『鹿よ おれの兄弟よ』|いのちをいただくこと、いのちがめぐること、生きていくこと|大人も楽しめるおすすめの絵本
姉の妊娠・女児出産、つまり姪の誕生により、絵本を探しに定期的に書店へ足を運ぶようになった。
そんな中印象的だったのが、印象的なタイトルの多さだ。
そんな印象的なタイトルに導かれた出会いから、1冊紹介する。
神沢 利子 作 / G・D・パヴリーシン 絵
福音館書店
ページ数 : 36ページ
サイズ : 29×31cm
神沢利子さんは福岡出身の児童文学作家。『くまの子ウーフ』などの著作で知られている。
G・D・パブリーシンさんはロシア極東の地ハバロフスク在住。表紙を見ただけでわかる、惹きつけられるような精緻な自然の絵から、自然への親しみや敬意が伺えるようだ。
タイトルの「おれ」は猟師。シベリアの地で親子代々猟師を営み、自然と生きてきた。川をのぼって鹿を撃ちに出かける。
そう、タイトルで「おれの兄弟よ」と語りかけている鹿は「おれ」のターゲットなのだ。撃ち、つまりは殺し、肉や皮をいただく対象なのだ。
細かく丁寧に描かれた線と、鮮やかで奥行きのある色遣い。その場の空気が、濃い自然の匂いが香りたつようだ。そ
れが力強く真摯な言葉により一層引き立ち、生き生きとしたオノマトペにより彩られる。「くまの子ウーフ」と同じ作者とは想像もつかない、厳かな言葉たち。
自然への敬意・感謝、そして人間もいのちの循環のうちのひとつだという、途方もなさ。大きな世界に思いを馳せ、気づいたら日常のことなど忘れてしまう。そんな1冊だ。
低めの声で、ゆっくりと威厳を込めて、丁寧に読みたくなる。
子どもには少し難しいかもしれない。大人こそ楽しめる絵本かもしれない。でも、いいのだ。この世界に、子どもを連れて行ってあげたいのだ。
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