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ファーストステップ司法書士38「僕の車,タダであげるよ!【贈与】」

Aは株で大当たりして,金銭的に余裕があったので,Bに「私の車,あなたにタダであげるよ!」と言いましたが,その後,株で大損してしまい,車をあげる余裕がなくなってしまいました。Aはこの契約をなかったことにできないでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【549条】
 贈与は,当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生ずる。
【550条】
 書面によらない贈与は,各当事者が解除をすることができる。ただし,履行の終わった部分については,この限りでない。

【1】意義

贈与契約とは,贈与者が受贈者に対し,無償で財産を与える契約をいいます。要するに人にタダで物をあげるのが贈与契約です(549条)。贈与契約が結ばれると,贈与者は目的物を引き渡す義務が生じます。ただし,書面によらない贈与,つまり口約束の贈与の場合,各当事者はその契約を解除して,契約がなかったことにできます(550条本文)。もっとも,もはや履行が終わっていた,つまり目的物を渡してしまっていたら,その部分について解除することはできません(550条但書)。

【2】趣旨

人に物をタダであげることはよくありますよね。そのような行為を贈与契約という形式に定めたのがこの規定です。書面によらない贈与の解除については,贈与の意思を書面という証拠のある形にして残すことによって,言った言わないの紛争の防止を図っています。ただし,履行が終わった部分については,贈与の意思が客観的に表示されているので,解除できないことにしました。

【3】解答

Aは原則として,Bに車をあげなければなりません。しかし,この贈与契約は口約束に過ぎず,書面によらない贈与に当たるので,Aはこの贈与契約を解除することができます(550条本文)。

★やってみよう!★
【過去問 平成5年第11問5】
☑ AがBに対して,口頭によって甲建物を贈与した場合において,Aは,Bに甲建物を引き渡したときは,贈与を解除することができない。
➠○ 本問のAのBに対する贈与は「書面によらない贈与」に当たりますが,Aは甲建物を引き渡し,履行が終わったといえるので,この贈与を解除することができません。

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