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先生の仰せの通り〜ep.19〜
〈え?〉
気配を感じようと顔を横に動かして気づいた。
〈アイマスクを着けられてる。〉
「先生?アイマスク外してください。怖いです。」
「……………。」
やっぱり返事がない。
〈先生は、私が狭いとこや暗いとこが苦手なのを知ってるから、こんな事をするはずがない。じゃあ、いったい誰が?〉
「誰?」
恐怖しかなかった。私の股の間に体を入れ、手首を拘束し、アイマスクを着けた人物。
「しーーーーーーい。」
緊張がマックスになった。
〈どうしよう。先生、助けて。〉
身体が震え、涙が出てきた。
「お願いします。助けてください。」
「抵抗しなければ、直ぐに終わる。」
低い声で見えない人物が言う。男の言葉の意味がわかったのは直後だった。
「んん…いや。」
男が首や胸に舌を這わせる。
〈私、何も着てない。やだ、気持ち悪い。〉
「や、やめて。」
男は無言で胸の先端を舌で弄る。手で押し退けようと腕を動かそうとしても、手首を掴まれていてどうしょうもできない。足もバタバタと動かしてみたものの、股の間に入られているので無駄だった。
ちゅぱ…ちゅぱ…。
胸を吸われる音だけが響く。
「いや…やめて。」
「もう一度だけ言う。大人しくしてたら解放する。」
「しなかった…ら?」
「先生に二度と会えないようにする。」
[悔しいけど、先生を交換条件に出せば、大人しくしてくれるよね?チョコさんが欲しくて欲しくて仕方ないんだよ。一度だけで良いから俺を感じてよ。]
「わかりました。」
先生に会えなくなるのは嫌だから、私は大人しく男を受け入れることにした。男は握っていた私の手首をから手を離した。試されてると直感した。男は首や耳を舐め、手は乳首を弄ってる。
〈ん?この匂い…何処かで嗅いだ匂い。思い出せ。私。〉
ちゅ…ちゅ…ちゅ…。
首筋にキスを落としているかと思ったら、急に唇を重ねてきて、舌を挿入してきた。
「んん…ちゅる…ちゅ。」
胸の先端をキュッと摘まれて、反応したくないのに、身体が反応してしまった。
[先端が性感帯の一つか。強めに弄ってみようかな。チョコさんの声が聞きたいよ。]
更に強めに摘まれ、先端をクニクニと弄られる。
「んん…だめ。やだ。」
私は必死に冷静になるよう努め、男の匂いをもう一度嗅ぐために、男の顔を引き寄せキスをした。
〈思い出した。この匂いは三木君の匂いだ!〉
「三木くん?」
「あーあ。ばれちゃった。」
「どうして?」
「チョコさんのこと好きだから。でも、チョコさんは先生のことが好きみたいだし。それに、先生とは、キスマーク付けられるほどの関係で、先生もチョコさんが好きで…。こうでもしないと、チョコさんを俺のモノにできないじゃん。」
「やり方が、おかしいよ。」
「わかってるよ。自分でもおかしいってわかってる。でも、どうしようもないんだ。ねぇ、チョコさん。一回だけで良いから、俺のこと感じてよ。そしたらチョコさんのこと諦めるから。」
「できないよ。そんなこと…。」
「あ!マスク取らないで!今の俺、見られたくないから。」
私はマスクにかけた手を下ろした。
「終わったら、先生のとこに返すから。」
「抵抗したら?どうするの?」
「抵抗されたら、先生に動画を送る。」
「ひどい!」
「わかってる。俺、狂ってるよね?」
三木君の雰囲気を掴もうと必死に五感を研ぎ澄ませた。
「初めは、ただ会話ができれば良いと思ってた。だけど、メールで解決できることはメールでってラインが来た時に、先生のモノになったんだって確信したんだ。そしたら、無性に腹が立って…。チョコさんお願い。俺が本当に狂う前に、チョコさんの優しさの欠片を分けて。」
「人を好きになる気持ちはわかるよ。でも、好きな人が嫌がることをする事は間違ってるよね?」
三木君と私の間に沈黙の時間が流れ、その沈黙を破ったのは三木君だった。
「交渉決裂ですね。チョコさんに許してもらおうなんて思っていません。警察に届けるなら、それでも良いです。終わったら僕は二度とチョコさんの前に現れませんから。」
〈先生。先生ならどうしますか?優しさの欠片をあげますか?私はどうしたら良いですか?人を好きになる気持ち。その人を待ちわびる気持ち。その人のことが愛おしくて、切なくて…三木君のやり方は間違っているけど、彼の気持ちが痛いほどわかる。だって、私が先生を想う気持ちと同じだから。先生に会いたい。〉
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