彼女が始める小さくて大きな旅【イワシとわたし 物語vol.9】
地元に戻った彼女は、今日も阿久根の街を歩く。
阿久根駅を出れば港が見える。
その間をいかり型の青い街灯がまるで道しるべのように連なっている。
彼女のお気に入りの場所だ。
当たり前だと思っていたものは、外を向けばちっとも当たり前じゃなくて、けれど、また内を向けばそこには当たり前として佇んでいる。
それでも、今の彼女にはその当たり前がキラキラと輝いて見える。
こんなに近くにあったのに、全く気付かなかったコトが至る所に散らばっている。
でも、まだまだ気づいていない人たち