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ファーストステップ司法書士8「幼稚園児が3万円のゲームを 買ってしまった!【意思能力】」

幼稚園児(5歳)のAは,ゲームで遊んでいるBをうらやましがって見ていたところ,Bから「このゲーム,3万円で買わないか?」といわれ,Aは「いいよ。」と答えてしまいました。AはBにお金を支払わなければならないのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【3条の2】
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは,その法律行為は,無効とする。


【1】意義

権利能力を有する者がすべて契約をすることができるかというと,そうとはいえません。例えば,上記の事例のように幼児が契約をしてしまったというような場合,幼児は,この契約によって3万円を支払わなければならなくなるということ,そしてそれが何を意味するのかということが分かっていません。つまり,行為の結果を認識するに足りるだけの精神能力〔意思能力〕を有していません。このような意思能力を有していない者〔意思無能力者〕のした法律行為は無効とされています(3条の2)(※1)。また,幼児の他にも,泥酔している人などのした法律行為も意思能力を欠き,無効となります。
※1 民法上,意思能力が備わり始めるのは,7~10歳くらいであるといわれています。

【2】趣旨

民法では,私的自治の原則というものが大原則となっています。これは,取引や経済活動は,お互いの話し合いや合意で自由にできるという原則です。この原則では,自分の意思に基づいて契約などの取引をすること,つまり意思能力を持って契約することが前提となっています。したがって,意思能力を欠く法律行為は,この私的自治の原則の前提を欠き,当然に無効となります。

【3】解答

Aは5歳の子供であり自分の行為(売買契約)の結果(3万円を支払わなければならないこと)を認識するに足りるだけの精神能力,つまり意思能力がないので,Aのした法律行為は無効となります(3条の2)。つまり,この契約は初めから成立しておらず,Aはもちろん,Aの両親も,Bに3万円を支払う必要はありません。

★やってみよう!★
【過去問 昭和63年第1問2】
☑ 就学前の幼児が,他の者から贈与の申込みを受けてこれを承諾しても,その承諾は無効である。
➠ ○ 就学前の幼児は意思能力を有しないので,幼児のした承諾は無効となります。

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