読書メモ:ディーパック・チョプラ『クォンタム・ヒーリング 心身医学の最前線を探る』

究極の真実を問われたヴェーダの予言者「アハム・ブラフマースミ(私は形あるものないものすべてである)」

アインシュタインは時間と空間を包含する〈統一場〉の探求に生涯を費やした。しかし〈統一場〉は俯瞰できるものではなく、私たち自身が〈統一場〉そのものなのだ、ということ。私たちは本来的には、通常の時間的流れも通常の空間的仕切りも超越して、時間と空間の制約を受けない無限の存在である。自我、知性、心、感覚、物質といった層を通過して、統一場に波動を作りだす。人は光子のかわりに〈意識〉を放つ光

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〈自我〉は、世界を「私」とは別の、危険で敵意に満ちた場所だと見る。そのため〈自我〉は通常、自己防衛のために次から次に〈仕切り〉を設ける。「外」を見ることによって〈二元性〉ができて、その「外」が恐怖の源泉となる。そして「内」に好ましいものを引き入れ、慣れ親しんだ行動をさせることで引きこもる。

脳が〈仕切り〉を通じて世界を認識すると、〈仕切り〉のない意識が犠牲になって部分的盲目が生じる。視覚に限らず、印象は常にニューロンに伝えられる。たとえば聴覚は受動的に見えるが、実は人は非常に選択的に聞き、耳から入ってくるデータに自分の解釈を加えている。

〈二元性〉そのものは幻影ではなく、両極があることによって一つの全体になる。〈二元性〉があることで〈統一〉が実体をもつ。「100パーセントの〈統一〉」と、「100パーセントの〈多様性〉」があって、両者が同時に働くことが〈創造〉という仕事の本質

作られた〈仕切り〉を自由にして、世界から分離した〈自我〉による考えや欲求を超越するレベルに引き上げる。ごくわずかに〈意識〉を開き、見えない〈仕切り〉を変化させることで、現実が変化する
自分の〈仕切り〉を壊しても関連する世界は消えず、新たな次元のリアリティが付け加えられる。瞑想が〈意識〉のチャンネルを開く。何かが変化して見えるとき、実は変わっているのは自分自身。

問題は〈多様性〉の場に存在し、解決は〈統一〉の場に存在する。自然は私たちの意識の中にすでに解決策を作り上げている。

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ヴェーダ(インド最古のヒンドゥー教とバラモン教の聖典)によると、「人は見たとおりのものになる」。「世界を認識するという経験」がその人を作っている。人はたえず思考や記憶、欲求、目的を次々に生み出しており、そうしたインパルスが意識を渡り、その人のリアリティとなる。

通常のリアリティは私たちが当然のものとして受け止めている習慣や監修、規則によって生じている。そうした日々のリアリティの下に潜って、その源泉を探ることで、驚くべき体験ができる。マズローの五段階欲求である〈自己実現〉のさらに上位にある〈至高体験〉。

マズローによると、「それは純粋に肯定的な幸福の瞬間で、あらゆる疑い、恐れ、禁止、緊張、弱さは置き去りにされ、もはや自意識はなく、世界との隔たりや距離は消え失せている。世界との一体感、融合感を持ち、世界を外から覗き込んでいるのではなく世界の一部であると感じている」

私たちはその体験を経ることによって、通常のリアリティを超越して世界を作り変えてしまい、新しいリアリティに生きることができる。
一人ひとりが無限の存在である。誰もが〈神経系〉の柔軟性を授かっている。私たちのもつ正常さとは、自分のリアリティを作りだす能力である。

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自分が体にとらわれているという幻想が、人生を限定する。「マーヤー(幻影、実在しないもの)」を生み出すのは、宇宙的な視野を失った心。〈仕切り〉を設けるも壊すも本人の選択次第。
人と症状の間に「マーヤー(幻影、実在しないもの)」があり、〈気づき〉を治癒的に用いることを妨げている。心身相関医学ではこの障害を取り除くことで、自分自身のヒーリング・プロセスを発現させようとする。

体のメカニズムはスクリーンのようなもの。背後に、見たり触ったりすることのできないものが存在する。体、思考、感情、行動が自身を世界に投影しているネットワークが、私たちをひとつに結びつけている。

脳が私たちに〈世界〉を見せるとき、実は私たち自身のことを見せている。私たちは鏡に映った像を見ているが、その像は私たち自身の反射である。私たちが知ることのできるリアリティは脳に映ったものだけであり、つまり存在するすべてのものは私たちの主観の中にある

私たちが選択しているエネルギー波や粒子はごくわずか。全体の十億分の一以下にすぎない。本当は、いま見えている世界よりはるかに大きな「エネルギーのスープ」の中で生活している。意識を拡大することでその世界にふれることができる。〈英知のインパルス〉の創造をコントロールする方法によって、新しい樹状突起を伸ばして、どんなことでもできるようになる。

脳内のニューロン同士をつなぐ樹状突起は、生涯を通じて新しく発達させることができる。この樹状突起の発達によって、脳の機能を低下させないための身体的機構がまかなえる。歳をとってからでも思考の習慣によって精神的に活発であれば、失われたニューロンを補える。神経細胞が思考を生んでいるわけだが、同時に、思考することが神経細胞を生んでいるともいえる。

存在するものはすべて感覚と結びついており、感覚は脳と結びついている。心身面の適応性はほとんど無限に近い。感覚的な印象の解釈の仕方は限りなくあり、体がそれに反応する仕方も限りなくある

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思考と思考のあいだにはギャップ(間隙)がある。私たちにはコントロールできないその間隙が、〈英知〉を生み出す静寂の場となる。そして〈英知〉の新しいパターンが生まれ、細胞の一つ一つに入っていき、深いところで変換が起こる。私たちは思考と思考の間隙において自分でシナリオを作り、そのシナリオを細胞の一つ一つに送っている。

アインシュタインによると、「人間の限界を伴う自己という認識から自由になる瞬間、人は、小さな惑星の一地点に立ち、冷たく深くうごめく永遠にして底知れぬものの美しさに驚き、見入っている自分を思う。生と死はひとつになり、進化も運命もない。あるのはただ存在だけである」

思考と思考の間隙はつねに私たちのもとにあるが、なかなか見つけることはできない。私たちが量子力学層を直接感じられないのと同様。思考の間隙や量子力学層は私たちと切り離されたものではなく、私たちそのものである。

〈意識の拡大〉と、〈意識の開放〉。それによって、広範囲の〈変化〉と同じだけ広範囲の〈不変〉を体に見いだす。活動と休息が一つになっているというパラドックスを起こす。〈意識〉のなかで、自分が無限の速さで動きながら、同時に完璧に静止している状態

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心身医学。意識の力による癌の寛解。小さな腫瘍でも、非常に大きな悪性腫瘍でも、ほとんど一夜にして消えることがありえる。

1970年代から、精神的な療法や代替療法であるバイオフィードバック法、催眠療法、イメージ法、行動修正法、ハーブ療法、マクロビオティックなどさまざまに試されてきたが成果は一様でなく、寛解率も通常の療法とさほど変わらない。患者の精神状態と生存率に相関関係はまったくないという結果が出た。肯定的な心がすぐに健康に結びつくわけではない。

しかし癌の自然寛解400例の研究で、すべての患者には共通点があった。みな寛解が起こる前に自らの信念を破壊し、肯定的な姿勢に転じていた。

鍵は自発性にある。計画的な治療法として、「外」から自分自身に対しての肯定的な態度を望んでも、因果関係は生じない。
精神的プロセスには深いものも浅いものもある。命に関わる病気を自分で治した人は、同じ精神の仕組みを操っているわけではなく、深くまで達して心身の設計図にふれ、それを変更した。大部分の人にはそれができない。

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メンタルテクニックとしてのアーユルヴェーダ。

「瞑想」:心を〈仕切り〉の外に出して無限という意識状態に置く。「精神生理学的テクニック」:〈気づき〉に着目し、注意によって体を変える。たとえば催眠によって外から何の刺激も加えずに手を温めたり冷やしたり、皮膚に発疹を起こしたり水疱を作ることができる。

なにかに気づくことで、〈受動的な気づき〉から〈能動的な気づき〉に移行する。注意を向けることは、大きなコントロールを発揮する。普段私たちは受動的な意識の犠牲になっている。痛みがあると、痛みに気づきはするが、その痛みを大きくしたり小さくしたり、起こしたり止めたりすることができることには気づいていない。本当は、痛みのレベルはコントロールできる。

誰もが自分に体の生理状態を極端から極端へと変化させられる。狂喜しているときの自分の姿と、深く沈み込んでいるときの自分の姿は、生理学的に言えば同一人物ではない。多重人格者の人格が変わると、体の状態も変わる。

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クォンタム・ヒーリング。意識形態の一方(心)が他方(体)の誤りを自然に正す能力であり、完全に自己完結的なプロセス。

体にヒーリングが起こるための基礎を作る。メンタルテクニックを通じて心身ともリラックス状態になることで、心と体の結びつきを取り戻し、身体の本来の機能が動くようにする。自らの治癒力を引き出す。自分自身のヒーリング・プロセスを活性化する。意識と気づきによって内面に変化が起こり、恐れや疑いが取り除かれることで、同時に病気も取り除かれる。
神秘的な世界に引き込んだりするわけではない。〈自分の意識〉が体を作りコントロールし、〈自分の意識〉が体になるのだということに気づくこと

治癒の力が自分自身のうちにあって、なお自分だけのものではないこと。個人を超えたときに、新しい意識レベルに跳び移る。クォンタム・リープ(量子飛躍、より高いレベルへの不連続な飛躍)が起こる。

病気は肉体の一部の疾患ではなく、ホリスティックなもの。「病気の体がどこか別のところにある」という〈虚構〉を信じ、「同じ心身というリアリティのなかで病気がある」という〈現実〉を信じられない状態。病気の体という〈虚構〉への恐怖に気づきが向かっていると、〈意識〉が恐れを手放せない。
脳で感じるストレスによる神経ペプチドは、体でも同じように作られ、身体機能に障害が起こる。自然の体が〈意識〉に危険を告げていることに注意を向けて、自分自身の気づきを得ること

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「正常である」ということのパラドックス。〈健康な記憶〉〈正常な意識〉のもとで、〈免疫システム〉がうまく機能する。病気の絶望と恐怖が、免疫反応の連鎖を崩壊させる。負の感情と結びついた神経ペプチドが送り出され、免疫細胞と結びついて免疫反応の効力が失われる。診断そのものが悪循環を生み出す。負の感情によって〈免疫システム〉が先に死んでしまう

病気という身体的なあらわれは幻影。患者の〈意識〉に妄想があるときにあらわれる。つまり患者の〈意識〉そのものが病気という状態。思考と反応がセットになり、インパルスが患者の内面的な現実そのものになる。「こうなるんじゃないか」という自分自身の気持ちが、病気を生かし続ける。
ただし表面的な感情や行動、態度が原因になるわけではない。もっと意識の深層のレベルで起こり、治癒もまたその深層のレベルで起こる。条件反射や習慣から抜け出すこと。病気の症状と自分の体を結びつけている呪文を解くこと。

依存症は〈細胞の記憶〉が実体。〈記憶〉もまた亡霊として、意識の深いレベルで体に影響する。脳のレセプターがこの記憶に反応して指示を出すと、体の別の部分が拒絶しようとして別の指示が来てしまう。その結果本来のリズムを失い、心身ともバランスを崩す。

体には通常、〈変化〉と〈不変〉が同時にある。生体恒常性フィードバック・ループ[ホメオスタシス]。体温、血圧、細胞中の水分レベル、グルコースの代謝率、酸素や二酸化炭素の濃度、ほか生理機能の至るところでバランスが管理されている。
体は病気になる前から、症状を見せることなく病気を防いでいる。〈免疫系〉がはたらいている。免疫機能が弱まるのは、内に歪みが生じたとき。また愛されていないと感じることによっても、免疫機能や成長するプログラムが機能しなくなることがある。

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〈免疫系〉と〈神経系〉は関与している

〈免疫系〉には学習能力がある。内部環境だけでなく外部刺激にも反応している。免疫細胞を増やすことも、免疫機能を低下させることもできる。〈神経系〉に仕切りはない。どんな経験をインプットしたかということと、アウトプットとしての結果との間に固定的な関係はない。つまりどんなもの同士でも結びつけることができるということ。

一瞬一瞬の感情や心身相関の反応を、体のリアリティに置き換えているのは〈免疫システム〉。〈免疫系〉の単核細胞は血流に乗って全身を駆け巡り、体中の細胞と自由に接触できる。
嬉しかったり悲しかったりするとき、神経ペプチドと神経伝達物質が脳で生成されることでメッセージの受け渡しが行われ、免疫細胞も同時に嬉しかったり悲しかったりするようになっている。ニューロンの言葉を免疫細胞もまた扱っているといえる。相互に関連性を持っている。

元の〈神経系〉がおかしくなったときに予備の〈神経系〉はないので、内的宇宙から離れて外宇宙に立たなければならない。そうして心身のバランスを回復することができれば、〈免疫系〉はそれに反応して機能しはじめる。そのために患者自身の現実の認識を治し、評価を変えさせること。

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ディーパック・チョプラ『クォンタム・ヒーリング 心身医学の最前線を探る』上野圭一監訳・秘田凉子訳、春秋社、1990年。

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ディーパック・チョプラ。1947年ニューデリー生まれ。
医学博士。心と体の医学およびウェルビーイング分野における世界的な第一人者で、75冊を超える著書の多くがベストセラーで35ヶ国に翻訳され、発行部数は2000万部を超えている。
内分泌科専攻、米国内科医師会フェロー(特別研究員)、米国内分泌科医協会メンバー、ケロッグ経営大学院の非常勤講師。コロンビア大学・経営大学院の著名な経営学者で、ギャラップ社上席研究員でもある。ハーバード大学医学大学院主催の内科最新情報を学ぶ年中行事で10年以上講師を務めている。

マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー。「TM(Transcendental Meditation 超越瞑想)」の創始者。アーユルヴェーダの中でも重要な知識、メンタルテクニックをディーパック・チョプラに伝授した。

ホリスティックなヒーリングとしての、アーユル(Ayus 生命)ヴェーダ(Veda 知識、科学)。サンスクリット語。4000年以上前にインドで発祥した治療法。東洋医学の基礎で、薬草、食事、運動などを扱う。体は〈意識〉でできているとし、肉体的な要素を超えて治療を及ぼす。

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