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いつものスケープゴート

突然、植田総裁がハト派からタカ派になったことが引き金となり、それに驚いた世界中の投資家がポジションを解消した、多分。
これが暴落につながったのだろうと考えるけれど、あくまでも発言は ”引き金 ” で、本質は別のところにあったと思っている(これについては、また改めて後述したい)。

ぼくも日銀に対し、いかがなものかと思う部分もあるけれど、まずは少し植田総裁の擁護をしたい。

会見に驚いたぼくがこう述べるのもなんだけれど、金融政策正常化へと舵を切った発言と捉えれば、大局的にはおかしなことを話されていたとも思わない。
また、会見を見る限り慎重に言葉を選び、丁寧に説明をされている姿からは総裁の誠実ささえ、ぼくは感じる。

ただ、4月の会見、今回の会見からもわかるように、発言にめちゃくちゃ影響力のある(どころでない)立場の方なので、やはり市場が驚かないように、もう少し匂わせ、小出しにして織り込ませるといった配慮はあった方が良かった気がする。
失礼だけれど、天然というか空気が読めないというか、そんなところも学者さんらしい気はするのだけれど、つまりコミュニケーション能力の問題なんだろうな。
まぁ、金利を上げても上げなくても文句を言われる大変なお立場だろうけれど。

他方、すべてがそうだとは思わないけれど、つい最近まであれだけ円安に文句を述べ、中には総裁会見で自分が正義を背負っているかのように糾弾していたマスゴミが、円高・株安になったらなったでまた文句を言って煽る手のひら返しには本当に呆れる。
思っていた通り、大暴落後は阿鼻叫喚の声とともにSNSでは日銀叩き、植田総裁叩きが始まった。

日銀ガー

植田ガー

政府、マスゴミの甘い言葉に乗せられ、損をした人が感情を吐露したくなるのは、まだわかる。かくいうぼくも喰らって、なかなか痛い目に遭っているけれど、それでもぼくは日銀や植田総裁のせいだとは思わないけどな。

「植田ショック」

案の上、こういうマスゴミがすぐに出てきた。
日本経済新聞の編集委員まで「私は日銀・植田ショックだと思ってます」と、ずいぶん文句を言っている人がいたけれど、この人は自分が大損でもしたのかな。
日経新聞でさえこんな認識なのかと思うと、購読やめようかな、という気にもなってくる。

また、こういうことが起こると、ここぞとばかりに人気取りのつもりか、「あなたが言いますか、あぁ、そうですか」と思うような政治家が出てくる。
どこぞの市会議員は、「世間知らずで愚かな学者が権力を持つとこうなる。今すぐ退場を」なんて、怒りの絵文字とともにイキった投稿をしていたけれど、落ち着けよ。てか、この人が退場した方がいいんじゃないか。
ぼくは植田総裁を愚かどころか、スーパーウルトラ賢い学者さんだと思っているし(経歴を見てみろよ)、誠実なお人柄という印象だけどな。

そもそも、この市会議員が所属する党のデジタル大臣や幹事長といった要人、首相までが人気取りのためか知らんけど、日銀に円安是正のプレッシャー(圧力)をかける発言していたことをご存じないのかな。
日銀をスケープゴートにして人気取りや政治都合で利用する稚拙なやり方は、政治家ご自身はもちろん、中央銀行への信用まで失墜することになるからやめた方がいいと思うんだけれど。
それにしても、いい大人が「〇〇が悪い(日銀や植田総裁に限らない)」とやっているのは、不毛でしかないな。

日銀と植田総裁は、金融政策を正常化しようとされている。その過程で、いかがなものかと思うことは、ぼくにもある。
総裁会見での伝え方と「利上げのタイミングは今だったのかな」くらいだけれど。
いろんな人が利上げが早過ぎると言われるのはその通りだと思うし、実質賃金や個人消費などがマイナスの中での利上げは、ぼくも時期尚早だった気がする。

また運が悪いとしか思えないけれど、米国の景気後退懸念やイラン・イスラエルのきな臭い中東情勢問題もあって、これらが重なったことも今回の暴落を多少なりとも助長したと思う。
けれど、9月の総裁選や11月に控える米大統領選を考えると、利上げのタイミングはここしかなかったのかもしれないなぁ。本当なら去年くらいに利上げしておくのがベターだったんだろうけれど。

今回、急激な暴落ではあったけれど、リーマン・ショックのように金融市場が壊れ、破綻が連鎖するようなものでないことを思うと、ぼくはちょっとしたバブルが弾けたくらいに思っている。
その上で、あえて「〇〇が悪い」と述べるのなら、金融政策正常化のために引き金を引いた人でなく、そこまでバブルを大きくした人と、日銀にプレッシャーをかけた政治家だと個人的には思っている。

つづく

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