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プラムビレッジ2022Rain Reteat 〜1〜

【楽園へようこそ】


「楽園」というとどんなイメージがありますか?南国の島?オーシャンビューバスのあるホテル?ふかふかベッドもシャンパンが飲めるプールサイドもありませんが、ここは多分間違いなく「楽園」です。もちろん、万人にとってそうであるとは限らず、部屋の鍵もないし、鍵のかかるロッカーすらないことに驚かれるかもしれません!?
ですが、ここでは常に自分も他の人も楽しんで癒されるように、秩序・・というかもっとふわっとした温かいものを共有していて、日本だったらイライラしたり怒鳴り声が聞こえそう事態が起きても、みんな静かに待ったり、行動します。なんといっても、みんな笑顔(しかも営業用じゃないスマイル)で挨拶をするのが習慣なので、ナタリーポートマンのような美女やブラピばりのイケメンがとびきりの笑顔で挨拶してくれるという意味でも⁉楽園です。
(あくまで主観です)

私は今、故ティクナットハン師が開いたプラムビレッジ(※注)の一つに滞在しています。プラムヴィレッジは各国にありますが、私はその大本山!?のフランス・ボルドー近郊にあるプラムビレッジにいます。ここも大所帯なので僧侶(ブラザー)のいる「アッパーハムレット」と尼僧(シスター)のいる「ロウワーハムレット」と「ニューハムレット」という3か所の僧院に分かれていて、世界中から集まった滞在者と僧侶とが一緒に生活をしています。夏休みなどはたくさんのリトリートが行われていて、子どもの参加者も含めて何千人という規模になったこともあったそうです。ここ数年はもちろんここも閉鎖して、オンラインリトリートを行っていましたが、春から再開しています。という私も実は7年前の夏の1週間のリトリートに来たのがすべての始まりでした。

【私自身のこと]


私は35年勤めていたテレビ局を8月に辞めました。会社によっても違うし、人によっても様々ですが、私は異動が多く、10数種類の仕事に就きました。一番長かったのは番組の制作現場でしたが、ほかにもアニメや、営業や編成なども経験し、最後は社内システムを作るIT系に所属していました。ご存じの通りテレビ局は24時間365日放送していますから、一斉に休むという日はありません。なので、もちろん最近は年休消化や夏季や冬季の休暇を口うるさく言われるようになりましたが、かつては本当に休みにくい状況でした。そして休暇中であっても何か大きな事変があった場合は、どの職場であっても対応を迫られるのが常。週末に同期でスキーに行っていて、スキー場についたその瞬間に、天皇崩御の一報が入り、みんなで会社に駆けつけたこともありました。そういう働き方が普通だと思っていた時代でもあり、24時間365日企画を考えろという部署にいたこともあるので、(そう言われる前からですけれど)仕事以外の時間でも常に仕事のことを考えて、いつでも会社に行けるようにしなくては・・というのが『私』の『習慣』になっていました。考えてみれば私の勝手なお節介も含めて、私は文字通り"走り続け"てきたのと思います。

しかし、ある時アーユルヴェーダの医師に「あなたはガソリンが満タンだと思って走っているけど、もう空っぽになっていることに気づかずに走っている」と言われて、ハッとしました。その時、心の栄養は瞑想だとも言われました。以来体のことはアーユルヴェーダに託して勉強しているのですが、「瞑想」については、及び腰でした。そもそも正座が苦手だし、座禅もあんまりよい記憶がないし・・・といろいろ思っていた中、「無理をしない、心地の良い瞑想」と、「止まる」ことの大事さを教えてくれたのが、このマインドフルネスでした。(以来、私にとっては”アーユルヴェーダ”と”マインドフルネス”が2本柱になっていますが、一応『別物』です。)
幸いかなり頑丈な体に産んでもらったので病気もせず・・いわゆる有給休暇も使わないまま結局最後の日まで、働いてしまいました。自分で「止まる」ことはとても難しいのはみなさんもご存じかと思いますが、目の前に気になることがあると、やらずにいられない、そんな自分の"習慣"や"癖"をまずリセットする必要性を感じ、その場所として選んだのがこの「楽園」です。

いつか会社を辞める日が来たら、プラムビレッジでしばらく滞在してリセットしてから考えよう。という思いが今につながり、私は今Rain Retreat(雨安居)という3か月のプログラムに参加しています。
ルームメイトは同世代のスウェーデン人とイタリア人、30代の韓国系アメリカ人と20代のキュートなスイス人。コロナ禍の時間を英語に費やしたつもりでしたが。。。。まだまだコミュニケーションが難しいです。ただ、ここではノーブルサイレンス(聖なる沈黙の時間)も多いので言葉に頼らない「笑顔」がなんといっても大事なツールです。

【1日のスケジュール】


いろいろ日によってスケジュールは変わるので、ホワイトボードを必ずチェックする必要がありますが、ベースはこんな感じ

5時 起床
5時半~座る瞑想 
6時半~EXERCISE シスターによるヨガやステックエクササイズなど日替わり
7時半~朝食 (食べる瞑想)
9時か9時半~ その日によって変わります
11時半~ 歩く瞑想
12時半~ ランチ(食べる瞑想)
15時~  講座だったり、Mindful serviceなどいろいろ(掃除とかいろいろ)
17時半~ 夕食(食べる瞑想)
20時~ 座る瞑想  

瞑想というと座っているイメージがあると思うのですが、実はいろいろな種類がある・・・というよりも、全てが瞑想と言われています。そして夜の瞑想から朝食が終わるまでと食事中は「ノーブルサイエンス(聖なる沈黙)」の時間になっているので、それも瞑想の時間。もちろん食事中も「食べる瞑想」の時間です。
僧院というと「修行」というイメージがあると思いますが、ここでは「強制」はされません。なにより自分の意志か尊重されるので、全ては自分次第。
セカンドバディという、自分の分身⁉️に今日はパスするよ〜と言っておいたり、体調が悪いとご飯を運んだりもします。マインドフルサービスという仕事の時間もあくまで「サービス」なので、都度、自分で挙手したり、サンアップして参加します。ここではHappy Farmという農園があり、野菜やハーブを育てているのですが、その農作業の手伝いをするのも一つ。他には建物の周りの庭の草むしりだったり、トイレ掃除やら新規滞在者のための部屋の掃除やら、日常のいろいろな作業があり、それらをどのように「マインドフルに」行うか?水の使い方から実感する時間でもあります。

Lower HamletのHappy Farm

【大事なルール】

New Hamlet


そんな中で、絶対的なことがひとつだけあるとしたら、「鐘の音がしたらすべてをやめて呼吸する」ということ。これはどんな人でもどんな大事なことを話していたとしても、あるいは食事中であっても、全ての動きを止めます。200人いてもあっという間に鳥の声が聞こえるようになるくらいすべてが静まり返るのはとても不思議な瞬間です。ここは時間というよりは「アクティブベル」というスケジュールの15分前に「招かれる」音に従って、行動します。
この「鐘」はいわゆる寺で読経の前後でよく聞く、あの鐘がメインですが、振り子時計の15分おきになる鐘や時には近くの教会のチャイムも含まれます。鐘は「たたく」のではなく「招く」という言い方をするのも独特。鐘の音によって自分の中の小さな『仏陀』を「招く」ために静かに自分の呼吸に戻る。ということだそうです。仏陀というとやっぱり宗教??と思われるかもしれませんが、ここにはキリスト教の人もたくさんいます。もちろん経典のチャンティングも多いので、ブッダの言葉の引用は多くありますが、みんな基本的にはティクナットハン(ここでは「先生」という意味の「タイ」と呼ばれています)の言葉を通じて説明されています、なので仏教というより、基本的にはタイやブラザー&シスターの話からいろいろなマインドフルネスのシャワーを浴びている・・・・という感じです。自転車に初めて乗る時には練習したでしょう?その練習ですよ。というように難しい話ではなく、自分の経験を交えた深い話が聞けるので、「退屈な講座」もありません(笑)そもそも、タイ自身も「マインドフルネス」という概念は逆輸入されただけで、新しい概念ではなくそもそも日本人の考え方の根本にあるものだと言っています。「自分が自然の中の一要素であって共存している」という感覚は日本人には確かに昔からあるのではないでしょうか?

と、もうひとつ、大事な「ダメなこと」を思い出しました。。。。今年、フランスでは「蚊」の異常発生がニュースになっているくらい、多いのですが、ここに蚊取り線香も殺虫剤もありません。なので虫よけスプレーは欠かせないのですが、それでもかなり強力なのもいるので、よく襲撃されます。でも、問題は蚊がとまったのを見つけた時。いつもの癖でパチっとやってしまうと、みんなが「あっ」と息をのみます。そう、優しく払わないといけないんです。
生き物の殺生や搾取をしない。というのも絶対ルールと言えます。なので、もちろん完全ビーガン生活です。卵もミルクもないので、ミルク好きの私としてはそこがちょっと我慢なところ。ここにはシスターチャイという日本人のシスターがいるのですが、まさにミルクたっぷりのチャイがとっても恋しい日々です。
先日はヘーゼルナッツ林に行ってたくさんのヘーゼルナッツを拾ってきました。それを次の日にみんなで砕いてナッツを取り出しました。ローストしたり揚げたりしたものではない、フレッシュなヘーゼルナッツがこんなに美味しいとは・・・。
プラムビレッジの名の通り、プラムを栽培しているので、最高に美味しいのですが、間違いなく、本当に3食が素晴らしく美味しいのは事実です。その秘密はマインドフルネス流料理!?それはまた次に報告します!

※注 プラムブレッジについて
https://plumvillage.org/practice-centre/plum-village-monastery/

フランス南西部のボルドー近郊にあるプラムヴィレッジは、故ティク・ナット・ハン禅師(ベトナム語で先生という意味の”タイ”と呼ばれています)によって1982年に設立された、プラクティス・センター(修行道場)です。なぜフランスか?というとタイがベトナム戦争に反対したことから、祖国を追われ、亡命したのがフランスだからです。
今ではアメリカ、タイランド、香港、オーストラリアなど世界各所にあり、コロナ禍以前は、日本でもGWに僧侶団が来日してイベントや4日間のリトリートを行っていました。
修行道場・・と言っても、禅寺ような「修行」ではなく、日々の生活に「マインドフルネスを取り入れて、生活すること」をトレーニングしています。具体的には、座っている時間ももちろんありますが、食事をしたり、歩いたり、仕事をしたり、一緒にお茶を楽しんだり、沈黙を楽しむ時間もあります。春と秋は1週間以上の滞在が可能で、夏や年末年始には子どもと一緒に参加する機会もあり、世界中から人が訪れます。共通言語は英語ですが、フランス語やベトナム語やその他、必要に応じて都度通訳されます。(日本人はほぼ居ないので、なにかしらの語学力とそれが足りない部分の"度胸"は必須です)そして年1回、この3か月のRainRetreat(雨安居)が行われていて、私のいるハムレットでは22名が参加しています。
参加費用(ドネーション)は都度、HPで見ることができますが、一番安いのは自分のテントで参加するパターン、普通のドミトリーで$80~/1泊 程度です。いろいろなアクティビティがついてこの値段なので、残念ながらリゾートホテルのように整っていませんが、手作りの3食の料理と清潔な空間が保たれていることには間違いありません。長期滞在は格安になっていて、今回の90日間リトリートで40万円程度。その代わり、シスターのいろいろな仕事をお手伝いするので、住み込み下宿生!?とも言えます。


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