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ファーストステップ司法書士45「助けてあげても費用は自己負担?【事務管理】」
Aは,隣に住んでいるBの留守中に,Bの家の屋根が雷雨で壊れているのに気づきました。そこでAは,Bに頼まれたわけではないけれども,よかれと思ってBの家の屋根を修理しました。AはBに修理費用や報酬を請求できるのでしょうか?
☑ 参考条文 ☑
【697条】
①義務なく他人のために事務の管理を始めた者…は,その事務の性質に従い,最も本人の利益に適合する方法によって,その事務の管理…をしなければならない。
【702条】
①管理者は,本人のために有益な費用を支出したときは,本人に対し,その償還を請求することができる。
☑ 用語解説 ☑
『 不法行為責任 』・・・加害者が他人の権利・利益を違法に侵害したこと(不法行為)により,被害者に損害を与えた場合に,加害者がその損害の賠償をする責任のこと。
【1】意義
事務管理とは,上記の事例のように,契約のような法律上の義務がないけれども,他人のためにその事務を管理することをいいます(697条)。要するにおせっかいしたときのルールを定めたのが事務管理です(※1)。事務管理が成立すると,その行為の違法性がなくなるので,管理者は不法行為責任を負いません。ですから,上記の事例では,AはBの家に勝手に入り込んでいますが,これは違法ではなく正当な行為ということになるので,Bから不法行為に基づく損害賠償を請求される恐れはありません。管理者は,本人に対し,支出した有益な費用の償還を請求することができますが(702条1項),報酬を請求することはできません(701条,648条参照)。
※1 他人の事務を管理する者(おせっかいする人)を管理者,事務を管理される人(おせっかいされる人)を本人といいます。
【2】趣旨
本来,自分の事務については自分が自由に処理すべきであり,法律上の権限なくして他人の事務に干渉することは違法です。しかし,社会生活における助け合いの観点から,それが必要な場合もあるので,他人の生活への不当な干渉の排除と,社会生活における助け合いの調和を図るため,事務管理の規定が置かれています。その人のことを思って助けてあげたのに,費用は自己負担では,あまりにも管理者に酷といえます。そこで,費用についてはその恩恵を受ける本人に負担させることにしました。一方,頼んでいないのに報酬を支払うのは,本人にとって酷なので,報酬請求権は認められていません。
【3】解答
Aのした屋根の修理は,事務管理に当たるため,AはBに屋根の修理費用を請求することができますが(702条1項),報酬を請求することはできません(701条,648条参照)。
★やってみよう!★
【過去問 平成16年第19問エ】
☑ 事務管理者は,法律に特別の定めがある場合を除き,報酬請求権はないと解されている。
➠○ 事務管理の場合は,委任契約と異なり,報酬請求権は認められていません。
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