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連載小説 ロックンロール先生(35)


先生は学校を辞めた後、奥さんのマリリンの田舎でロックカフェを開いた。店内は先生が好きなロックが大音量で流れていて、コレクションのギターが沢山飾ってある。マーシャルのアンプにドラムセットも置いてあるらしい。と内木さんは話した。

薄化粧の内木さんは栗色に染めた髪を掻き上げた。大人っぽいその仕草に僕はドキリとした。しばらく会わない内に一段と綺麗になった。ライブハウスの暗がりの中、美しい横顔が一段と映えた。

「先生は何で辞めちゃったの?」

「私も何度か先生に聞いたけど教えてくれなかったの。だから奥さんのマリリンに聞いたんだけどね」

先生が辞めた経緯はこの様な内容だった。

先生が電車に乗った時、ランドセルを背負った学校帰りの小学生達が電車の中で走り回って遊んでいた。周囲の大人達は皆観て見ぬ振りをしているので先生が、お前ら学校で何教わってんだ!と注意した。すると、怖いおじさんがいる、と子供達は親に電話し、親は警察に通報した。その子の親達と警察が先生の学校に乗り込んで来て、先生の行為をパワハラだと非難した。それに対し先生は何も言い訳しなかったらしい。

その事件の後、先生は自ら教職を辞したとの事だった。


つづく

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