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小説/【タイムレコード0:07】黄昏時の金平糖。

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タイムレコード0:07というアカペラグループの、宵宮氷、黄昏わらべ、師走わさび、涼路わた、暁愛華葉、木暮葉凰。少年少女らが出会ったとある夏の物語。
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#アカペラ

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

黄昏わらべ 6月1日 水曜日 午前8時15分
          愛知県 夏露中学校 1年4組

「─ということで今日は校外学習のくじを引きます」
 周りが少しだけざわつく。みんな、楽しそうにしている。
 どうやらもうすぐ、歴史を学べるテーマパークに行くらしい。その時の行動班は、全10クラスから1人ずつ集め、合計10人が1班になる。何班になるかはくじで決まるため、今から担任がシャッフルしたくじを引

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#19 アカペラ

木暮葉凰 6月3日 金曜日 午後5時40分
     愛知県 夏露町 黄昏家 わらべの部屋
 
「ただい、、、ん?」
 さっきまで元気だったわらべが、綺麗な体育座りで、しかも顔を伏せている。
「おーい、わらべー?」
「あぁぁぁぁ、、、」
「大丈夫そ?」
 わらべは力なく唸って、全身の力が抜けたように、膝に頬を付けた。

「、、、音楽ってさぁ」
「?」
 小さな声で低く唸るものだから、なかなか聞き取

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#20 約束、やっぱり違う

木暮葉凰 6月3日 金曜日 午後6時05分
       愛知県 夏露町 黄昏家 リビング
 
「今日はありがとうございました」
「いいのよ!それより、本当にご飯いらなかった?」
 このまま長く居続けると、母さんに怒られてしまう。ご飯も食べてきた、なんて余計に。
「はい、そろそろ門限なので」
「そっか!、、、あ!」
 まつりさんが何かを思い出したかのように、走っていって、戻ってきた。

「これ、お

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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#21 負けないように、ただいま

 黎明わた 6月3日 金曜日 午後6時35分
          愛知県 夏露町 弓道練習場

「─ありがとうございました!!」
 一人しかいない練習場に向かって叫んだ。
「お疲れ様」
 袴姿でやってきたのはあにい─灯籠真弓(とうろう まゆみ)だった。
「あにい!お疲れー」
 兄(あに)と兄(にい)の呼び方が合わさってあにいになった。あとは、ここら辺の方言的なのもあるらしい。
「じっちゃんが白玉作

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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#23 六人の声、二人の感動

師走わさび 6月3日 金曜日 午後10時00分
        愛知県 夏露町 からふるとまと

「もう一度君に会おうとして─、、、♪」
 音源は学校に持っていけないから、アカペラで歌うしかなかった。
 私は歌をぴたりと止める。
 ─なんか違う。
 というかさっきから何してるんだろう。テスト勉強を中断して。期末テスト、大事なのに。
 それでも手より口が動く。

 と、コンコンとノックの音が聞こえて

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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#24 自分も、私も、新しい世界へ

黎明わた 6月3日 金曜日 午後10時10分
            愛知県 夏露町 黎明家

 、、、あれ?誰と話してたんだろ。
 そだよねって、誰に共感したんだ?
 でも、今テレビで放送された瞬間に、聴いている全員がすごいという感情に全身を貫かれたんだろうな、って勝手に思った。
 自分もその一人だ。

 それより。
 さっきの感動で、ドクドクと脈が大きく波打っている。なぜか過呼吸で、口角が自然

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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#25 良かったら、一緒に

木暮葉凰 6月3日 金曜日 午後10時25分
       愛知県 夏露町 木暮家 リビング

 夕飯を食べながら、母さんに質問攻めにされた。
 何をしてたの、とか、誰と帰ってきたの、とか。こういうことに、本当に黙ってくれない。
 母さんはすごく過保護だ。
 俺には、家で自由にする権利は無く、料理も自分で服を決めることもできない。
 だから、手伝おうとしても、「全然大丈夫」とか「そんなことより早く

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