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ものづくりビジネスをするなら覚えておきたい知的財産まわりのこと

紆余曲折を経て、初めてスバコという独自開発製品を世に出しました。

権利を守るために意匠と商標を出願しましたが、個人レベルでは金銭的負担が大きく、また権利はあっても守るのは自力という辛いものです。

知的財産権とは

発明やデザインなどの権利には分類があります。一番大きなくくりが「知的財産権」で、次の2つが含まれます。

・産業財産権
・著作権など

今回のお話は「産業財産権」の方で、そちらに含まれるのは次の4つ。

・特許(発明)
・実用新案(特許ほど高度ではない発明・無審査)
・意匠(デザイン)
・商標(会社や商品のロゴなど)

ものづくりを個人で行う私に関係するのが意匠と商標。製品の形(デザイン)は意匠権、名前やロゴは商標権を取得して、権利を保護します。

知的財産権について、詳しくは特許庁のウェブサイトをご参照ください。

意匠の問題で公開前に轟沈したクラウドファンディング

過去に自身のデザインしたものが他社製品と似ていたために、製品化を断念したことがあります。

初のクラウドファンディング公開直前というタイミングでした。先にデザインを公表していた企業に問い合わせたところ、次のことがわかりました。

・ウェブで公開していないが意匠出願中である
・私が製品を公開すると不正競争防止法に抵触する恐れがある

その会社のウェブサイトは見ていましたが、権利関係の表示はなく、特許庁のデータベースにも情報は無かったため問題無しと判断していたのです。

しかしクラウドファンディング運営会社が難色を示したため、会社に問い合わせたところ、上記のような回答がありました。クラウドファンディングのプロジェクトは、残念ながらお蔵入り。

この経験をきっかけに産業財産権のことを詳しく調べ、スバコのときは弁理士に依頼して意匠出願。権利は取得したものの、これは必要だったのかどうか疑問に感じています。

取得した意匠権は国内限定、守るのは自力

意匠権を持っている製品に関して、他社が模倣品を出してきたらどうなるでしょうか。

私は企業に申し入れて、販売を差し止める権利はありますが、揉めた場合の弁護士費用などは自己負担。体力勝負になったら、個人ではかないません。

アメリカでものづくりをしている2人組、Studio Neatのブログにも、このような権利関係のことが書かれていました。

記事の中に "A WORD ON PATENTS" という小見出しで特許などについて学んだことが述べられています。概要は次のとおり。

・パテントはとても高額
・パテントには複数の種類がある(特許、意匠など)
・ほとんどのパテントは国内だけで守られる
・パテントはアイデアを盗もうとする人に対して何もしない

("Patent(パテント)"の意味は「特許」ですが、ブログでは産業財産権全般についてPatentsとして書かれています。)

スバコの意匠と商標のため、実費と弁理士費用を合わせて25万円近くかかりました。(スバコは2つの意匠が必要だったので、より高くなっています)

意匠は認められたので、前回のように誰かと被ったかもしれないという心配や、他人が権利化するという心配は無さそうです。

でもこの権利は日本国内限定。海外では同じ権利を行使するためには、海外でも意匠権を取得しなくてはいけません。

意匠出願後、結果が出るまでに9ヶ月ぐらいかかったのですが、弁理士からは海外出願するかどうかを聞かれました。国内で意匠出願をしたら半年以内に海外でも出願しないと権利を取れないというのです。

売れるかどうかもわからない製品のために、さらに数十万円も使う体力は私にはありません。仮に海外で模倣されるほど人気が出るなら、その時点で十分に利益は出ていると考えて、こちらは諦めました。

権利を持っている製品が模倣されたとしても、差し止めには自分で動く必要があり、Studio Neatがいうとおり権利自体は何もしてくれません。

果たして25万円以上かけて意匠と商標の出願をすべきだったのか、疑問に感じているのは、このような理由からです。

商標はすべての国で出願が必要

さらに厄介なのが商標。海外の意匠に関しては、欧州など「地域」という大きな区分で出願できるため、複数の国に対して権利が発生します。

しかし商標はすべての国で出願が必要。その面倒なルールを悪用する「商標ゴロ」もいます。こちらに関してはトリニティのブログが詳しいです。

個人や小規模事業者がヒット商品を生み出し、海外でも広げていこうというときに、このようなルールを知らないとブレーキがかけられてしまいます。

ものづくりをするなら知的財産権のことは抑えておきたい

製品開発の経験など一切なく始めたものづくり。新しい製品を考えるだけでも大変だし、作っても売れなければ利益にはなりません。

知的財産権については知っているのは当然で、お金をかけて権利化しても運用は自分自身。中々にハードルの高い世界です。

ハンドメイド製品で小商いする程度ならそれほど気にすることではないかもしれませんが、私の場合は製品を量産して販売という前提で、海外展開も視野に入れていたので権利関係は無視できません。

では物理的な製品ではないゲームやアプリなら楽かというとそんなことはなく、Apple TV向けのゲームを開発して受賞した知人は、すぐに模倣されてしまい ました。

もはや知的財産権など意味がないわ!と投げ出したくなりそうですが、不可抗力でも他社の権利を侵害する恐れはあるし、独自開発製品の意匠や商標を他人が権利化するリスクもあり、少なくとも知っておく必要はあります。

商標などは原則として先願制で、権利化していなければ他人に取得されてしまっても覆せないこともあり、最近もこんな話題がありました。

個人とはビジネスのスケールが違いすぎますが、あの有名なハズキルーペも権利関係には万全を期しており、莫大な広告費を投じたCMは、その対策でもあることがわかります。

ということで、ものづくりビジネスを行うならば知的財産権のことは抑えておきましょうというお話でした。

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