ファーストステップ司法書士29「抵当権って何?【抵当権】」
Aは家を買おうと思っています。そこで選んだのが3,000万円の家ですが,Aはそんな大金は持っておらず,銀行から借りることにしました。その際に銀行から抵当権を設定してくれと言われましたが,抵当権とはどんな仕組みなのでしょうか?
☑ 参考条文 ☑
【369条】
①抵当権者は,債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
②地上権及び永小作権も,抵当権の目的とすることができる。…
【1】意義
上記の事例のように,家を買うなどの場合,大金を銀行等から借りる必要があります。しかし,銀行等がお金を貸しても,もしかしたら借り手(債務者)はお金を支払えなくなるかもしれません。そこで,お金を確実に回収するために,不動産を設定者の手元にとどめたまま,借り手の持っている家などの不動産を担保にするのが抵当権です(※1)。もしも,借り手がお金を返さなかった場合,担保にしている不動産を競売にかけ,そこから貸した額のお金を他の債権者に優先して回収します。この点は質権と同じです。しかし,買った家に質権を設定するとなると,家を債権者に引き渡さなければならず,結局,設定者は買った家に住めないことになってしまいます。その点,抵当権は質権と異なり,不動産を設定者の手元にとどめることができます(369条1項)。これを非占有担保といいます。
※1 民法上,抵当権を設定することができるのは,不動産・地上権・永小作権だけであり,動産に設定することはできません(369条2項参照)。
【2】趣旨
抵当権による設定者側のメリットとしては,不動産を設定者の手元にとどめたまま設定できるので,その不動産にそのまま住むことができるということが挙げられます。一方,債権者側のメリットとしては,万が一債務者がお金を支払わなくても,担保した不動産を競売に掛けることによって,他の債権者に優先して債権を回収できることが挙げられます。
【3】解答
Aは銀行から借りた3,000万円の担保として,その家に抵当権を設定した後も,その家に住み続けることができます。もし,Aが3,000万円を支払えなくなったときは,銀行はこの家を競売にかけ,そこから3,000万円を優先的に回収することができます(369条1項)。
★やってみよう!★
【過去問 平成18年第14問Dの発言】
☑ 抵当権は,不動産だけでなく,動産についても設定できる。
➠× 抵当権は,民法上,不動産・地上権・永小作権についてのみ設定することができ,動産について設定することはできません。
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