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大学卒業時には英語しかできなかった純日本人が、マルチリンガルの外資系コンサルとして、外務省に英語のアドバイスをするようになる話(第6回)

なぜ語学をするのか?

思わせぶりなタイトルでここまで書いてきましたが、「なぜ語学をするのか?」とのそもそもの動機が、自分にとっての足かせになる時もあることを、今回は紹介したいと思います。

学ぶ楽しさ、ふくらむ夢

答えは人それぞれだと思います。楽しいから、知見を拡げたいから、専門だから、仕事や生活で必要に迫られてなど。元も子もない話をすると、2020年は、いろいろな言語の機械翻訳の精度が上がり、自動翻訳サービスが無料ですぐに手に入る世界です。ただの簡単な翻訳であれば、誰でもすぐに用が足せます。

やはり、語学をする理由には、楽しさがあった方がいいと思います。語学を通じて異文化、違う町や人と出会えるような気がする、出会ったときにコミュニケーションできるために備えるなど、どこか、夢みたいなものが理由として引っ張ってくれるから、語学を続けることが多いように思います。

米大学院時代の修行が実を結ぶ

さて、帰国してすぐ、米大学院留学前に受験が間に合わなかった仏検2級を受け、危なげなく合格しました。英語能力の証明書としてTOEFLも受けなおしましたが、こちらは95%以上のスコアがでました。米大学院前にあったリスニングの壁は、知らぬうちに乗り越えていたようです。

帰国後に受けた試験や面接は、すべて合格しました。飛躍の1年でした。国連開発計画東京事務所国際協力機構(JICA)エジプト事務所外務省在シリア大使館広報文化担当官と、順調に国際協力業界でキャリアを進めました。米大学院時代の修行が、たしかに実力として発揮されだしたのはこの頃でした。

外務省の試験に受かって、在シリア日本大使館に赴任しました。執務室は半地下でしたが、広い執務室を一人で使えました。私のアシスタントの部屋とは部屋の隅でつながっていて、そこは大使館の図書資料室や会議場にも繋がっていました。そのすべてが私の管理下にありました。英語しか取り柄がなかった新社会人が初めて手に入れた、自分の執務室と大きな権限でした。日本のシリアにおける対外情報発信の現場を、任されました。

アラビア語は挫折、語学に夢を見なくなったころ

日本語に加えて、英語フランス語を身に付けて、今度はいざ中東で、さらにアラビア語を習得、となるはずでしたが、今回ばかりは、そうはうまくいきませんでした。

アラビア語が難しいからというよりも、学習意欲の問題でした。文化も言葉も違う国で、時間やストレスを管理しながら語学を続けることに、楽しさを覚えなくなっていた気がします。

また、アラビア語が飛び交う世界が遠くにあって、あやれこれやと夢に思えばこそアラビア語を勉強したいと思ったのかもしれませんが、現実にそこで数年間住む者にとっては、アラビア語はドライな現実であって、想像力を膨らませてわくわくするような対象にはならなかったのかもしれません。

もう、ここまでやったんだからいいだろうという、おごった気持ちもあり、せっかくアラビア語を学ぶベストなチャンスを逃したことは、いまも反省しています。

エジプトやシリア、南スーダンの勤務経験は、またいつか詳しく別のところで書きたいと思います。長くなります。また、言語や文化の問題よりも、人とは、社会とは、紛争とは、途上開発国とはなど、もっと角度が違う話がメインになると思うからです。

語学生活のハイライト:赤十字国際委員会のジュネーブ選考2日間

語学関連では、シリアから帰国後に仏検準1級に合格。加えて、漢字検定準1級も取りました。日本の大学院に通っていたころには、スペイン語検定4級も取りました。その後もフランスの大学へ留学するための資格であるDELFの最高レベル、DELFB2を取得。スペイン政府公認のスペイン語資格DELEDELEA1も取ってみました。語学はもうとっくに、自分の得意分野になったのだと思います。今でももちろん、語学への興味自体は、続いています。

いままでの語学生活の集大成は、ジュネーブで受けた赤十字国際委員会(赤十字の総本山。武力紛争が専門)の2日間にわたる試験です。

突然、英語のスピーチを迫られたり、30分ほどの英語フランス語でのインタビューやライティングのテストがあったり、ランチタイムも選考の場として、いかにまわりと英語フランス語で社交するかなどを試されて、英語フランス語を最大限に出し切ることを求められました。結果は、純日本人男性としては唯一、正規職員の合格者になりました。

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この赤十字国際委員会の正規職員として南スーダンに行った経験を経て、海外ではなく、ようやく日本で語学力を使って働こうと思うようになりました。そこで外務省をクライアントとして、英語での情報発信についてコンサルティングしたり、外務省員の方々へセミナーをするような仕事をすることになります。

次回は最終回です。

(了)

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