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ファーストステップ司法書士44「君に任せたよ!【委任】」

Aは自分の息子に家庭教師をつけようと思い,Bに家庭教師をお願いしました。Bは,Aの家に電車で行く必要があるので,交通費をもらいたいのですが,この交通費はいつAに払ってもらえるのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【643条】

 委任は,当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。
【648条】
 ①受任者は,特約がなければ,委任者に対して報酬を請求することができない。
【649条】
 委任事務を処理するについて費用を要するときは,委任者は,受任者の請求により,その前払いをしなければならない。

【1】意義

委任契約とは,委任者が契約などの法律行為をすることを受任者に任せる契約をいいます(643条)(※1)。また,上記の事例のように,家庭教師をすることなどの事実行為を任せることを準委任といいます。ただ,準委任の場合,委任の規定がそのまま準用されるので(656条),それぞれ区別して覚える必要はありません。この(準)委任契約において,任せる側の人を委任者といい,任される側の人を受任者といいます。委任契約において報酬を支払う特約があれば,委任者は,受任者に対して報酬を支払う義務を負います(648条1項)。すなわち,裏を返せば,そのような特約がなければ受任者は報酬を請求することができません。また,上記の事例のように,受任者が任された仕事をするにあたって,受任者に必要な費用が発生する場合において,受任者の請求があるときは,委任者は費用の前払いをしなければなりません(649条)。委任者は必ずしも前払いしなければならないわけではなく,受任者の請求があった場合に費用の前払いが要求されます
※1 請負は,仕事の完成そのものが目的であるのに対し,委任は労務の提供そのものを目的とします。つまり,仕事をすること自体のプロセスを重視するのが委任契約なのです。この違いは分かりにくいと思いますが,それぞれの事例をそのまま覚えてしまい,なんとなくイメージできるようにしましょう。

【2】趣旨

委任された仕事をするにあたって発生する費用は常に受任者の負担とすると,受任者に損害が生じるので,受任者にとって酷といえます。そこで,受任者に損害を生じさせないように,委任者は受任者の請求があった場合は費用の前払いをしなければならないとしました。

【3】解答

AB間では,Aの息子に家庭教師をすることを内容とする準委任契約が結ばれており,Aが委任者,Bが受任者に当たります。交通費については,Bの請求があった場合には,Aは前払いをしなければならなくなります(649条)。

★やってみよう!★
【過去問 平成5年第7問イ】
☑ 委任事務を処理するにつき費用を必要とするときは,委任者は,受任者の請求により,その前払いをしなければならない。
➠○ 受任者が任された仕事をするにあたって,受任者に必要な費用が発生する場合において,受任者の請求がある時は,委任者は費用の前払いをしなければなりません(649条)。

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