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こだわりがあるとすれば、こっち

別のことを書こうと思っていたけれど、元スタッフと会食した際にちょっとおもしろいなと感じた会話があったので、忘れないうちにそのときのことを。

これまで書いて来たものを読んでくださっている方はお気付きかと思うけれど、ぼくは料理やパンで直接お世話になった方のことを第三者へ伝える際には「お師匠さん」 「師匠」と呼び、自分のことを「弟子」と名乗る。それは文字だけでなく口語であっても変わらない。
ところが、ぼく自身はスタッフだった子たちのことを弟子と呼んだこと、書いたことが一度もなければ、思ったこともない。また「従業員」という呼称もぼくは使わない。

これは善し悪しといった話でなく、ぼくが個人的にそうだというだけの話。

昔、柴田書店さんから「月刊 専門料理」誌上での対談依頼を受けたことがある。
趣向が少しおもしろかったこともあって承諾した。
通常、対談する人は編集者さんが決められるけれどこの企画では、ぼくが対談相手を指名するとのことだった。それも「相手は食に携わる人であれば誰でも構いません。但し、同業者でない人」。つまりパン屋さん、パン職人さん以外の、という制約だけれど、ぼくは悩むことなく即決だった。
それが、こちらで書いたイタリアンのスターシェフ。

ぼくが東京へ店を出すことが決まったとき、わざわざ電話をくださり多くのアドバイスをしてくださったイタリアンのスターシェフがおられる。
そのとき、話の後半にこう話されたことをいまでも鮮明に憶えている。

「西山くん、店を増やすと批判したり好き勝手なことを言う奴が必ず現れるけど、そんなもん気にしなくていいよ。そういう奴らには、『俺らはそこを通ってきた上で、ここまで来たんやわ』って言ってやればいい」

ぼくらが旅(多店舗化)に出る理由

対談は意気投合する場面も多く、とても楽しい時間で滞ることなく終了した。
後日、校正のために文字起こしされたものを確認したぼくは、すぐにこう書いて返信をしている。

「ぼくの発言の箇所です。”従業員” という件がありますが、ぼくは絶対に従業員とは言っていないはずです。恐らく、”うちのスタッフ” あるいは ”うちの子” のどちらかのはずですから、もう一度確認してみて下さい」

しばらくして、確か電話でご連絡をいただいた記憶があるけれど「確認しました。申し訳ございません。仰る通り、”うちのスタッフ” と話されていました。訂正します」とのことだった。

特段こだわりがあるわけでもないけれど、なぜかこういったことは気に掛かった。
パンには、こだわりなかったのにね。

つづく





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