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ファーストステップ司法書士43「マイホームを建ててもらおう!【請負】」

Aはマイホームを建てようと思い,マイホームの建築を建築業者のBに注文しました。マイホームの材料は全てAが提供しましたが,このBが建てるマイホームの所有権はいつからAのものになるのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【632条】

 請負は,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。

【1】意義

請負契約とは,請負人が仕事を完成させることを約束し,注文者がその対価として報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます(632条)(※1)。仕事を請け負った人を請負人注文した人を注文者といいます。請負契約が成立すると,請負人は,仕事完成義務を負い,契約の目的が物の製作である場合は加えて目的物引渡義務を負い,一方,注文者は,その仕事の対価として報酬支払義務を負います。それでは,完成した建物の所有権は誰に帰属するのでしょうか。当事者の間に特約がない場合は,材料を提供した者を基準に判断されます。注文者が材料の全部か大部分を提供した場合には,建物の所有権は完成と同時に注文者に帰属します(大判昭7.5.9)。一方,請負人が材料の全部か大部分を提供した場合には,完成建物の所有権は請負人に帰属し,請負人から注文者への引渡しによって注文者に移転します(大判明37.6.22,大判大3.12.26)(※2)。
※1 この「仕事」とは請負人が労務によって発生させる結果をいい,建物の建築のような形のあるもの,講演のような形のないものを問いません。
※2 「建物の完成と同時に注文者に帰属する」という特約がある場合,その旨に従い,完成時に注文者に帰属します(大判大5.12.13)。

【2】趣旨

報酬の支払は仕事の目的物の引き渡しと同時履行の関係にあるとされています。つまり,請負人は完成物を引き渡さないと報酬が請求できません。ですから材料を請負人が提供した場合,所有権が注文者に帰属する時期を早めると,請負人が報酬を受ける前に所有権が注文者に帰属してしまい,請負人にとって不利になります。そこで完成建物の所有権の帰属先について材料提供者を基準にし,請負人が材料を提供した場合には引渡時,注文者が材料を提供した場合には建物完成時に注文者に帰属するとしました。

【3】解答

材料は注文者であるAが全て提供しているので,このマイホームの所有権は建物完成時にAに帰属することになります。

★やってみよう!★
【過去問 昭和63年第7問4】
☑ 材料の主要な部分を注文者が提供した場合であっても,完成した建物の所有権は,特約がない限り,請負人に帰属する。
➠× 注文者が材料の全部または大部分を提供した場合,特約がなければ,完成した建物の所有権は,完成時に注文者に帰属します(大判昭7.5.9)。

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