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ファーストステップ司法書士30「約束を守らなかったらこうだぞ!【債務不履行】」

AはBの家を買う売買契約をBと交わし,お金を支払いましたが,Bは明渡期日になっても家を明け渡してくれません。AはBの契約違反に対してどのような手段をとることができるでしょうか?

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☑ 参考条文 ☑
【414条】
 ①債務者が任意に債務の履行をしないときは,債権者は,民事執行法…の規定に従い,…履行の強制を裁判所に請求することができる。…
【415条】
 ①債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし,その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。
【541条】
 当事者の一方がその債務を履行しない場合において,相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,相手方は,契約の解除をすることができる。…
☑ 用語解説 ☑
『 帰責事由 』・・・債務者の故意・過失またはこれと同視される事由のこと。「落ち度」と読み替えると分かりやすいです。

【1】意義

債務不履行とは,債務者が債務の本旨に従った履行をしないこと,つまり債務者が約束を守らないことです。債務不履行があった場合には,債権者を救済する観点から,債権者は,①現実的履行の強制のほか〔強制履行〕②損害の賠償を請求したり〔損害賠償請求〕③契約を解除することができます〔解除〕。以下,①~③の概要を説明していきます。
①債務者からの任意の履行がない場合,債権者は債務者に対して履行を強制することができます(414条1項)。つまり,約束を守るよう強制することができます。
②債権者は,債務不履行により債権者に生じた損害の賠償を請求することができます(415条本文)。
③債権者は,相当の期間を定めて催告をし,その期間内に履行がないときは,債務不履行があった契約を最初からなかったことにできます(541条本文)。また,「強制履行」「解除」は債務者に帰責事由がなくても認められますが,「損害賠償請求」は債務者に帰責事由がなければ認められません。

【2】趣旨

債務不履行における強制履行・損害賠償請求・解除は,債権者の救済の手段として認められています。「強制履行」は単に債権の内容を実現するにすぎず,「解除」も債権者を契約の拘束から解放する趣旨であるため,債務者の帰責事由は不要ですが,「損害賠償請求」は,債務の履行を怠った,帰責事由のある債務者に責任を取らせて債権者を救済する趣旨であるため,債務者の帰責事由が必要です。

【3】解答

BはAに対して建物明渡債務を履行していないので,Aは,①強制履行により裁判所の執行官の手を借りてBを出て行かせたり,②本件の売買契約を解除してなかったことにしたりするほか,③Bに帰責事由があれば,債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求することができます。

★やってみよう!★
【過去問 昭和58年第4問1】
☑ 買主が約定の期日に代金の支払をしなかった場合において,売主が相当の期間を定めてその履行を催告し,その期間内に履行がなかったときであっても,売主は,買主に帰責事由がなければ,その契約を解除することができない。
➠× 債務不履行があった場合,債権者は,債務者に帰責事由がなくても契約を解除することができる。

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