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いわきFCが筋トレをする理由

先日、テレビ朝日の番組「やべっちF.C.」の勝手に神3のコーナーでいわきFC選手の"肉体美"を取り上げていただきました。

今回のように全国放送の人気番組に取り上げていただけたことは私たちにとってとても嬉しい出来事です。

サッカーファンや関係者の間では「フィジカル軍団」などと揶揄されるいわきFCですが、私たちの"筋トレ"の取り組みは、これまでもしばしば様々なメディアに取り上げていただいてきました。

練習の半分以上が筋トレ、徹底された栄養管理、遺伝子分析、血液検査、、、その取り上げられ方は様々ですが、いわきFCは発足から一貫して"フィジカル"を向上させるため、あらゆる角度からアプローチしてきたのです。

なぜそこまでして、いわきFCは"フィジカル"にこだわるのか。
今回はその理由をお伝えしたいと思います。

■日本のフィジカルスタンダードを変える 〜魂の息吹くフットボール〜

「私達が標榜する『魂の息吹くフットボール』とは、身体が大きく、スキルを備えた選手達が90分間、足をまったく止めることなく攻撃的にプレーする、ということです。今やヨーロッパを中心とする世界のサッカーは、どんどんアグレッシブになっている。そこに守備の概念はありません。サイズとパワーを兼ね備えた大型の選手達が前へ前へとノンストップで走り続け、目まぐるしく展開が切り替わる。それが世界の潮流です。自陣に引いて相手のミスを待つようなことはほとんどない。

相手からボールを奪う。奪ったらゴールを目指す。奪われたらまた奪い返す。それを休まずに続ける。そんなハイテンポでアグレッシブなサッカーに、観客は熱狂するものです。そもそもプロスポーツという興行である以上、お客さんを喜ばせるのは当然のこと。相手を囲い込み、ハードなプレスをかけてボールを奪った瞬間に拍手が起きる。サッカーとは本来そういうものです。

先日、プレミアリーグの試合を生観戦しましたが、どのチームも非常に攻撃的でした。ブンデスリーガのチームも同様です。ドイツは監督でいえば ラルフ・ラングニック (当時RBライプツィヒ)さんやロジャー・シュミットさん(当時レバークーゼン)など、優れた指導者のメンタリティは完全に『攻撃』です。

例えばレバークーゼンが王者バイエルン・ミュンヘンと戦っても、ボールを取りに行かずに守るのではなく、アグレッシブに取りに行く。その結果3対0で負けるかもしれないけれど、観客はその勇敢なプレーを見に来ている。だから、例えボールを取られても最後まで行く。

それがサッカーの原点だし、最終的には勝つことにも直結する。そして、そのサッカーを実現するために、彼らは日ごろからフィジカルトレーニングに熱心に取り組み、圧倒的なパワーとスピードを見につけている。つまり、フィジカルトレーニングの重要性は増すばかりです。

日本人がフィジカルでも通用することは、あのラグビーワールドカップでエディジャパンが証明しました。世界のサッカーは高いボールスキルだけでなく、フィジカルをますます重要視するようになっています。いわきFCは、世界レベルのフィジカルを持つ選手達が、90分間ノンストップでフルに走り回り、キレのあるステップを踏み、アグレッシブに前へ前へ攻め立てる痛快な攻撃的フットボールで観客を魅了します。

2016年にクラブを発足させた頃、代表の大倉がとある取材で、いわきFCが掲げる「魂の息吹くフットボール」というコンセプトの背景にあるものは何か、語った部分を抜粋しました。

サッカー(フットボール)という興行における「身体を鍛え上げたアスリートがバチバチ戦うことのエンタメ性」を追求し、観客がワクワク・ドキドキするような非日常空間、熱狂空間を創るためのベースに、フィジカルがある。チームづくりそのものがマーケティングだという考え方です。

結果的に、選手個々のスキルが上がり、勝利する確率も上がる。私たちがストレングストレーニング(筋力トレーニング)に重きを置く意味はそこにあるのです。

■いわきFCが実践するフィジカル革命

いわきFCのクラブハウスにあるロッカーの一部に、「POWER=STRENGTH×SPEED」という言葉が刻まれています。いわきFCの筋トレとは、"動作を鍛える"こと。つまり、フィールド上でより強く、より早く動けるようになることを主目的に置いて日々トレーニングしているのです。

トレーニングをすればもちろん見た目は変わり筋骨隆々な身体つきになるでしょう。しかし、決してボディビルダーのような"筋肉を鍛える"ためだけにトレーニングをしているわけではないということです。

具体的にどんなトレーニングをしているのか。

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単に重たいものを持ち上げるだけのトレーニングではなく、スピード、アジリティ、フィジカル、柔軟性、安定性、スタミナなど、サッカー選手である前にアスリートとしてこれらの複合的な体力要素をいかに高められるかという考え方でトレーニングを積んでいます。

具体的に、ターゲットとする試合や選手のパフォーマンスをもとに時期によって「①基本動作の習得」「②筋力強化」「③動作のパワーアップ、スピードアップ」の3つの段階に分け、例えば「①基本動作の習得」を目的とした時期は重たいウェイトはほとんど使わず、自重での腕立て伏せをいろんなスタンスで軸をブラさずに行うことを意識させるトレーニングをしたり、「②筋力強化」の時期では逆にベンチプレスやスクワットで自分の最大筋力を高めるためのトレーニングをしたりします。

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どんなに重たいウェイトを持つトレーニングをするにも、必ず基本動作を習得するようなエクササイズはセットで実施していて、例えばスクワットをした後、すぐにボックスの上にジャンプして飛び乗るようなエクササイズをしたり、ベンチプレスの後にはビーチフラックスのスタートの曲面を切り取ったエクササイズで起き上がりの動作を確認するエクササイズをしたり、必ず筋力の強化と動作の習得はセットにしています。

なぜなら、先述したように"動作"を鍛えることがゴールだからで、100%の筋力を発揮するためにはそのための姿勢や腹圧の高め方などの基本動作の習得が必須なのです。

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そして、筋力を高めるためには適切な「負荷設定」が非常に重要になるのですが、いわきFCの選手たちがどのように負荷設定をしているのか。
実はそこに、2017年シーズンから導入している「遺伝子分析」を活用しています。詳しくは過去に取り上げていただいた記事などを参照いただけると理解いただけると思いますが、

筋肉の発達の仕方は、その遺伝子タイプによってRR(パワー系)RX(中間系)XX(持久系)という3つのパターンに分かれます。そのため、それぞれに最適な負荷の掛け方をしていくようにトレーニングを個別化しているのです。

また、いわきFCでは年に2回(シーズン前とシーズン後)、パフォーマンス測定を行なっていて、スクワット、ベンチプレス、クリーン、懸垂のMAX測定をします。加えて、垂直跳び、立ち幅跳び、プロアジリティ、YO-YOテスト、10m-20m-50mといったフィールドテストも実施しています。その結果を蓄積し選手へもフィードバックしています。

選手は自分のMAX値を知っているので、その日の練習でパフォーマンスコーチから指定された負荷の目安をもとに最適な重さと回数を自分で決めることができます。さらに日々の記録も専用のシートに記載し蓄積しているので、先週のトレーニングで自分が何キロを挙げたかを振り返りながら負荷を設定することができ、「自分先週○○kgでやったんで今日は△△kgでトライしてみたほうがいいですかね」みたいな会話が、いわきFCのトレーニング中にはよく聞こえてきます。

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スピードを高める時期では、昨年から導入した「GymAware(ジムアウェア)」という、スクワットやクリーンなどでの挙上スピードをリアルタイムで可視化できる機器を活用していることも、最適な負荷設定を可能にしています。

この機器を活用することで、100%の力でウェイトを挙げたときにどのぐらいのスピードが出ていたかを可視化することができるため、その日のコンディションなどによっても変動する選手の最大筋力(1RM)に対して正確な負荷をかけることができ、それがトレーニングの効果と効率を上げることにつながっているのです。

昨年の地域CLの決勝ラウンドで雨でぬかるんだピッチの中でもいわきFCの選手たちは脚を取られることなく踏ん張りが効いていました。これは日々の"筋トレ"を通じて、身体に力を伝えるためのスイッチの入れ方や正しい姿勢を習得していたからでしょう。

■加入から半年経たずで変わった選手の身体

今年から加入したMF山口大輝選手(流通経済大)とDF黒澤丈選手(流通経済大)の身体の変化を紹介します。

選手_骨格筋量_アートボード 1 のコピー

選手_骨格筋量_アートボード 1

加入当初(今年1月)から現在(今年5月)を比較して、骨格筋量が山口選手で+1.5kg、黒澤選手で+2.7kg増加。この二人だけでなく、今年加入した選手9名全員において骨格筋量が上がっており、その数値は平均+1.4kg増加しました。

こうした結果が目に見えて表れることで選手のモチベーションにもつながり、結果として「試合中のフィジカルコンタクトを嫌がらなくなったおかげで堂々と自分のプレーができるようになった」、「フィジカルレベルが上がったことで身に付くボールスキルもある」、「一瞬のスタートが早くなった」などと選手は口にします。

■いわきFCが筋トレをする理由

いわきFCが筋トレをするもう一つの理由は、なんとなく日本人の中にあった「サッカー選手に筋トレは必要ない」という迷信への挑戦もありました。今は徐々にトレーニングの文化が当たり前になりつつもありますが、4〜5年前まではまだまだ「サッカー選手は筋トレすると身体が重くなり動きが鈍くなる」という考えが日本では普通でした。いわきFCはそれを打破するための「ラボ」でもあるのです。

日本人がフィジカルで通用することは、ラグビー日本代表が証明しました。世界のサッカーは高いボールスキルだけでなく、フィジカルをますます重要視するようになっています。

いわきFCは、世界レベルのフィジカルを持つ選手達が、90分間ノンストップでフルに走り回り、キレのあるステップを踏み、アグレッシブに前へ前へ攻め立てる痛快な攻撃的フットボールで観客を魅了します。

新型コロナウイルスの影響で世の中の状況は大きく変わりましたが、7月18日に現在予定されているJFLの開幕戦。スタジアムで躍動する姿をお見せできるよう、選手たちは今日もトレーニングに励んでいます。

(終わり)

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