【参院選記念 選挙小説SS】『僕等の選ぶ未来は』
はじめに
初めまして。
こちらのnoteを閲覧頂きありがとうございます。
学生団体ivoteのKarenと申します。
私たちは普段、若者に選挙や社会問題に関心を持って貰えるような取り組みをしています。
今回は参院選に向けて、「活動を重ねていく中で感じたこと」を伝えるために小説を執筆しました。
よかったら最後まで読んで下さると嬉しいです✨
(コメントも頂けると尚、嬉しいです…!)
以下から早速本編にうつりますので、よろしくお願いしますー!
『僕等の選ぶ未来は』
いつも通る道にある公園に、沢山のポスターが貼られだした。
__選挙公示日を迎え、候補者ポスターが貼られだしたのだ。突如として現れた主張たちを、僕はまじまじと見つめた。
「うーん……」
ポスターには色んなことが書いてある。
経歴が書かれているもの。比例代表はウチの党で!みたいな呼びかけ。〇〇な社会を目指しますといった、常套句。
近くで見ても引きで見ても、情報量の多さに圧倒されただけで何も感じることが出来なかった。そっとポスターのもとを後にした。
投票日まであと1週間。
街には投票に行こうという呼びかけが溢れているが、果たして投票こそ正解で正義なのだろうか。20歳の僕はそんな事を考える。
思えば高校生のとき、公民の授業の一貫で選挙についての授業を受けた。
その時はなんだか選挙に行こうというメッセージがあまりしっくり来なかった気がする。
選挙について考え事をしながら、駅の近くを歩いていると、幼馴染の茜と会った。
「あれっ、久しぶりー!」
茜は同じ幼稚園と小学校に通う地元の幼馴染だ。年齢は僕より1つ下だけど、たまたま僕の地区には同学年の人はあまり近くに住んでいなかったのもありよく彼女と遊んでいた。そして、僕は中学も地元に通う一方で、茜は中学受験をして県でも知名度が高い学校に行ったのだ。
最後に会ったのは2年ほど前だろうか?
久しぶりに会うそんな彼女の雰囲気はどこか違って見えた。大きな目は変わっていない。だが、目のすぐ上、毛流れの整ったやや釣り上がりの眉も相まって彼女からは凛とした雰囲気を感じさせた。
そこから世間話をして、彼女が今週にアルバイトをしていることを知った。立ち話もと思ったのと、正直久しぶりの再会に舞い上がってしまったのもあり、そのまま一緒に食事をすることにした。
「どうしてアルバイトしてるの」と、食事を待っている間僕は尋ねた。
「私、法学部なの。なんか面白い経験になるかななんて」、と茜。
「茜は選挙に行かなくていいの?」
「まぁね。期日前投票で私は投票したから」
「そうなんだ」
茜は少し身を乗り出してこちらにこう聞いてきた。
「意外と簡単だよ。もしテストで忙しいなら今度やってみたら」
「いや、僕は__」
言葉に詰まる。
期日前投票までして選挙に行く理由についてなぞ、考えたことがなかったからだ。
選挙に行く人間なんてどんな事を思って行くのだろう。以前同じ大学の奴とサシで飲んだ時……酔った彼は猛り出すように自分の信念を吐いていたことを思い出す。
酒の席で宗教と野球と政治の話はするな、という言葉を無視して彼は強い主張を僕にぶつけ続けた。
イデオロギーに染まり延々と話し続ける知人を見て僕は肩をすくめて笑うことしか出来なかった。それ以降、選挙の話をあまりしたくないのだ。
この日、茜と政治について深く話すことは無く僕は帰路に着いた。
モヤモヤと残る選挙や政治への思い。どんな理由で、人は投票しているのか。
そんなことを片隅で考えて、課題もこなして日々を好こじていたらあっという間に週末の投票日を迎えてしまった。
__迷った末、僕は投票所に足を運んだ。
そして、僕が投票した先は、
『白紙』だ。
白紙投票。
わざわざ白紙投票してまで行かなくてもいいだろうとは思ったが、一応棄権とは違って白紙投票なら年齢別の統計には反映されるらしいので入れたかった。それに一応、投票すること自体は国民の権利だしとも思った。
実は茜のアルバイト後に、また会う約束をしている。バイト終わりの茜と落ち合い、僕らは地元のカフェに入った。
どうしても、今日、彼女に聞きたかった。
「ねえ、茜はどこに投票したの?」
「……ふふ、秘密選挙の条件を反故にするつもり」
茜がこちらを見ながら問いかけてくる。
「わたしね、」
「実は普段は親戚に投票を頼まれているの」
「親戚?」
「そう。お母さんの兄弟に国会議員がいるから。だから、18の時の選挙ではその人に入れてた。
でも……今回の参院選では、変えたいことがあって。
実はXXXについてわたしは疑問を持ってるんだ。」
「XXX……」
思わず反芻したその社会問題が一部話題になっていることは知っていた。だけど、ごく一般の自分からしたらやや想像し難いテーマでもある、とも思った。(これはあくまで僕の主観だが。)
実際、僕はこの社会問題について話をするのは人生で初めてだった。
「わたしの周りにも正直この話について話せる友人は少ない。でも、というか、だからこそ一票を入れたかった。今回は叔父ではなくて自分と主張が合う人と政党に投票したよ」
「XXXについて考えているんだね」
「まあ私がこの問題の完全な当事者なわけではないけどね。だけど、自分がこの問題について調べていく上で、今の現状をそのままにしている社会に対しても疑問があったんだ。私の中で、ちゃんと『この問題がこのままなのはおかしい』って思った。」
彼女は少し間を空けてこう言った。
「それに、投票という形で声を上げて現状が変わることをわたしは信じたい」
「……」
何も言えなかった。
アイスティーをちびちび吸いながら僕の目の前に座る彼女は、この日本社会と戦うソルジャーなのだと、そのとき思ってしまったからだ。
それに比べ、僕の白紙投票はなんだ。
守りたい未来に対する、思考の放棄なのではないかとも思う。
僕が目指したい未来とは一体どんなものなんだろう?今まで未来なんて自分のことしか考えたことがなかったけど、誰かの未来が政治によって委ねられることもあるのかとこの時思った。
平和に信じていた毎日と何となく考えていた未来予想図が今は少しあやふやだ。
でも、あやふやを明確にする手段はきっと僕自身にあるとも思う。
「……茜」
「ん?」
「教えてくれない?どうやって自分の一票を上手に使えるのか」
茜はキョトンとしたあと、すぐにこちらを見て笑った。
「もちろん!!そもそも、選挙公報読んだ?最近は政党マッチングとかもあるよ!あ、学生にお勧めのサイトも教えるからスマホ開いて!」
途端に饒舌になる茜に少し笑って、僕はスマートフォンを取り出した。
完
執筆者:ivoteメンバー Karen(青木花連)
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