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劇場版『フリクリ オルタナ』『フリクリ プログレ』

『新世紀エヴァンゲリオン』という90年代最大の話題作を生み出したアニメスタジオ・GAINAXにとって、エヴァ以降、どのような作品を作っていけばいいかというのは、結構たいへんな課題だっただろう。

『エヴァ』の監督の庵野秀明は、1998年の『彼氏彼女の事情』のあと、しばらくアニメ制作から遠ざかってしまった。最大の立役者が第一線から退いてしまったのだが、アニメファンの、GAINAXのSFアニメに対する期待値は天井知らずに上がっていた。私も『エヴァ』のイベントに通い、グッズを集めていたファンだったから、新作をやきもきしながら待っていた記憶がある。

そして97年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』から3年の月日を経て、2000年にGAINAXがリリースしたSFアニメが『フリクリ』だった。端的に言って、この作品は『エヴァ』ほど流行らなかった。SFはSFでも、『エヴァ』に続く重厚な大作を期待していた私たちにとっては、『フリクリ』のノリは軽すぎた。

謎の宇宙人、ベスパを駆る「ハルハラ ハル子」と、オデコがドラえもんの4次元ポケットみたいになって、様々な物体を呼び寄せてしまう思春期まっただなかの中学生、「ナンダバ ナオ太」の、青春SFドタバタストーリーである。劇中で流れるのは、the pillowsの曲。

従来のSFアニメや特撮映画のイズムを濃厚に受け継いだ『エヴァ』と違い、『フリクリ』は、当時のオタクが敬遠しがちだった、ポップカルチャーの要素を押し出した作品で、GAINAXに、『エヴァ』のような作品を期待していた人々からは、「ふざけてる……」的な評価を受けていたのだ。

でも、振り返ってみれば『フリクリ』は攻めたいい作品だった。『エヴァ』が草木一本のこらず根こそぎ持っていったあとに残された不毛の荒野で、従来のやり方でSFアニメを作ったって、それ以上のものができるはずない。よそから新しい血を持ってくる必要があった。

西暦2000年の段階で『フリクリ』がアニメにもたらした異系の血の価値は非常に高い。前述のポップカルチャー的な要素に加え、作画に関してもそれまでのアニメの文脈にはみられない、実験的手法が多く取り入れられている。意欲作だ。突然ラクガキ調の画風になってみたり、紙に書かれた漫画をそのまま取り込んだようなシーンが現れたり、変幻自在。「あのエヴァンゲリオンを作ったスタジオの最新作」というプレッシャーは相当あったはずだが、それを飄々と受け流してしまった。恥ずかしながら『フリクリ』の面白さに気づいたのは、リリースから数年たってからだ。

その『フリクリ』が2018年にProduction I.Gから突如復活。『フリクリ オルタナ』と『フリクリ プログレ』という、2本の映画として帰ってきた。the pillowsの曲をバックに、相変わらずの暴れっぷり。

『オルタナ』『プログレ』それぞれのキャッチフレーズは

「走れ、出来るだけテキトーに。」

「世界は、テキトーに出来てんじゃん。」

相変わらず人を食った態度で、はぐらかされそうになるのだが、いやいや、じつはフロンティアスピリットあふれまくった作品なのです、今回も。

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