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ファーストステップ司法書士25「人の土地を使わせてもらおう!【地上権】」

AはB所有の甲土地の上にコンビニエンスストアを建てて営業したいと思っています。Aがお金を払って甲土地を使わせてもらうには,賃貸借契約を結ぶ以外にどういった手段があるでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【265条】
 地上権者は,他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利を有する。
【612条】
 ①賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができない。

【1】意義

地上権とは,所有権のように,使用・収益・処分が全面的にできるわけではなく,工作物(建物)や竹木(竹や木)を所有するために他人の土地を使わせてもらう権利をいいます(265条)。後で学習する賃貸借契約によって発生する賃借権とは,他人の物を使わせてもらうという点では共通しますが,「何に対する権利なのか」という大きな違いがあります。賃借権は人に対する権利〔債権〕ですが,地上権は他人の物に対する権利〔物権〕です。この違いにより,権利の譲渡が自由にできるかどうかに違いが出てきます。賃借権は特約のない限り,貸主の承諾がなければ,これを譲渡することができません(612条1項)。一方,地上権は,設定者の承諾がなくても,自由にこれを譲渡することができます

【2】趣旨

賃貸借契約は貸主と借主の信頼関係に基づいて成り立っています。ですから賃借権を勝手に譲渡する行為は,この信頼関係を破壊するものになるので,賃借権を貸主の承諾なく譲渡することはできません。これは賃借権が人に対する権利であることを前提としています。一方,地上権は物に対する権利であって,信頼関係といった「人対人」の話は出てきません。ですから,地上権者は設定者の承諾を得ることなく勝手に地上権を譲渡することができます。

【3】解答

Aは,B所有の甲土地の上にコンビ二エンスストアという工作物を所有するために,甲土地につき地上権の設定を受け,これを使用することができます(265条)。

★やってみよう!★
【過去問 昭和60年第3問1】
☑ 土地の賃借人は,特約がない限り賃貸人の承諾を得なければその賃借権を譲渡することができないが,地上権者は,特約がなくても土地の所有者の承諾を得ないでその地上権を譲渡することができる。
➠○ 賃借権は特約のない限り賃貸人の承諾がなければ賃借権を譲渡することはできませんが,地上権は物権なので,設定者の意向に関係なくこれを譲渡することができます。

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