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ファーストステップ司法書士22「友人から買ったカメラが他人の物だったら? 【即時取得】」

Aは友人Bからカメラを買いました。当然,このときAは「このカメラはBのものだ」と過失なく思っていましたが,実はそのカメラはCの物でした。Aはカメラの持主になることができるのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【192条】
 取引行為によって,平穏に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。

【1】意義

即時取得とは,所有権など,その物を処分する権限を持っていない動産の占有者を正当な権利者と誤信して取引した者が,その動産について完全な権利を取得する制度をいいます(192条)。例えば,上記の事例のように,動産の所有権を持っていない,つまり無権利者であるにもかかわらず,その動産を他人に売ってしまい,買主はそれを売主の所有物だと信じたような場合,買主はその動産の所有権を取得することができます。本来,無権利者から権利を取得するなどということはありえないはずです(※1)。しかし,動産に限ってはこの即時取得により,無権利者から権利を有効に取得することが認められています。この即時取得は,売買契約などの取引行為によって物を占有した場合に認められるものであって,ただ持っていっただけといったような事実行為によって物を占有した場合には認められません(192条)(※2)(※3)。
※1 上記の事例でいうと,Bはカメラの所有権を持っておらず,無権利者に当たります。Bが所有権を持っていないのですから,民法の原則に従って考えれば,当然AはBからカメラを買ったとしても,所有権は取得できないはずですよね。
※2 例えば,上記の事例で,AがBから買ったわけではなく,自分のカメラだと勘違いして持っていった場合には,即時取得は認められません。
※3 即時取得が認められるためには,取得者が,動産の占有者が無権利者だということについて善意無過失であることが必要です(192条)。

【2】趣旨

不動産の対抗要件は「登記」なので(177条),登記簿を見ればその不動産が誰のものなのかということは明白です。しかし,動産の対抗要件は「引渡し」であり(178条),公示が不十分だといえます(※4)。そこで,取引の安全から,「引渡し」という外観を信じて取引した者は,権利を有効に取得できるとしました。即時取得はこのように取引の安全を図るための規定なので,対象は取引行為によって占有を取得したものに限られます。

【3】解答

Aは動産の占有を無権利者から,取引によって,善意無過失で取得したことになるので,即時取得が認められ,Aはこのカメラの所有者となります(192条)。

★やってみよう!★
【過去問 平成13年第7問ア】
☑ 他人の山林を自分の山林であると誤信して立木を伐採した場合,即時取得は成立しない。
➠○ 即時取得は取引行為によって動産の占有を取得した場合に認められるので,立木の伐採のような事実行為による占有の取得の場合は認められません(192条)。

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