ファーストステップ司法書士9「中学生の息子が100万円の車を 買ってしまった!【行為能力】」
【1】意義
行為能力とは,1人で確定的に有効な法律行為をすることができる能力を言います。行為能力が制限される者を制限行為能力者といい,未成年者はこれに当たります。制限行為能力者は1人で有効な意思表示を行うことを制限されています。未成年者が法律行為をする際は,保護者の同意を必要とし,未成年者が同意を得ずにした法律行為は,本人と保護者それぞれが取り消すことができるものとされています(5条2項,120条1項)。つまり,未成年者が契約をしても,その契約を最初からなかったことにできます。そして,当事者が契約によって受け取っていた利益に関しては,相手方を現状に回復させる義務〔原状回復義務〕を負います(121条の2第1項)。
【2】趣旨
意思能力があるかないか,ということは外から見て分からない場合もあります。また,裁判に持ち込まれた場合は,意思能力がなかったことを立証するのは困難です。そこで民法は,一般的に判断能力が不十分と見られる者を形式的にパターン化して,行為能力という制度を設けました。通常より判断能力の劣っている制限行為能力者が,保護者の同意を得ず契約などの法律行為を行った場合に取消権を認めることで,その者の保護を図っています。
【3】解答
Aは未成年者であり,制限行為能力者に当たるので,保護者である親の同意を得ずにしたこの売買契約は,Aの両親はもちろん,A自身も単独で取り消すことができます(5条2項,120条1項)。これにより,AはBに100万円を支払わなくてよくなりますが,その反面,車は返さなければならなくなります(121条の2第1項)。
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