連載小説 センチメンタルジャック(46)
「でもジャックが運ばれて来た時、センチメンタルモードがオフになってたんだ」
「そう言えばジャックは最近変だった。無表情で休まず働いて、笑う事も怒る事も無かった」
「なるほど、ジャックが倒れたのはセンチメンタルモードがオフで、感情をコントロール出来なくなりオーバーヒートしたのが原因かも知れない」
センチメンタルモードを装着したロボットは世界で僅か数体しか生産され無かった。ロボットは人間の労働力を補う為の物と考えられていた時代に、感情を持つロボットなど不用でほとんど売れ無かった。今ではその全てが老朽化しスクラップになった。ジャックは最後に残った一体だった。
センチメンタルモードを開発した研究者は既に亡くなってしまい、その資料は一切残っていない。一体どの様な仕組みでロボットに感情を持たせたのかは謎だらけで、世界中の研究者達が解明に挑んでいた。
「ジャックはスクラップにしない。僕はセンチメンタルモードの仕組みを研究して、いつかジャックの様な感情を持った心の優しいロボットを作りたいんだ」
情熱に満ちた康二の目はキラキラと輝いていた。
つづく
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