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ファーストステップ司法書士14「詐欺師に騙された!どうしたらいいの?【詐欺】」

Aは高級ブランドのカバンを取り扱っているというBから,カバンを30万円で買いましたが,Bは実は詐欺師であり,そのカバンは偽物でした。Aは泣き寝入りするしかないのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【96条】
 ①詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる。
 ②相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては,相手方がその事実を知り,又は知ることができたときに限り,その意思表示を取り消すことができる。
【121条の2】
 ①無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は,相手方を原状に復させる義務を負う。

【1】意義

詐欺とは,人を欺いて錯誤に陥らせる行為を言います。例えば,上記の事例のように,人を騙して契約を締結するような場面です。詐欺によってなされた意思表示は取り消すことができます(96条1項)。また,取引の相手方以外の第三者に騙されて意思表示をしたような場合〔第三者による詐欺〕は,相手方がその詐欺の事実を知っていたとき〔悪意〕または知ることができたとき〔有過失〕に限り,取り消すことができます(96条2項)。

【2】趣旨

詐欺による意思表示は騙された表意者の保護の観点から,取り消すことができるとされています。ただし,錯誤とは異なり,取引の相手方(詐欺をした者)を保護する必要は全くないため,詐欺をした者との間の取引に関しては,取引の相手方を保護する規定(例:95条3項)はありません。これに対し,第三者による詐欺に関しては,取引の相手方は詐欺とは無関係であるため,すべて取消しできるとすると,取引の相手方の保護に欠けますが,相手方が詐欺の事実について悪意または有過失である場合には,相手方を保護する必要性が低いため,取り消すことができるとされています(※1)。
※1 騙された表意者と,悪意・有過失の相手方を天秤にかけ,表意者の方が保護する必要性が高いと考えるわけです。

【3】解答

Aは,B詐欺によって意思表示をしたことになるので,カバンの売買契約を取り消すことができます(96条1項)。これにより,AはBから30万円を取り戻すことができます(121条の2)。

★やってみよう!★
【過去問 平成18年第6問オ】
☑ AがBに欺罔されてA所有の甲土地を善意かつ無過失であるCに売却した場合,Aは,AC間の売買契約を,詐欺を理由として取り消すことができない。
➠○ 第三者による詐欺の場合,取引の相手方が悪意または有過失の場合に限って取り消すことができます。

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