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不審者と思われる覚悟で、声をかけた

鬼怒川・日光は、わたしたちが結婚して初めて行った旅行先。
そんな思い出の場所を、今度は家族3人で旅行するというエモいプランを思いつき、先日再び彼の地に向かいました。

旅行2日目は日光東照宮に行くことになっていたので、1日目は鬼怒川温泉に滞在。子連れに優しいホテルを選んだので、大満足&気兼ねなく過ごすことができました。
久方ぶりに足を運んだ日光東照宮はとても力強く、最近弱腰になりかけている自分に喝を入れてもらったような気がしました。


***


旅行1日目。

ホテルに到着してから夕食までの間、夫が「息子を見ておくから、先にゆっくりお風呂に入っておいで」と言ってくれました。

そこで、久方ぶりに温泉に入り(しかも1人で!)、体も心もぽかぽかになって脱衣所に向かいました。
(それにしても、入浴後に着る浴衣ってどうしてあんなに気持ちいいんでしょうね)

すると、同じタイミングで温泉から上がった親子が。
ママさんと小さな男の子だったのですが、男の子の方は2歳くらいで、やんちゃざかり!という感じ。

ママさんは自分の体を拭くのはそっちのけで、まずは男の子をタオルで拭いて、パジャマを着せています。
ですが男の子はそれを嫌がり、いつまで経ってもパジャマを着ません。

やっとのことでママさんがパジャマを着せ終わると、男の子は脱衣所中を大冒険。
ママさんは彼を追いかけ回して、肩で息をしています。この時、まだママさんの肩には水滴が……。


この様子を見ていて、わたしは2つのことを考えていました。

1つ目は、これは未来の息子の姿だな、ということ。
はいはい、つかまり立ちをしている今でさえ、一瞬たりとも目が離せず、手をとられて自分のことは後回しになる現状。

息子が走り回るようになったら、もう本当に、本当に本当に本当に大変なんだろうな……と……。
そう思うと、とても他人事のようには思えませんでした。

そしてもう1つは、その日の数日前に報道された、富山県に住む2歳の男の子が行方不明になった、というニュース。
つい昨日とても悲しい結果が伝えられましたが……旅行中はまだ彼の行方がわかっておらず、テレビの前で心配していました(このニュース、全国の親御さんたちが胸を掻きむしったと思います。今も書いていて、涙がにじみ出てきます)。

せめてママさんが自分の体を拭き、着替える間だけでも、わたしがこの子を見てあげたら、少しは力になれるだろうか……。
せっかく温泉に来たのに、子供を追いかけ回して疲れちゃったらかわいそうだよな…。

でも、いきなり「子供見とくよ!」なんて、不審者と思われないだろうか…
どうしよう、声かけた方がいいのかな……

思い悩みながら浴衣に着替えていると、男の子を追いかけ回していたママさんはぽつりと一言。

「ママ、せっかくお風呂に入れたのに、汗かいちゃうよ…」。



この一言で、わたしの心は決まりました。



感染症予防にマスクをして……。
なるべく怪しくないように、目元をにっこりとさせて…。


「あの、よかったら…見ておきますよ。お母さん、ゆっくり着替えてください」


言った……!言った――――!!!!

言った…はいいものの、チキンな心臓は早鐘のようにバクバク…。

するとそのママさんは、突然現れた知らない女に対し

「え…!すみません!いいんですか…?…優しい…」

と返してくださったのです。


それから、わたしは男の子にガン無視されながら、ママさんが着替えるまで見守り隊。
ママさんと男の子が「本当にありがとうございました!」とさわやかに去って行ったあとには、ちょっと腰が抜けそうになりました(笑)


部屋に戻りながらも、
「怪しくなかったかな…このご時世、知らない人間に声をかけられて、困惑したんじゃないかな…」と反省していたわたし。

自分にとっては親切でも、余計なお世話だったんじゃないかな…
なんて思っていたんです。

でも、その後に嬉しいことが待っていました。



***


そのホテルでは、夕食は部屋ではなく、夕食会場で摂ることになっていました。
家族3人で会場に向かうと、既に長蛇の列。

わたしたちがそこに加わると、目の前に見覚えのあるパジャマ姿が。
あ!さっきの男の子だ!

でも、声を掛けるのもなんだか恥ずかしいし…
どうしよう…

幸い(?)、あちらのご家族は前を向いていてこちらには気づいていない様子。
そこでわたしは、そのまま夫と会話をしていました。

すると、なんとママさんが振り返り、わたしに気付いてくれたのです。
そして「あ!さっきの方!さっきは本当にありがとうございました!」と言ってくださいました。

さらに、ご主人にわたしを紹介してくれたり、夫に「先ほど奥様にとても親切にしていただいたんです!」とまで……。

しかも息子にまで「君のお母さん、とっても素敵な人だね」という嬉しい言葉をかけてくださったんです。

いや、あなたこそとっても素敵なお母さんですよ!

何かお力になれば…と行動させてもらったことなのに、かえって喜びをもらってしまいました。

こういうの、袖振り合うも他生の縁というんでしょうか。
ちょっと違うかもしれないけど、旅のほっこりした思い出になりました。



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