc_c64a47a1314cd7e11b8ac7d1b14b4679.png?width=1200)
こんな人と話したいです
僕たちは現在プロダクトのテストをしながら改善している段階です。
今後シード・プレシリーズAの資金調達も計画しています。ぜひメタバース領域や音声SNSなどにご興味・ご関心のある方はご連絡ください。
また、ほとんど創業期で体制もなきに等しい段階ですが、モノがあってそれをどう改善していくか考えることができるフェーズでもあります。だからこそ一番おもしろい時期で変化を楽しめる人には最適だと思っています。
僕たちも学生なので、もちろん学生も受け付けています
・アプリの開発経験orグラフィック全般好きなUIデザイナー
・SNS運用に興味/インターンなどの経験のある人
・個人でもゲームのリリース経験があるUnityエンジニア
・何かがんばって結果出したことある人
すべて返信するので、まずはお気軽にDMまでご連絡ください!
また、メタバースに加えて、VR/AR・esports・クリエイターエコノミー等でご関心のある企業の皆様は、どうぞホームページ下部のお問い合わせフォームからご連絡ください(TwitterのDMでも大丈夫です!)。
このnoteは全文無料です。試しに価格設定してみました。
サポートいただいたらオフィスのお菓子が潤います!!うれしい!
会社のみんなとドーナツ食べます。