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【択一式】判決による登記・処分制限の登記(髙橋講師)

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回の問題 ~判決による登記・処分制限の登記~

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【1】第1問の解説 ~条件成就執行文の提供~

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裁判上の和解による被告の意思表示の擬制の効力は,和解に係る債務名義が成立した時に生じるのが原則であるが(民執177条1項本文),当該意思表示が反対給付との引換えに係るときは,条件成就執行文が付与された時にその効力が生じる(同条1項但書,2項)。したがって,本問の場合,Bは,条件成就行文を提供しなければならない。

〔趣旨〕債務者の意思表示が反対給付と引換えの場合,執行文の付与を受けたときに,意思表示が擬制されるため,反対給付の事実を証する情報は裁判所書記官に提供するものであり,登記申請時には提供不要である。

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〔よくある質問 ~反対給付と引換えにすべきものである場合~〕
Q.  民事訴訟法では,債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合には,条件成就執行文は不要であり,反対給付は執行開始要件にすぎないとされていますが,不動産登記法と扱いが異なるのでしょうか?
A.  原則として,反対給付は,「執行文付与」の際には不要で,「執行開始」の際に必要です。これは,双方の履行をできるだけ同時に近づける趣旨です。例えば,「1,000万円の支払いと引換えに甲土地を引き渡せ」というのであれば,甲土地の引渡しの強制執行について,1,000万円の支払いがなくても執行文の付与は受けられますが,いざ強制執行する段階では1,000万円の支払いが必要です。
例外として,債務者の給付が「意思擬制」にかかる場合は,反対給付は「執行文付与」の際に必要になります。不動産登記の判決による登記は,登記義務者の申請意思を擬制するものなので,この例外に該当します。意思擬制は,執行文の付与を受けた瞬間に執行が完了します(その瞬間に債務者の登記申請意思が擬制される)。「執行文の付与」が最終段階であって,その後の「執行開始」というものがないのです。よって,執行文をもらうタイミングで反対給付の履行が必要になります。

【2】第2問の解説 ~判決による登記における中間省略~

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主文に登記原因の明示のない判決による所有権移転の登記は,中間・最終の登記原因に相続・遺贈・死因贈与が含まれていない場合には,最終の登記原因及びその日付をもって申請することができる(昭39.8.27民甲2885号通達)。

また,判決主文に登記原因が明示されている場合には,中間省略登記になるときであっても,その登記原因で所有権移転の登記を申請することができる(昭35.2.3民甲292号回答)。

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【3】第3問の解説 ~通知証明情報における配達証明書~

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仮処分に後れる登記を抹消する旨の通知を発した日から1週間経過後に登記の抹消を申請する場合には,抹消の申請情報と併せて内容証明郵便で通知書を発したことを証する情報を提供すれば足り,配達証明書の提供は不要である(平2.11.8民三5000号通達)。すなわち,通知を発した日から1週間以内に登記の抹消を申請する場合には,相手方に通知が到達したことを証するために配達証明書をも提供しなければならない。本問は,「2週間」としている点で誤りである。

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