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ファーストステップ司法書士5「民法とは何か?【民法入門①】」


【1】民法とは

私たちの身の回りには,不動産の購入,金銭の貸借,アパートの賃貸,交通事故による賠償金の支払い,婚姻や離婚,父の遺産の相続などの人と人とを結びつける様々な生活関係があります。
民法は,このような私人相互の生活関係の基本的なルールを定めた法律です。換言すれば,市民社会のルールを定めた法律が民法です。

【2】民法の役割

(1)私的自治の原則
市民社会のルールの基本は私的自治にあります。私的自治が認められるということは,私人同士の取引や経済活動は,お互いの話合いや合意で,どのような内容のものであれ自由にできるのが原則です〔私的自治の原則〕。

(2)契約自由の原則
民法では,私的自治の反映として,契約自由の原則が認められています。すなわち,契約を締結するかどうか(521条1項),契約の内容(同条2項),書面か口頭かなどの契約の方式(522条2項)は,当事者が自由に決定することができます。すなわち,どのような契約を結ぼうと当事者の自由とされているのです。

(3)任意規定と強行規定
ア 序説
市民が法律を意識しないまま契約をしてしまった場合,契約の内容が明確でないためにトラブルが発生したときに,どのように処理してよいか分からなくなります。このようなときに民法の内容に則ってトラブルを解決します。すなわち,民法の規定は,市民が約束しなかった部分を補充する役割を担います。
イ 任意規定
上記の民法の規定の位置づけから,当事者が民法の規定と異なる内容の約束(特約)をすれば,その点に関して,民法の規定が適用されません。このように当事者の特約によって排除できる規定のことを任意規定といいます。
ウ 強行規定
民法の規定は当事者の特約で排除できる任意規定ばかりではありません。例えば,殺人契約のような反社会的な契約は公序良俗違反で無効です(90条)(※1)。このように当事者の意思によっては動かせない,公益の要請による規定のことを強行規定といいます。
※1 法令などで,並ぶ「条」の間に新たな条文を加えるときは,今までの番号を変えないように,「○○条の2」といった要領で枝番号が付されることがあります。

(4)総括
以上のように,民法は強行規定によって最低限のルールを定め,それ以外の部分は任意規定として当事者の意思を尊重しています。すなわち,民法は,最低限の市民社会のルールであるとともに,当事者の意思の補充として働きます。これにより市民社会が円滑に運営されるようにすることが民法の役割なのです。

【3】民法の構造

民法は,所有・売買・賃貸借などの財産関係を規律する「財産法」と,夫婦・親子・兄弟姉妹などの身分関係を規律する「家族法」に分かれます。
「財産法」は全体に通じる一般のルールを定めた「総則」人の物に対するルールを定めた「物権」人の人に対するルールを定めた「債権」に分かれます。
「家族法」は,身分関係のルールを定める「親族」と,相続に関するルールを定めた「相続」に分かれます。

無題

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