見出し画像

160社に応募して内定ゼロ。やっと入った会社も2年で消滅。そんな経験も笑い話になる

私が独立を選んだ理由-杉山直子さん-
「働く女性や子供をもった女性たちが一歩踏み出せるように」そんな想いから、ファミリーをサポートするための情報発信している杉山さん。とにかく顔が広い人で、実際に困っていると人を紹介してくれます。「ヒトがミナ繋がる、でヒトミナなんです」と会社名の由来を教えてくれました。そんな杉山さん、じつは起業するまでの経歴はなかなかしんどいことの連続だったそう。「人生はラクなことばかりじゃない、それでも自分らしい生き方や自分にできる仕事はある」そんなことを教えてくれました。

2019年夏、”いわみんプロジェクト”として、社長や起業家、独立して活動している方を対象に100人インタビューを実施しました。彼らがどんな想いで起業し、会社を経営しているのか? その中での葛藤や喜び、そして未来に向けて。熱い想いをたくさんの人に伝えたいと思っています。

画像4

杉山 直子(すぎやま なおこ)さん

株式会社HITOMINA 代表取締役社長
一般社団法人JAPAN FAMILY PROJECT 代表理事

1977年生まれ
大学卒業後、求人広告、マーケティング企業で営業として活躍。
2012年 HITOMINAを設立。
未就学児童を持つファミリー層をターゲットとした企業向けマーケティング、プロモーション、イベント開催、メディア運営などを主軸に幅広く活動中。

新聞や読書が習慣づけられていた子ども時代
自分もジャーナリストになりたいと思っていました

 「うちは両親の教育で、活字をやたらと読まされる家庭だったんです。小説や文学作品はもちろん、新聞も毎日読んでました。親に勧められて新聞へ投稿しては賞をとる、そんな小学生時代だったので、将来の夢は漠然と新聞記者とか日本の首相(!)になりたいって思っていました。大学でも政治経済学部に進みました。1浪が決まったタイミングでやっと親元を離れて東京に出てきたのですが、親から突き付けられた条件は「1人暮らしでも新聞を取ること」です。その徹底ぶりはすごいですよね。

画像3

 実際の就職ではジャーナリストを目指してマスコミを希望するも、めちゃくちゃ狭き門で、結局は求人広告をする会社の営業に収まりました。ここでの仕事は楽しいながらも、28歳のときにいろいろ悩み始めました。営業での外回りの移動時間は、活字中毒者らしく今まで通りに週刊文春やポストなどの社会派週刊誌を読みまくっていました。そんな生活の中で、あきらめたはずの編集の仕事をもう一度目指したくなり『編集・ライター養成講座』に通いはじめます。講座の先生からの課題にダメ出しをくらいまくり、「あ、自分には書く才能がないのかも」とついにさとりました。

 一方で、いつの間にか今まで周りにいたはずの女の友だちや知り合いが、どんどんいなくなっていることに気が付いたんです。「あれ? 働く女性たちはいったいどこに行っちゃったの?」って。彼女たちは結婚や妊娠のタイミングで会社を辞め、専業主婦やパートとして過ごすようになっていたのです。私が仕事で目にする求人広告欄も「主婦歓迎」「週3パート募集!」ばかりです。仕事ができる女性にたくさん出会っていたのに、どうしてんだろう? 女性の働き方とか生き方とかってもっと可能性があるんじゃないかな? という疑問が頭から離れなくなりました。
 そこから、ファミリー向けの事業に興味を持つようになりました。その数年後、会社が業績悪化で早期退職者を募集したので、迷わず手を挙げて転職活動へ! ところがなかなか次の就職先が決まらない。160社に応募して内定がゼロ。。。

画像5

日本経済の低迷期。本人のせいだけではないとしても、160社から断られたら、さすがに落ち込みますよね。杉山さんも自己否定されているようで、本当につらかったと言います。でも、杉山さんにはすでにやりたい仕事がありました。自分で気づいた社会課題を解決したいという強い思いが生まれていたんです。

転職活動で160社に応募して、内定ゼロ
やっと入った会社も2年で消滅

 2か月ほどしてようやくファミリー向けのマーケティングをしている企業に採用してもらいました。ところがこの会社も2年後に事業縮小のため、私がいた部署の人間は全員が退職することになりました。

 会社がなくなったとしても、すでにやりとりしていた企業さんも多かったし、この業界から離れたくない気持ちが強く、前回の転職活動での苦労も思い出され、かなりモヤモヤした気持ちでした。どうしたらいいのか悩んでいた時、私が独立するならそのまま仕事をお願いすると言ってくださるクライアントさんがいたんです。「そっか、私が独立したらいいんだ!」と気づいた途端に、目の前がパーッと霧が晴れていきました。そのときの感覚は今でもはっきり覚えていますね。

子連れでも安心しておでかけできる情報満載ポータルサイト ココフル

▲杉山さんが運営している家族向けのサイト「ココフル」

 そんな感じで思い切って独立しました。本当はフリーランスでもよかったのですが、法人じゃないと口座取引ができない企業さんもいて、急いで法人手続きをしました。次に取引口座の開口ですが、独立したての人間には簡単に口座が開けずにかなり慌てました。知り合いから信用金庫なら大丈夫だと教えてもらい、即日中に口座が開けたときには感動すらしました。『信金は中小企業の味方』という意味が、このときやっとわかりました。
 その後もお金ではいくつも苦労しました。イベント運営のために、融資を受けたくてもうちのような小さな会社だと銀行は簡単には貸してくれません。コストが先にかかり売り上げは後から入ってくるため、規模が少し大きくなってくると、支払いと入金のズレのため「明日入金されなかったらどうしよう」と思って、不安で眠れない夜を過ごしたこともあります。

大きなくくりでのファミリーを
今後もサポートしていきたい

 最初は代理店業務やSNSアップの代行業などをやっていたのですが、同時にファミリー向けのイベントなどもよくやっていて、イベントの告知や紹介などをするためのオウンドメディアがあったらいいなぁと思い、2014年に家族のお出かけ情報を発信する『ココフル』というサイトを立ち上げました。そのおかげでいろいろお声をかけていただく機会が増えました。会社としてアルバイトやスタッフを雇うことも検討しましたが、仕事の波があるため定期雇用は難しいことと、そもそも自分は会社経営タイプじゃないな、ということで、基本は私1人と業務委託しているスタッフというスタイルで進めています。

画像5

▲子連れで参加できるパーティやイベントなどを多く主催しています。

 設立時期が同じくらいの会社が、増資したり上場したりという話を聞くと少し落ち込んだりもしますが、私のペースでやっていければいいかな、と思っています。今後は、ファミリーを大きなくくりでとらえて、ペットとの暮らし方について事業を始めたいなぁと思っていますし、きっとシニアという枠でもやっていく必要があるだろうなと感じています。

同じように女性の働き方について疑問を持ったり、自分でスタートさせた女性たちが杉山さんの周りに集まってきます。そして、みんなで連携しながら、社会に対して発信&活動しています。女性活躍が立ち遅れている日本の状況を少しでも改善するために、こういった女性たちがつながり、力を合わせていくことが必要なんだと思います。

下町の2D&3D編集者。メディアと場作りのプロデューサーとして活動。ワークショップデザイナー&ファシリテーター。世界中の笑顔を増やして、ダイバーシティの実現を目指します!