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ファーストステップ司法書士28「質に入れるってどういうこと?【質権】」

Aは,友人Bにせがまれて,100万円を貸すことになりましたが,本当にBが100万円を返してくれるかどうかが不安です。ふと見てみると,Bは高価な指輪をはめているようでした。Aはこの指輪を預かって担保にすることはできないでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【342条】
 質権者は,その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済に当てることができる。
【344条】
 質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって,その効力を生ずる。
☑ 用語解説 ☑
『 被担保債権 』・・・質権等によって担保される債権のこと。上記の事例で言うと,AのBに対する貸金返還請求権がこれに当たります。
『 競売 』・・・競売とは債務者の財産を強制的に売却すること。オークションのようなものをイメージしてください。
『 要物契約 』・・・契約成立のために,当事者の合意だけでなく目的物の引渡が必要な契約のこと。一方,当事者の合意のみで成立する契約のことを諾成契約といいます。

【1】意義

質権とは,債権者が,その債権〔被担保債権〕の担保として債務者等から受け取った物を債務の弁済があるまで預かっておいて,その弁済を促すとともに,弁済がない場合にはその物から優先弁済を受けることができる権利です(342条)。上記の事例でいうと,Aは100万円を確実に回収するために,Bから受け取った指輪を預かっておき,万が一Bが100万円を支払ってくれない場合には,その指輪を競売に掛けて,そこからお金を他の債権者に優先して回収することができます。質権は,質権を設定する契約のみでは発生せず,質権の目的となる物を引き渡さなければ発生しない要物契約です(344条)。

【2】趣旨

質権は,債権を確実に回収することを目的とした物権です。目的物を自分のところにとどめておくことに加え,弁済がなされなかった場合に目的物を競売にかけ,その売却金額から他の債権者に優先して債権を回収することができ,自分の持っている債権を確実に回収できるようにする機能があります。上記のように,「債務者等のものを自分が預かっておくことで債務者の弁済を促す」ということが質権のメリットなので,質権設定契約に加えて「目的物を預かること(引渡し)」があって初めて質権が成立することになります。

【3】解答

Aは,Bの指輪に質権を設定して預かることで,Bに100万円の支払を促すことができ,万が一Bが100万円を支払ってくれなくても,その指輪を競売にかけることによって,そこから優先的に100万円を回収することができます(342条)。

★やってみよう!★
【過去問 平成元年第10問2】
☑ 動産に対する質権の設定は,当事者の合意によって効力を生ずる。
➠× 質権は,質権を設定する契約のみでは発生せず,質権の目的となる物を引き渡さなければ発生しません。

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