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まずはできることから!小さな会社の働き方改革


働き方改革とは?

働き方改革は2019年からはじまっていますが、取り組みの進み具合はいかがでしょうか。運用しにくいなど無理はありませんか?見直しや新たな取り組みを検討して日々ブラッシュアップしていくために今一度おさらいです。

厚生労働省が掲げる「働き方改革」の目指すものは以下の通りです。

「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。
働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

「働き方改革」は、働く人々が多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現するための取り組みで、これらの取り組みを通じて日本が直面する少子高齢化に伴う労働者人口の減少(人材不足)や働く人々のニーズの多様化(ワークライフバランス)に対応し、生産性向上とともに就業機会を拡大することを目指しています。

働き方改革の目的

労働環境の改善に向けた取り組みには以下ような目的があります。

①多様な働き方の実現:すべての労働者がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方を選択できる社会を目指す。
②長時間労働の是正:過度な労働時間を減らし、健康問題を解消するために取り組む。
③ワークライフバランスの推進:仕事とプライベートの調和を図り、労働者の満足度や生産性を向上させる。
④非正規雇用の安定化:非正規雇用労働者の待遇改善や雇用の安定を目指す。

出生率は年々減ってきており、今まで通り”フルタイム”で働くことが前提であれば人手不足になることは目に見えていますし、60歳定年後も継続して働くことも当たり前となってきて(65歳までの継続雇用は義務です)、今までとは違う様々な事情を抱えた方々に労働市場に出てもらわなければなりません。

厚生労働省の令和5年版労働経済の分析によると労働力率は女性高齢者を中心に上昇しています。
15歳以上人口に占める正規雇用労働者の割合は上昇傾向で推移しており、特に男性の労働者のうち60歳~64歳の正規雇用労働者という高年齢にあたる方々、女性は25歳~44歳とまさに子育て世代の割合の上昇が顕著とあり、ひと昔前とは違う属性の方々が労働市場に増えてきていることは確かです。

そして、個人や家族の事情により非正規雇用を選択する労働者も増加傾向とのこと、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」という理由で非正規雇用を選択している方は女性を中心に上昇しているとのことです。

また、働き方改革の制度が浸透してきていることもありますが、年次有給休暇の取得率が上がったり、時間外・休日労働の時間数が減ったことなどからも、仕事も大事だけれど、家族や自分のプライベートを優先したいという意識を持つ人は増えているのではないかと思われます。

正規雇用だけでなく非正規雇用で働く人も増え、労働者の年齢層は幅広くなり、育児や介護など家庭を優先したい、など1つのルールで会社運営をしていくことは難しい時代になってきています。また外国人労働者も増えてきている昨今、こういった様々な属性の元、様々な働き方をする人々が働きやすい職場でなければ、優秀な人材が得られなくなってきていることはお分かりいただけると思います。

働き方改革関連法のポイント

①時間外労働の上限規制
②年次有給休暇の時季指定
③同一労働同一賃金
他、時間外労働の割増賃金率50%、勤務時間インターバル制度などがあります。

厚生労働省の他、詳しく解説しているサイトも多くありますので、ここでは詳しく取り上げませんが、これらは法律で決まっていることなので、守らなければなりません。

求人をしても人が集まらない、せっかく採用してもすぐに辞めてしまう、などの人材不足で悩んでいる会社さんは(給与問題は別として)、そもそも労働関係の法令をわかっていなかったり、守られていなかったりすることがあります。

”法律を遵守する”ことは”最低限”のことです。

まずは法令違反がないかチェックし、是正してはじめて”働き方改革”のスタートラインに立つことになります。

そして法律で決まっているので守らなければならないことですが、「法律で決まっているから”仕方なく”」ではなく、これを機会に今までの会社の制度を見直して会社や従業員、時代に合わせたものとし、これから先を見据えたものとして取り組んでいくことで”選ばれる”会社となるはずです。

中小企業の働き方改革の必要性

厚生労働省のHPには以下のように書かれています。

働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。
「働き方改革」は、日本国内の雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者においても着実に実施することが必要です。この取り組みは、働く人々が個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を選択できる社会を目指しています。

厚生労働省働き方改革特設サイトより

これらを実現するために以下の3つのポイントが重要です。

①魅力ある職場づくり:職場環境の改善などを通じて、人手不足を解消し、業績向上を図ること
②人材の確保:若者や女性、高齢者など多様な人材を活用できるよう、マッチングや育成を支援すること
③生産性向上:効率的な働き方を促進し、賃金引上げにつなげること

業種や会社の規模、従業員の特性などによって優先される事項は異なってくると思います。まずは何が必要か、どういった取り組みが浸透しやすいか等を考え、ゴール(目的)を設定してからはじめましょう。

どんなことからはじめる?

前回の投稿「労働生産性向上のための取組」でもあげましたが、これらは比較的導入しやすいのではないかと思います。

①リモートワークとフレックスタイム制度の導入
②健康経営と福利厚生の充実
③社内コミュニケーションの活性化
④デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

労働生産性向上のための取組|伊藤社会保険労務士事務所 (note.com)

これらは「労働時間の管理」がきちんと行われていることが前提になりますが、みなさんは従業員の労働時間がどのくらいか、また行っている業務がどのくらいの時間がかかるのか、わかっていますか?

タイムカードがない会社さんはごくごく少数だとは思いますが、きちんと見たことはあるでしょうか。時間外労働(残業や休日労働)がどのくらいあって、もし時間外労働が誰か特定の従業員に偏っていたり、時間外労働が多いようであればその業務を他の従業員へ振り分けたり、DX化で作業効率を上げたり、はたまたその業務を”やめた”りすることも必要になってきます。

職場環境を整えるのも働き方改革につながる?

そのほか、職場の環境整備を行い、”出勤したいと思わせる職場づくり”を行うこともはすぐに取り組めるのではないかと思います。

職場環境整備は、従業員にとって働きやすい職場を作ることです。
働きやすい職場は、業務を行う上での導線がしっかり考えられており、業務効率が上がったり、従業員同士のコミュニケーションが円滑になることにより、ハラスメントなどの予防や早期発見にもつながり、社員の健康維持にも役立ち、人材の定着率も高くなります。

具体的には

●休憩室やトイレの整備
執務スペースの確保がまずは大事なことから、休憩室や更衣室がない会社は意外と多いのではないかと思っています。また、同じ理由から男女別のトイレがない、執務スペースから見える位置にトイレがあるなど、いったん業務から離れて”気晴らし”がしにくい職場もあることでしょう。

これらは引っ越しを伴ったり、家賃負担が増えるためすぐにはできないとは思いますが、たとえば衝立で目隠しをしたり、執務スペースとトイレの間に会議スペースや書庫を設けるなどすれば、執務スペースから切り離すことができるかもしれません。

生産性を上げるには適度な休憩が必要です。休憩室や男女別のトイレは、仕事の合間に一息つける場所として必要ではないでしょうか。

●従業員も使ってよい給茶機やウォーターサーバーの設置
たびたび話題になる”これは休憩なのか?たばこを吸う従業員との不公平感”問題もあることですし、福利厚生の1つとして、いつでもお茶が飲める環境としてウォーターサーバー等を置き、”一息つける”時間があっても良いと思います。

無料にすると”意地汚い”人がたくさん利用するのではないかとの懸念もあるかもしれませんが、人が1日に飲める量は決まっていますし、持ち帰るにしても何リットルも持ち帰れるものではありませんから、それほど金銭的負担にもならないのではないでしょうか。それよりも業務効率の向上や従業員のコミュニケーションの場、従業員の健康に目を向ける方が生産的です。

様々なビジネスは喫煙所から生まれるとも言われていたりします。机に向かってパソコンとにらめっこするだけが仕事ではありません。適度な休憩と仕事から少し離れた場所でリラックスしながらの従業員同士のコミュニケーションは社業にもいい影響を与えるのではないでしょうか。

●ゴミ収集や室内の清掃などを外注する
職場の環境整備は必要ですし、”自分たちが働く場所は自分たちで整える”という意味で、従業員がそれらに取り組むことは会社の方針としてあってもいいとは思います。
ただ、本当にトイレ掃除やゴミ出しまでを従業員がやる必要があるのか、「職場の環境整備は社内の人間で行う」という会社の方針なのだとしたら、従業員全員、そしてもちろん役員も自らやっているのか、ということです。

もし”誰か”に偏っているのであれば、その方針にはいささか疑問が生じます。こういった言動の不一致は従業員に不信感を持たれる原因にもなり、一事が万事、会社全体への不信感へとつながっていきます。

さて。
すぐにできそうな職場環境整備を挙げてみましたが、どんなことをやるにしても、それがたとえ取るに足らない小さなことだったとしても、まずは”目的”を明確にし、従業員と共有するようにしましょう。

何の相談もなく、いきなり休憩室等を整備しても、どうしてそれに至ったかの説明がなされなければ、否定的にとらえる従業員も少なからずいるからです。

従業員数が少ない会社のメリットとしては従業員みんなの顔が見え、意思疎通がしやすいこと、経営者と近い距離にいて経営者のやり方を肌で感じているため愛社精神を持ちやすいなどがありますが、同時に経営陣が従業員に何も言わずに勝手に進めると、「私は会社のためにがんばっているのに、社長はわかっていない」などと反発を受けやすくもなります。

また、従業員数が少ない会社のデメリットに”属人的になりやすい”ことが挙げられますが、誰かだけに偏ってしまう、リスクの分散ができない、と人的リソースが足りていないことを前提に取り組んでいかないと、当然反発も多くなりますので注意が必要です。

当然、法令は守らなければなりませんし、経営陣のリテラシーや金銭的にできないこともあるとは思いますが、正社員のみならず、パートアルバイトなど従業員全員を巻き込んで”働きやすい職場”を目指すことも重要ではないでしょうか。
その際、会社が目指す方向はぶれてはいけないので、経営陣でしっかりと見定めた上ではじめることも大切です。

「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」の好循環をつくるため、「働き方改革」を進めてより魅力ある職場をつくりましょう!

厚生労働省働き方改革特設サイトより

取組内容によっては、厚生労働省や経済産業省、中小企業庁などから助成金や補助金が出る場合がありますので、そちらも活用しつつ、従業員にとって働きやすい職場を目指し、そして生産性を上げて社業を盛り上げていきましょう!

≪Profile≫伊藤社会保険労務士事務所
東京都社会保険労務士会 所属
特定社会保険労務士 伊藤 綾子
2005年4月 渋谷区にて事務所開設
2011年11月 豊島区に事務所移転
★組織改革支援★組織・人材活性化支援★
伊藤からの質問「どういう組織をつくりたいですか?」


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