連載小説 センチメンタルジャック(1)
「お爺ちゃん!ちょっと待って!」
ミニスカートの制服を着た女子高生が慌てて駆け寄って来た。
「こいつはもうダメじゃ」
公園の放置ロボット撤去の仕事をしている爺さんが言った。クレーンの付いた軽トラの荷台には、撤去されたボロボロのロボット達が積み重ねられている。
爺さんはクレーンの操作レバーを上げた。クレーンの先には古びたロボットがだらりと力無く吊るされていた。
「ああオレの命もこれまでだ、みんなさようなら、ありがとう」
錆だらけのロボットは、声を掛けてくれた女子高生に向かい、残り僅かな電力でバイバイと手を小さく動かした。
「お爺さん、あのロボット助けてあげてよ」
「もう動かない、ただの鉄屑じゃ」
「まだ動いてるじゃん!かわいそうだよ!私が連れて帰るから、お願い、降ろしてあげて」
「え、うーん、しょうがないなあ」
爺さんは困り顔でクレーンのレバーを下げ、ロボットを地面に降ろした。
「お嬢ちゃん、もしスクラップにするならここに連絡しな、取りに行くから」
爺さんはシルバー人材センターと書かれた名刺を女子高生に渡すと、軽トラに乗り込み去って行った。
「助けてくれてありがとう、僕の名前はジャック、よろしく」
ジャックはギシギシとボディを軋ませヨロヨロと立ち上がり、女子高生に手を差し出した。
「私は美紀(みき)、ジャック私の家においでよ、オイル風呂に入れてあげる」
美紀は綺麗な歯並びの大きな口でニッコリと微笑んだ。小さな顔にクリッとした大きな瞳、その笑顔からはキラキラと眩いばかりの若いエネルギーが溢れ出している。
ジャックは美紀の発するエネルギーで少し元気を取り戻した様に感じていた。清らかで美しい美紀にジャックは鼓動の高まりを覚えた、ロボットに心臓は無いはずなのに。
こんな年老いた薄汚い僕を何故美紀は助けてくれたのだろう、ジャックは嬉しさ半分、不安も半分だった。
つづく
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