見出し画像

経営本のスゝメ 11.

正垣さんの新刊について、の続きになる。

ぼくもこちらで以前に何度か書いているけれど、「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」「万物は流転する」という話も本書の後半に登場する。
今回の著書を拝読し、ぼくの正垣さんに対するイメージは新たに「物理、科学に強いお坊さんのような人」になった。

少し前に天才について書いたけれど、そこで失念していたことがあったので、ここで改めて述べておきたい。
ジャンルを問わず天才に共通していると思うことが、ぼくにはある。

本物の天才は、お金に無頓着である

偉大な画家や音楽家など天才とされる人を思い浮かべると、そういった人が多い気がする。またこの人たちはお金だけでなく、服装や住まい、車や時計などといった物欲とも縁遠い印象がある。

Winnyを開発された天才プログラマー・金子勇さんもそんなイメージだし、最近では大谷翔平選手がそれを証明してくれたとも思っている。
大谷選手がポルシェに乗っていたり高価な服装をまとっていてもそれはスポンサーなど取り巻きの意向であって、そこにご本人の執着があるとは到底思えない。

本当の天才はお金のために働いていないし、それが動機にはなり得ない気がする。
そんな彼らを突き動かすものは、強い信念や好きというシンプルな感情なんだろう。煩悩がない、というよりも好きなものに対し呆れるほど純粋な人たちなんだという印象がある。それは大谷選手を見ている多くの人も感じているだろうし、ご本人にすれば、おそらく結果的にお金がついてきたということに過ぎないのだと思う。
そう考えると、プロ経営者はあっても天才経営者というのはないのかもしれないな。

ぼくは正垣さんを天才、あるいは天才肌の方だと思っているけれど、その著書を拝読したり発言を見聞きしていると、やはりお金に対する執着どころか無頓着ささえ感じる。

しかし、冷静に考えてみればサイゼリヤさんは世界に1500店舗超を展開する大企業で、正垣さんはその上場企業の創業者であり代表取締役会長である。
つい先週には変更報告書を提出されたようだけれど(保有株減少のため)、それでもサイゼリヤの株式保有比率28%以上の筆頭株主でもある。
平たくいえば、めっちゃ資産を所有されている超お金持ちという現実があるのだけれど、それでもお金に対して無頓着という正垣さんの印象は変わらない。
僭越だと承知で述べれば、その純粋で愚直な部分こそぼくの考える本物の天才の特徴であり、またそれが素顔なんだとも思う。

昔、テレビで拝見した正垣さんは、すでに上場企業の社長でありながらお昼には奥様手作りのお弁当を会社で食べ、飛行機で移動されるときにはエコノミーという質素さだった。
あれから更に会社は大きくなり、年齢的なことも考えればビジネスクラスに乗られていても誰も文句などないだろうし、仮にプライベートジェットを所有されていたとしてもそれ自体は驚くことでもない。
けれど、正垣さんを想像すれば絶対と言いたくなるほど、そういったことがまず考えられない。

別段、ぼくは質素や清貧であることが尊いとか素晴らしいとはまったく思わないけれど、正垣さんが本当に素晴らしいと思うのは、自分の価値観で無駄と思うことや信念にそぐわないことには一切お金を使われないことにある。
故に一見するとキレイごとに感じるような言葉も決してポーズに映らず、そこには説得力が宿る。
煩悩が服を着て歩いているようなぼくからすれば、ただただ頭が下がる思いだ。
ぼくはサイゼリヤさんの美味しくて安い恩恵もよく受けているしね。

正垣さんもまた、「動機善なりや、私心なかりしか」を本当に体現され続けている稀有な素晴らしい経営者なのである。

きっと正垣さんなら「そんな無駄遣いをするくらいならサイゼリヤの価格を1円でも下げるよ」と、真顔で話されている姿が目に浮かぶ。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?