#5 コース料理の意味と撮影、料理の解釈
高単価料理の撮影をする場合は料理への解釈は絶対的に必要になります
行って撮るだけ。にはならず
専属のカメラマンがいることが多いので
今回は料理から紐解く高単価料理の解釈を私なりに説明していきます。
今回は高単価料理の撮影となりますが
そもそも高単価とはいくら程なのか?ということですが
ここでは一般的に
一人当たり料理のみで 15,000円以上のものとさせていただきます
(あくまでも一般的にという意味です)
一般的な高単価飲食店と大衆店の違いは客単価の違いではあるのですが
そもそも料理の目的が違います
高単価飲食店の起こりは体験価値にあります
今では食材の流通が一般的なお店でも目の前で魚を捌くや
目の前で寿司を握ったりなどが当たります
昔は新鮮な食材はそもそも高かったので
仕入れることができるお店は少数で
一般的に体験できないことだった
それに加えて、料理の工程数が増えることで
人件費なども増えていくので必然高単価となっていく訳です
現代では流通革命が起きたので一般的なお店でも体験型店舗は
運営できるものの、高級食材の位置は変わらないので
今は高単価飲食店での体験価値は一般的には流通しない食材を
厳しい修行をした料理人がその人の解釈で料理したものを体験できる
ということにスイッチしてきています
この料理人がその人の解釈での料理体験を提供するお店というのは
料理人を目当てに料理を食べにいくというフランスの風土が関連していて
主にヨーロッパ圏では2014年頃までは
なりたい職業の三位には料理人が入るほど、料理人という職業が特別なものになっていました
有名なところで言うと
ジュエル・ロブションやアラン・シャペル、フレディ・ジラルデなど
日本で言うとやはり第一人者は三國シェフです
三國シェフは今でこそYouTubeで料理を作っている気さくなお爺ちゃん
に見えますが、尖りまくっていた若い頃、フレンチの有名店での修行をへて
ジャポニゼというスタイルを確立しフランスでも知られる日本人シェフの第一人者として有名です
三國シェフを語ると1万文字は超えそうなので割愛しますが
日本でのジャポニゼ体験をできる唯一のお店が三國シェフの
オテルドミクニでした
今でこそSNSの発達でいろんなお店を知ることが出来ますが
当時を考えると書籍などでしか知れないお店に記載されている店で修行した
三國シェフが如何に異端だったかを知れると思います
話を戻しますが
有名シェフの作る料理を体験をするということでできる事に
高単価が付くというのは
ここまでの説明でご理解いただけたと思いますが
他にも大切なことがあります
それは抜きの美学です
引き算と言い換えてもいいと思います
ここでは割烹料理(日本料理)での内容になりますが
もずく酢という料理を食べたことがある人は多いと思います
居酒屋での一品としては好きな人は注文するでしょうが
内容としては、量や使用食材から、そこまで高級なものではないのですが
(それでも一級品の素材です)
コース料理の合間にもずく酢を入れるということにどういう意味が
あるのか?
折角高い料金を払っているのだから、全部高級食材を食べたいと
思うかも知れませんが、コース料理というのは流れです
先付けから始まって〆までの流れの中で
舌に与える影響を考えて料理の順番や構成を考えています
例えば脂の強い和牛料理の後には
あっさりした物を入れる場合や
さらに濃いものを入れる場合があります
これは和牛の脂が舌に与える影響を考えているのですが
脂を食べた後だと、更に濃いものではないと味が薄く感じます
ですのでその後の料理を考えた時に、もずく酢などあっさりとしたもので
舌をリセットすることでその後に続く料理を盛り上げる場合があります
作り手のコースの解釈によって抜きの美学は違うのですが
コース料理の中に抜きを入れるという意味はお分かりいただけたと思います
居酒屋で食べるもずく酢と、コース料理で食べるもずく酢の違いだけで
ここまでの違いがあります
この部分の大切なところは後に食べる料理をより楽しむ状況を作る
という部分です
コース料理はしばしば歌と似ていると言い換えられます
イントロから始まり、Aメロを経てサビで盛り上がる
最後には歌が終わってしまう寂しさのような物だったり、最後にサビが続いて盛り上がったまま終わる歌など
作り手が消費者に与えたい状況で流れが決まります
コース料理も同じで、作り手がゲストに与えたい感動を
コースを通じて表現していますので
その流れを楽しめるようになると更にコース料理を楽しめる様になります
さてここで話を戻しまして
では高単価料理を撮影する際のマインドは
コース料理は全ての料理をもって一つの作品である
という概念です
高単価料理というのは一つ一つが高単価なのではなく
料理人、空間、食材と全ての要素が複合しての作品として
撮影するというのがカメラマンとしてのマインドです
そして料理は
皿というキャンバスも含めた上での料理という作品です
なので高単価料理は背景が黒というのが多い理由になります
黒が与える印象が高級というカラーイメージもあります
なので私も撮影する際には
テーブルフォトの様な概念は皆無です
皿と料理を含めた一つの作品として撮影するので
必然このようなものになります
料理はシンプルイズベスト
皿と料理だけで良いと私は思います
もちろん、お店の種類によってはテーブルフォトの様に
テーブル上に料理やその他カトラリーなどのアイテムを配置して撮影することもありますが
料理という主題を引きた立てるのには
デザインという概念は必要ないと思っています
それ自体が作品なので
という感じで料理に関する講釈を今回は垂れましたが
少しでも料理に興味を持っていただけると幸いです
料理撮影は深いですね
料理は身近な娯楽ですので深めていくとより楽しめるので
様々な料理を食べてみると楽しいのでオススメです!
ではまた!
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元料理人が料理撮影を語るマガジン
16年間料理人で現在カメラマンのイトカンが 料理撮影時のライティングや小技などを図解入りで説明していくマガジン たまに料理撮影の小ネタなど
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