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なんでもかんでも炙ってみる


「(株)週末釣りに行かせていただきます」の定例会にて

株式会社というのは、当然株の所有数が多い人の発言権が大きくなるもので、事業の方向性なども株主の意向に沿う、または理解を得られるものにしていかねばなりません。

我が「株式会社週末釣りに行かせていただきます」の持ち株比率はというと、奥さん60%、自分30%、息子10%でありまして、週末釣りに行けるかはもちろんのこと、釣れた魚の調理法にまで筆頭株主の奥さんのご意向を仰がねばならないわけです。

しかし、時に経営者は株主の反対を押し切ってでも、自身の信じた方向性に事業の舵を切らねばならぬことがあるのだなあ、というのは、最近釣って帰る真鯛の食べ方について事業判断が分かれたからです。

炙りを否定する筆頭株主

真鯛釣りのコンサルタントを目指しています

このところ、我が社では真鯛フィーバーが止まりません。小さな漁港の岸からルアーを投げると、他の人は釣れないのに、なぜか自分にだけ真鯛がかかるのです。この調子でいけば、近い将来真鯛釣りのコンサルタントとして生計を立てられるのではないかしらん?と思うほど、自分は真鯛名人の名を欲しいままにしている今日この頃なのです。

たくさん釣れるのことに筆頭株主(奥さん)も大変喜んでくれているのですが、その真鯛の調理法について自分と株主で意見が分かれました。

真鯛を炙りにしてみようと思う

自分が提案したのは炙りです。焼き霜降りともいわれ、皮つきの刺身の皮目をバーナーで炙る食べ方です。単に刺身にするのも飽きたし、炙りにしてみようと思ったわけです。しかし筆頭株主からの回答は・・・

炙りはサワラとか向いている魚でやってほしい。真鯛は違うと思う

でした。自分の経営判断が真っ向から否定された瞬間です。さらにそれだけでなく、先週食べたばかりのアクアパッツアを今週も食べたいと言うのです。(アクアパッツアの顛末は下記記事ご参照)

「いっや~、だ~からだめなんだってばよ。せっかくたくさん釣れた魚、ここでチャレンジしなくてどうすんだよ。安牌ばっかとってたら成長なしだよ。炙りだよ炙り。炙って旨味足すんだよ、失敗したら全焼きにすればいいじゃん」と思いながらも、「じゃ、1匹はアクアパッツアにして、1匹は普通にお刺身にして、もう1匹を炙りにしましょうか」と、折衷案が得意な営業マンのような顔で株主を説き伏せ、晴れて真鯛の炙りをやってみることに。いざ。

皮つき真鯛をバーナーで炙る

今回釣れた真鯛4兄弟

今回釣れた真鯛は4匹。養殖の筏から逃げ出し野生化し、先週よりひとまわり大きく成長しています。

炙りをするのに鉄フライパンは欠かせない

皮つきのままサクにした真鯛を鉄フライパンの上に並べます。炙った際に皮がくるんと丸まらないように、縦に1本(太いサクなら2本)切れ目を入れておきます。

家中でバーナーを使う怖さよ

したらば、ガスボンベのバーナーで皮目を炙っていきます。

こんがりじゅわっ

皮に焦げ目がついて脂がじゅわじゅわと滲み出してきましたら、えも言われぬ香ばしい匂いが立ち上り、ついつまみたくなります。そうなればこの料理は9割完成です。

切る前に冷蔵庫に入れて粗熱をとり、身を絞めて切りやすくしておきます。切る際は皮を下にして切るのが肝要です。焼いた皮を上にして切るとぐちゃぐちゃになり、悲惨になること間違いないからです。

小さくても鯛。真鯛は皮が固めなので、薄めにそぎ切りにしました。もう美味しいのは確定しているのですが、さらに、ポン酢&もみじおろしと、しょう油&わさびの2種を用意して、株主に差し出します。

昆布締めVS炙り。勝敗は・・・

真鯛の炙りと昆布〆食べ比べ

比較対象として、昆布締めも少し作って食べ比べました。
結果、個人的には断然炙りの圧勝です。焦げた皮からにじみ出る脂と刺身部分の混ざり具合が絶品すぎです。鯛から脂が出ているので、ポン酢ともみじおろしでさっぱりさせて食べるのがまた美味しいのです。

これには株主も「ウマっ!」と白目をむいてがっついておりましたので、「やろ?だから鯛も炙り美味しいって言ったやん」と得意がってみたところ、「真鯛の炙りがダメなんて一言も言っていない」と真顔で言われ、こっちが白目です。この方健忘症なのかしら。

ビジネス上の言った言わないはトラブルの元。これからはきちんと発言履歴を残しておかねば…と強く思ったのでした。

炙りの宴はまだ終わらない

お望み通り、真鯛のアクアパッツアも作り、残ったスープにパスタをぶち込みむさぼり喰います。その姿、千と千尋の神隠しに出てくる豚化した両親そのもの。「ウマウマ」とうなりながら鍋から麺を奪い合います。結婚9年目です。と、その時

リンローン♪

と玄関の呼び鈴がなったのでした。日曜夜のこの時間に玄関の呼び鈴がなるのはかなりの可能性でお隣りさんの回覧板か、釣り好き夫婦のお向かいさんからのおすそわけです。果たして届いたのは・・・

イサキ、真鯛、ヘダイの高級釣れたてセット

立派なイサキ2匹、真鯛、ヘダイの高級釣れたてセットです。お向かい夫妻は船釣りが趣味なので釣れる魚も大型です。台所で魚が大渋滞を起こしています。冷蔵庫もパンクしており、時間の猶予もありません。さあ、この立派なお魚たちをどうしたものか・・・

イサキも炙ってみました

そんな時にも、なんでもかんでも炙ってみれば解決です。高級魚のイサキは白身魚とも青物とも違う身質で刺身が美味しいと聞きます。早速3枚におろし(焦っていたのでさばき方が雑)、

皮に切れ目を入れて炙る

バーナーで炙り冷蔵庫で粗熱をとり・・・

身が柔らかく切るときにほろほろ崩れる

イサキの炙りの完成です。さばいている時から感じていましたが、イサキって身がとても柔らかいのですね。身も赤身と白身の中間のような色合い。この感じ、何かの魚に似ている・・・と思ったら、サワラです。サワラにそっくりです。

目をつぶって食べたらサワラと区別がつない

イサキの炙りを食べてみると、案の定サワラの炙りと酷似した味。もんどりうってゴロゴロ転げまわり、柱で頭を強打して死にそうなぐらい美味です。

ちなみに頂いた真鯛も半分炙りにして、母が入院中で気弱になっている実家の父にお届け。ヘダイは息子君用に、カレー風味の唐揚げにして美味しくいただきました。

ということで、皮が美味しい魚、皮と身の間にコラーゲンや脂が多い魚は、炙りにすると通常の刺身より劇的に美味しくなり、幸せになれます。これからも隙あらば炙っていこうと思います。

※ちなみにまだまだたくさんある真鯛は、「鯛そうめんという食べ方」で完食しました。


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