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SDGs ゴール2:飢餓をゼロに「精神的な飢餓がない世界へ。」

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経済発達を経てもなくならない飢餓。日本において、飢餓や貧困を生み出し、貧困の連鎖を助長しているものは何か?日本社会が抱える根本的な問題はなにか?

SDGs ゴール 2:「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する。」飢餓といえば、発展途上国や貧しい地域の現状を第一に思い浮かべる人が多いだろう。「日本で餓死する人なんているの?」と思う人もいるかもしれない。SDGsについて、より当事者意識を持って考えてほしい、という想いで作成した本教材シリーズ、2つ目のインタビューでは、日本における貧困や栄養失調の例を、現場の声とともに届けたい。

今回は、池袋を拠点に路上生活者への支援を行う特定非営利活動法人TENOHASI代表理事の清野様に話を伺った。

- 路上生活者の方への支援をはじめようと思ったきっかけは何ですか?

「社会科の教員として、中学校に30年勤めていまして。ある時、中学生による路上生活者暴行死事件を知りました。社会科教員としてホームレス問題を生徒に教える際、現状を知らない自分に歯がゆさを感じ、現場に行って当事者と関わりたいと感じました。」そう語る清野様は、教員現役時代からTENOHASIボランティアを15年続けた末、退職して専従となってから4年目になるという。

清野様

特定非営利活動法人 TENOHASI 代表理事 清野賢司様

- TENOHASI公式ウェブサイトを拝見致しました。「国際調査のデータでは、日本は年間約3万人の自死者をうみ出しながらも「生活困窮者を国が援助すべきではない」と回答する人が世界最高水準の38%に上る(「増税は誰のためか」神保哲生他2012)不思議な国です。」とあります。なぜ多くの日本人は、国による生活困窮者への援助に否定的なのでしょうか?

「働かざる者食うべからずって、昔から言いますよね。日本の根強い文化なんだと思います。戦後はお互い助け合う共助の文化(近所づきあい)があったけれど、高度経済成長で労働に見合った給料がもらえるようになり、近代化で近所づきあいも減少した。それで個別化、孤立化が進みました。がんばればどうにかなる、働けば稼げる、という意識も芽生え、困窮は自己責任だという考えも根付いてしまいました。」

- 困窮は自己責任、ですか。。。TENOHASIさんが支援を提供する路上生活者の中には、どのような理由で困窮している人がいますか?

「親から虐待を受けた方、一見健常者に見えても実はさまざまな障害を抱えた方、人間関係が苦手で集団生活の施設が耐えられない方、様々な事情があります。困窮は自己責任という考えがありますが、みんな自分のことで精いっぱいだから、「「自分と比べて努力していないように見える人」」に税金を使わせたくないんでしょうね。生活保護利用者への差別が消えないのもそれが一因でしょう。」

- 日本の飢餓や栄養失調の問題に対し、行政の支援策の問題点、限界は何だと思いますか?

「日本は民主主義なので多数派の意見が尊重される世の中です。多数派の賛成を得ないと予算が付かず施策は通りません。生活保護の制度はあるが、パッシングする政治家も多く、そのような政治家に投票する国民も多いですね。私自身、生活困窮者と一緒に生活保護の申請に出向くのですが、福祉事務所の職員の冷たい対応にあうことがしばしばあります。法律上では、住所のない困窮者は、いまいる場所=現在地の自治体に保護責任があるのですが、なかなか申請が通りません。年上の申請者にため口で話したり、いきなりお説教したりする担当者にあたることもしばしばあります。」

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- 役所の対応には驚きです。では、行政にはできなくとも、NPOができることは何だと考えますか?

「民間団体、当事者団体、NPOは動きが柔軟で早い傾向にあります。行政は、法律、条令、規則に沿って動きますし、制度設計に時間がかかる上、予算が通らなければ計画を実践できません。一方で、NPOなどは、当事者や社会的に弱い立場の人たちに寄り添い、現場をのぞき、問題の詳細を可視化することができます。現場の問題を可視化し、声をあげて、はじめて行政に伝わり、ボトムアップが起きます。」

- 民間から行政へ、ボトムアップの重要性が見えましたね。では、飢餓を減らすために、行政でも民間団体でもなく、個人ができることはありますか?

「社会はすぐには変わらないので、行動の継続が必要です。関心を持ち続け、情報収集を続けること。身近にある子ども食堂やフードドライブを認知し、SNSで情報を発信したり、スタッフと人脈をつくったり。小さな額でも寄付をしたり、イベントや炊き出しボランティアに参加すること。例えば池袋では、外国人の方が自作のおにぎりや残り物を路上生活者へ自主的に提供したりしています。これらの小さな行動を是非継続して頂きたいです。」

- 私もTENOHASIさんのFacebookをフォローします!コロナ騒動が落ち着いたら東京へ炊き出しボランティアにも行きたいです。最後に、清野様が考える、理想の社会のカタチを教えていただけますか?

「精神的に飢餓がない社会が理想ですね。物質的な栄養量とかだけでなく、人々が互いに助け合い、個性が尊重される社会になってほしいです。完全に飢餓がゼロだとか、ホームレスの数がゼロの社会は来ないかもしれません。個人の理想や欲望がせめぎ合う世の中では、全員にフェアな社会実現は難しいです。ただ、困っている人がいれば助けるのが当たり前、という意識は広められると思います。互いに干渉はしすぎないけども、個性や個人の自由が尊重される社会が理想です。」

- 「精神的な飢餓」という概念を、読者の皆さんはどう捉えるだろうか?貧困や困窮は自己責任、という考えで未来の日本はやっていけるのか。路上生活や生活保護受給の背景にはどんな問題が潜んでいるのか。日常生活の中の「助け合い」や物質的、精神的な豊かさについて、今一度じっくり考えていきたい。


〈記者:ぴなこ〉
国際エデュテイメント協会インターン生

※本インタビュー内容は、弊社のSDGsをクリティカルに考える英語教材「Thinking Critically about SDGs」のSDGs ゴール1:Lesson4に収録されています。


「Thinking Critically about SDGs」では、中高生がSDGsを英語で学びながら、社会に対してクリティカルに考え、自分の意見を表現することができる教材です。「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて、一人でも多くの方が社会を見つめ、考え、自分なりに意見を持つ、ことが重要だと考えています。本教材は、それらを習得できる教材です。

また、この度本教材については、”環境に配慮したFSC認証紙で書籍化のためのクラウドファンディング”を9月に実施することを予定しております。

ぜひ本教材の普及にご協力いただける方は、本note記事のシェアやクラウドファンディングページ(9月中旬公開予定)へのご支援をよろしくお願いいたします。


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