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幼馴染みYの話

10代の多感な頃に“自分らしく過ごすこと”ができる場所があるって、思っているよりも恵まれていることなのかもしれない。

意外にも?わたしは中学時代、クラスの中でお調子者を演じていた。
わざとボケたりくだらないことを言って、クラスメイトや先生から笑われたり、呆れられたりしていたのだ。

スカートを短くして怒られることで笑いを取ったり、ごてごてした装飾のついた櫛を持って行って没収され、それでまた笑いを取ったりしていた。

どうしてあんなことをしていたのか、わからない。

でも思うに、小学生の時に異常に発育が早く、肉体的にも精神的にも周囲と差がついて浮いてしまっていた自分が、しだいに周囲とのバランスがとれていったことで“馴染んだ”という感覚に安心したのかもしれない。
だから“馴染む”ことから外れたくなくて、必死にお調子者を演じていたのだろう。

その反面、家庭ではひどい反抗期で、しょっちゅう両親とぶつかっていた。食事を床に叩きつけたこともあったり、部屋の中をめちゃめちゃにしたこともある。
今思い返しても恥ずかしいことばかりだが(妹には本当に申し訳ないと思っている)、10代前半の頃のわたしは、自分の中で大きく葛藤があったのだろう。

今でも特別な“塾”


そんなわたしが唯一“飾らず”、“攻撃もしない”でいられる場所があった。
それが、塾である。

そこは小さな個人塾で、講師は塾長を含め3~4人しかいないし、同じ学年のメンバーもわずか7人、という超少人数制だった。

女の子が6人、男の子が1人。
この少人数メンバーの中で、わたしは週に3回、“自分らしく”過ごすことができていた。

というのも、中学生ながら、皆がそれぞれにしっかりと将来の目標を持っていて、そこに向かって邁進していたからである。
そこでは一生懸命頑張ることは格好悪いことではなかったし、熱く夢を語るのも、創作物をシェアするのも恥ではなかった。

そこでは『ガラスの仮面』を回し読みしたし、自作の小説をプリントアウトして、メンバーに読んでもらったこともある。
のちにわたしがKindleで小説を出版したり、文学賞に入選した時、塾のメンバーは当時のことを思い出したと言ってくれた。

ありのままの自分で居られる場所があることは、当時の自分にとってどれほど救いだっただろう。
メンバーたちとは、今でもSNSやLINEなどで繋がっているけれど、その中でも頻繁に会っている人物がいる。

それが、Yである。


繊細な頑張り屋さん


Yはカメラマンだ。
元々は写真館や大手カメラ会社で働いていたけれど、去年独立しフリーランスのカメラマンとして活躍している。

家族写真を得意とし、その作品はとても繊細で優しく、写真越しにあたたかな温度が伝わってくる。

わたしもプロフィール写真を撮影してもらったり、彼女のブランドのイメージモデルを務めさせてもらったり、マタニティフォトを撮影してもらったりとかなりお世話になっている。

わたしは身長が164cmあって、女性にしては背が高いほうなのだけれど、Yはさらに長身だ。
170cmを超える長身に、ブリーチで脱色した髪。クールな顔立ちもあいまって「ものすごく強い人」に見られることが多いらしい。

実際にはとても繊細で、細かいところにも気がつき、とても頑張り屋さんなY。人間的にもまっすぐで、いつも自分自身と向き合っている印象だ。

Yは中学生の頃からとてもオシャレで、いつもモノトーンの服を着ていた。
30歳を過ぎてもその趣味は変わらないらしい。
置かれる環境が変わるとその都度好きなファッションが変わるわたしと違い、彼女は10代の頃からずっと自分のポリシーを貫いているのだ。

そんな彼女は、中学生の頃から将来の夢を「カメラマン」だと言っていた。
その夢を叶え、独立してもひっきりなしに依頼が絶えない彼女を見ていると、いつでも数歩先を歩いてくれている頼もしさと、背中を追いかける喜びを感じることができる。

彼女に起こった変化


最近、Yのお腹に新しいいのちが宿った。
子どもが大好きで、自分の子を切望していた彼女の姿を見ていたので、報告を受けた時にはまるで自分のことのように舞い上がってしまった。

「これからはママ友としてもよろしくね」。
そう言われた時、一緒に歩んできた歴史の長さを感じて、心がふわっと宙に浮かんだ。

自分は妊娠も出産も経験しておきながら、いざ少女時代から一緒に過ごしてきた友人が妊娠すると、なんだかほんとうに、ほんとうに不思議な気持ちになるのである。

妊婦さんには、特有の幸せオーラが漂っている、と思う。
数か月ぶりに会ったYも、少し温度の高い幸福感に包まれていた。

そんな彼女を見て、ああ、わたしもあんなふうだったのかな、Yの幸せそうな姿をみられてうれしいな…としみじみ感じたのだった。



中学3年の夏、それぞれが志望校に合格できるように、切磋琢磨して勉強を続けていた。
仲間たちの存在がなければ、わたしの人生は少しちがったものになっていたかもしれない。

これからもそれぞれの子育てや、仕事の壁にぶつかることもあるだろう。
そのたびに、互いに励まし合っていければいいなと思う。

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