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ファーストステップ司法書士23「道路に出られない!通してよ! 【所有権・囲繞地通行権】」

AはCから甲土地を買いましたが,実はBの乙土地に囲まれた土地であり,道路に出るには乙土地を通らなければなりません。しかし,Bは乙土地を通らせる気はないようです。Aは道路に出るために乙土地を通ることはできないのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【210条】
 ①他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
【212条】
 第210条の規定による通行権を有する者は,その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。…

【1】意義

所有権の規定の中には,近接する不動産所有権のお互いの利用調整について定めた相隣関係の規定があります(209条以下)。つまり,お隣さん同士で仲良くするための取り決めを定めたものを相隣関係といいます。その相隣関係の1つがいわゆる囲繞地通行権です。上記の事例のように,ある土地が他の土地によって囲まれていて,公道に通じないときには,その土地〔袋地〕の所有者は公道に出るために周りの土地〔囲繞地〕を通行できますこれが囲繞地通行権です(210条)(※1)。囲繞地通行権は,袋地の所有権を持っていれば当然に発生する権利なので,袋地の所有者は囲繞地の所有者と通行についての契約を交わす必要はありません。ただし,通行権者は,囲繞地の所有者に対して,囲繞地に発生した損害について,通行料〔償金〕を支払わなければなりません(212条本文)。
※1 上記の事例でいうと,甲土地が袋地,乙土地が囲繞地となります。

【2】趣旨

袋地の所有者は公道に至ることができないとすると,袋地の利用価値はほとんどなくなってしまいます。そこで,袋地の有効な利用を図るため,囲繞地通行権を認めました。しかし,囲繞地を通行することはその所有者に影響を与えます。そこで,通行によって生じる囲繞地の損害については,袋地の所有者に償金を支払わせるようにしました

【3】解答

甲土地は袋地であり,乙土地は囲繞地に当たります。Aは袋地の所有者ですから,囲繞地通行権により,囲繞地である乙土地を通ることができます(210条)。ただし,これによって損害が生じた場合は償金を払わなければなりません(212条本文)。

★やってみよう!★
【過去問 平成元年第8問4】
☑ 袋地の所有者は,囲繞地の通行による損害について,囲繞地の所有者に対し償金を支払うことを要しない。
➠× 袋地の所有者は,囲繞地の所有者に対して,囲繞地に発生した損害について,償金を支払わなければなりません。

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