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北谷馨の質問知恵袋 「不動産登記における遺言執行者の申請権限」に関する質問

今回は、「不動産登記における遺言執行者の申請権限」に関する質問です。

Q:遺言執行者が選任されている場合、相続や遺贈による登記を誰が申請するのか(相続人or遺言執行者)、改正の関係で整理できなくなってしまいました。どのように判断すればいいでしょうか。

改正の影響により、遺言執行者の登記申請権限が拡大されています。以前から質問の多かったところではありますが、改正により更に混乱している方が多いようです。

甲土地の所有者Aが死亡し、法定相続人がBC、遺言執行者がDとします。

①通常の「法定相続」の場合
⇒相続人BCが所有権移転登記を申請します。これは遺言執行者Dが申請することはできません。

②「遺贈」(「甲土地をEに遺贈する」等)の場合
⇒遺言執行者Dが受遺者と共同して所有権移転登記を申請します。これは相続人が申請することはできません。

③「特定財産承継遺言」(「甲土地をBに相続させる」等)の場合
⇒改正により、遺言で別段の定めがされているときを除き、遺言執行者が所有権移転登記を申請することができるようになりました(民法1014条2項、4項、令和元.6.27民二68号通達)。なお、遺言の執行の妨害行為(民法1013条1項)には当たらないため、相続人から申請することも可能です。

④「清算型遺贈」(「甲土地の売却代金をBに遺贈する」等)の場合
⇒1件目の相続登記は、遺言執行者から申請することもできるし、相続人から申請することもできます。2件目の売買による所有権移転登記は、買主と共同して遺言執行者が申請します。

⑤被相続人が生前に甲土地を売っていた場合の買主への所有権移転登記
⇒遺言の執行とは関係がないため遺言執行者が申請することはできません。一般承継人による登記として相続人から申請します。

上記③が改正の知識になるので、注意してください。
なお、この機会に民法899条の2の規定もしっかり確認しておきましょう。
従来は、Aの相続人が子BCだとして、「甲土地をBに相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)があった場合、Bは、登記なくして甲土地の所有権全体の取得を第三者に対抗することができました。
しかし、改正により、Bは、登記がなければ法定相続分を超える部分(2分の1を超える部分)については第三者に対抗することができないとされました。これは民法の出題としても非常に重要な改正です。

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