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祇園祭と氏子の縄張り

 祇園祭も今日が前祭の宵山。
 今年は山鉾巡行も神輿渡御も行われるそうで、久々に本来の姿が見られそう。
 最後に祇園祭に行ってからはもう10年以上が経つけれど、あの蒸し暑さとあの観客の数を思い出すと、好んで突っ込んで行こうとは思わない。山鉾巡行も函谷鉾の提灯落としも見たことがあるし、茅巻も買ったことがあるし、まあいいかなという感じだ。

 京都外の僕にしてみれば「祇園祭=ザ・京都」みたいなイメージがあるが、京都市内でも場所がちょっと違うだけで、受け止めが全然違うことに驚いたことがある。
 それまでは京都中が祇園祭一色で、京都に住んでいる人はみんな気もそぞろなんだろうと思っていたのだけれど、御所からちょっと北に上っただけで「ああ、あれは八坂さんのお祭りやさかいに」とまるっきり他人事。
 伝統的な祭事だからといって何とは無しに気分が上がることもなく、氏子の区域外だと「人が多くてかなんなー」と迷惑してる感満載の反応だったりする。

 だんじりの準備を始めた頃からすでに待ちきれなくなる岸和田出身の友達や、三社祭が近づいてくると話題の半分ぐらいが三社祭に関係したことになる寿町の知り合いみたいになるのを想像していたもんで、反応の素っ気なさに「あっちはあっち、こっちはこっち」という京都人の表向き物腰柔らかな愛想のなさ、排他的な性格を垣間見た気がしたのだった。

 とはいえ、そうした地域ごとの見えない境界線があるのは京都に限った話じゃないんだろうと思う。
 以前、銀座で祭りの準備をしているところに出くわしたときのこと。
 銀座三丁目の法被を着た町会のオヤジさんたちが歌舞伎座に祭礼の提灯を取り付けていたのを見かけて、用事があった先で生まれも育ちも築地だという親方に「銀座はお祭りなんですねえ」と伝えたら、「あっちの祭は築地には関係ねえよ」と素気無い返事が帰ってきた。
 聞けば銀座界隈は鉄砲洲稲荷の氏子区域で、築地は波除稲荷の氏子区域。歩いて10分と違わない距離だというのに地元意識の強さに驚いたのだった。ちょっと北に上がって京橋、日本橋、八丁堀界隈は日枝神社の氏子区域だというのだから、いつ、誰がどう線引きしたのかは知らないけれど、東京も京都に負けず、なかなかに面倒臭いのだった。

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