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ファーストステップ司法書士31「お金がない?あいつに貸した金,返してもらえよ!【債権者代位権】」

AはBに貸した100万円の支払期限が過ぎているのに返してもらっていませんが,Bの財布はすっからかんです。BはCに100万円の売買契約の代金支払請求権を持っていますが,これを回収していません。Aはどうしたらいいでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【423条】
 ①債権者は,自己の債権を保全するため必要があるときは,債務者に属する権利〔被代位権利〕…を行使することができる。
 ②債権者は,その債権の期限が到来しない間は,被代位権利を行使することができない。ただし,保存行為は,この限りでない。
☑ 用語解説 ☑
『 被保全債権 』・・・債権者代位権を行使することによって守ろうとする債権を言います。上記の事例でいうと,AのBに対する100万円の貸金返還請求権です。Aはこの債権を守るためにBのCに対する代金支払請求権をBに代わって行使することになります。

【1】意義

債権者代位権とは,債務者が自分の権利を行使しない場合に,債権者が自分の権利〔被保全債権〕を保全するために,その権利を債務者に代わって行使できる権利をいいます(423条)。上記の事例において,AがBに対して持っている貸金返還請求権を「甲債権」とし,BがCに対して持っている代金支払請求権を「乙債権」とすると,AはBにお金を返してもらっていないので,被保全債権である甲債権を回収できるようにするために,Bの乙債権をBに代わって行使します。これによってAは甲債権の100万円を回収することができるのです(※1)。なお,債権者代位権を行使するには,原則として被保全債権が弁済期に達していることが必要になります(423条2項本文)(※2)。
※1 債権者代位権を行使するためには,原則として債務者が財産を持っていない状態〔無資力〕であることが必要となります。債務者が弁済するのに十分な財産を持っているのなら,わざわざ債務者の権利を代位行使する必要はないからです。
※2 例外として,消滅時効の完成猶予をするなどの債務者の権利を現状維持させる「保存行為」であれば,弁済期が到来していなくても,債権者代位権を行使することができます(423条2項但書)。

【2】趣旨

現在の法は,自分が持っている財産は自分が自由に処分できるのが前提になっています。ですから本来,自分の権利を行使しないで放っておくのも本人の自由であり,他人に口出しされる筋合いはないはずです。しかし,債権者は債務者の財産のあるなしに大きな影響を受けますから,債務者の財産を保全させて,債務者からお金を回収できるように,他人の権利であっても債権者自らが“代わって”債務者の権利を行使する,というのが債権者代位権です。また,債権者代位権は,強制執行の準備として行う手続であることから,原則として強制執行の可能な状態,すなわち弁済期にあることが必要になります。

【3】解答

Aは債権者代位権を行使して,BがCに対して持っている代金支払請求権を代位行使することによって(423条1項),Bに貸した100万円を回収することができます。

★やってみよう!★
【過去問 昭和60年第4問3】
☑ 債権者代位権は,債権者の債権の履行期が到来していないときは,行使することができない。
➠× 保存行為の場合は,被保全債権の弁済期が到来していない場合でも,債権者代位権を行使することができます(423条2項但書)。

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