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ファーストステップ司法書士46「交通事故でどっちも悪い場合はどうなるの?~【不法行為】」

Aは車で,40キロの速度制限の道路を70キロのスピードで走っており,信号無視をして横断歩道を渡っているBを轢いてしまいました。Bは左足を骨折してしまい,100万円の治療費がかかりました。Aは100万円全額を支払わなければならないのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【709条】

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【722条】
 ②被害者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定めることができる。

【1】意義

不法行為制度とは,加害者が他人の権利・利益を違法に侵害したこと〔不法行為〕により,被害者に損害を与えた場合において,被害者の加害者に対する損害賠償請求権を発生させる制度をいいます(709条)。不法行為を受けた被害者は加害者に損害の賠償を請求することができますが,不法行為が成立するには,加害者の故意または過失が必要になります(709条)(※1)。それでは,上記の事例のように,「加害者に過失があるけど被害者にも過失がある。」という場合はどうでしょうか?このように被害者にも過失がある場合には,被害者の過失をもって,損害賠償請求権の一部を打ち消し,減額することができます。これを過失相殺といいます。なお,裁判において,過失相殺は必ずしなければならないわけではなく,裁判所の裁量にゆだねられています(722条2項)。
※1 上記の事例では,Bが負担した左足の治療費は不法行為による「損害」に当たり,加害者であるAには「速度違反をしていた」という過失があります。

【2】趣旨

不法行為制度は,被害者の救済だけでなく,損害の公平な分担も目的とします。このことから,加害者だけでなく,被害者にも過失がある場合,加害者のみが一方的に全責任を負うとすれば不公平であり,「損害の公平な分担」という目的に反することになります。そこで,「損害の公平な分担」の観点から,被害者の過失を考慮して,被った損害額から合理的な額を減額するようにしました。

【3】解答

Aは,Bの「信号を無視していたこと」という過失による過失相殺を主張することによって,裁判所の裁量によりますが,100万円からいくらか減額することができます(722条2項)(※2)。

★やってみよう!★
【過去問 平成4年第1問4】
☑ 裁判所は不法行為の損害賠償において,損害賠償の額を算定するには,被害者の過失を考慮しなければならない。
➠× 過失相殺は必ずしなければならないわけではなく,裁判所の裁量にゆだねられています。

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